第23黒 天才魔導士、反逆――蒼光協会の頂点で始まる禁術級の魔法決戦
蒼光本部。
蒼光塔の最上層近くに存在する、魔法協会最高機密の区画。
厚い魔力結界に覆われた円形の会議室は、外界の音も気配も完全に遮断していた。
中央には巨大な円卓。古代魔導文字が刻まれ、魔力が静かに脈動している。
だが今、この部屋に漂っているのは――
冷え切った事実だけだった。
円卓の中央。浮かぶ水晶が、かすかな光を放つ。
その内部では戦闘の記録が断片的に再生されている。
部屋には二人しかいない。
魔法協会長 セラフィナ=ルクレール。
そして。
蒼光の大魔導士 ウィザー=ヴァレンタイン。
沈黙が続く。
結界の内側で、魔力だけが微かに鳴っている。
最初に口を開いたのは、セラフィナだった。
金の髪を背に流し、椅子に静かに腰掛けたまま言う。
「ルシオ=アストレアの戦死。これがどういう意味か分かっていますね?」
その声は静かだった。
ウィザーは腕を組み、水晶を睨んだまま答える。
「ええ、ですがっ…」
ウィザーが唇が歪む。
「ルシオが命令違反しなければこんなことには…」
その言葉を、セラフィナは途中で切った。
「ルシオの性格はあなたも把握していたはず」
ゆっくりと椅子から立ち上がる。
白い法衣が静かに揺れ、足元に淡い光の紋様が浮かび上がった。
「それとも、そんな事も計算に入れられなかったのかしら」
冷たい視線が突き刺さる。
「天才魔導師さん?」
「くっ…」
ウィザーの指が、円卓を強く叩く。
バチッ――!
蒼い魔力が弾け、机に刻まれた魔導文字が一瞬だけ光る。
セラフィナは微動だにしない。
「今回の作戦の失敗はあなたの責任です」
その言葉が落ちた瞬間。
部屋の空気が変わった――
「私の失敗ですって…」
ウィザーの声が低く沈む。
足元から蒼い魔力が滲み出し、床に魔法陣が薄く浮かび上がる。
「ええ」
セラフィナは淡々と続けた。
「天才が聞いて呆れますね」
沈黙。
そして、ウィザーはゆっくり笑った。
だがその笑みには、明らかな狂気が滲んでいる。
「そう…分かったわ」
次の瞬間――
ウィザーの足元に巨大な魔法陣が展開した。
幾重にも重なる魔導文字、魔力が一気に膨れ上がる。
セラフィナの瞳がわずかに細くなる。
「なっ…」
「なにをするつもりですか?」
ウィザーはゆっくり手を掲げた。
その掌の上に、蒼い魔力の球が収束していく。
瞳の奥に怒りが燃えていた。
「決まってるでしょ?」
魔法陣が高速で回転する。
蒼光が部屋を満たす。
「もうあなたの下にいるのはウンザリだわ」
魔力の圧力で空気が震える。
「だから・」
ウィザーの指先がセラフィナへ向いた。
「あなたを殺して私がこの協会のトップに立つ」
詠唱が響く。
『蒼天を裂き、万象を焼き払え――』
魔法陣が一気に拡張する。
≪蒼光極大魔法!! 蒼光破滅砲!!≫
轟音と共に蒼い光線が一直線に走る。
円卓を蒸発させながら、セラフィナを狙う。
だが――
「私に勝てるとでも?」
セラフィナの前に黄金の魔法陣が展開する。
幾何学的に重なる聖紋。
「驕りが過ぎるのでは?」
詠唱が静かに響き
金色の結界が展開する。
『天律に従い、罪なる力を退けよ』
≪聖域防護魔法!天聖防壁!!≫
蒼光の砲撃が、黄金の結界へ激突し衝撃波が会議室を揺らす。
防がれている。
だが、ウィザーは驚くことも無く冷たい言葉を向ける。
「驕っているのはあなたの方…」
「私があなたを倒す魔法を考えていないとでも?」
空間が歪み、ウィザーの背後に巨大な術式が出現する。
それは通常の魔法陣ではない。
禁術級の極大魔法だ。
詠唱が低く響く。
『天の律に背く魔導を拘束せよ!
偽りの天才を裁け』
魔法陣が回転する。
≪天律拘束陣!!≫
黄金の鎖が空間から生まれた。
それは光ではない。
“法則”そのもの。
魔力を縛る天の拘束。
鎖が蛇のように伸び――
セラフィムの身体へ絡みつく。
「なっ――!」
鎖が締まり、蒼い魔力が封じられる。
セラフィムの顔が歪む。
「これほどの魔法をどこで?」
ウィザーは静かに微笑む。
「密かに新術を開発してたのよ。まだ完璧までとはいかないけど…」
魔法陣がさらに回転し黄金の光が強くなりながら
鎖がセラフィムを締め上げる。
「あなたを殺すぐらいは造作もないわ」
鎖が食い込み セラフィムの魔力が身体から抜けていく。
だが次の瞬間。
セラフィムの瞳が怒りに燃え上がる。
「おのれ…ウィザー!!」
ウィザーが不敵に笑う。
「天才に歯向かったことを後悔しながら死になさい!」
蒼光の魔力が――再び爆発した。




