第16黒 蒼光塔潜入!――待ち受ける魔導師!!
夜の街路が、爆炎に染まる。
魔都中央区。
王国魔法協会本部に、レジスタンスの部隊が突撃を開始していた。
「前線突破だ!!」
怒号と共に剣が交わる。
魔法が弾け、石畳が砕け、
一瞬で戦場へと変わる。
――その中心。
ゆっくりと歩く男がいた。
蒼光剣士隊長
カイラン=ブルーム
長身の体躯。
肩まで伸びた金髪を後ろで束ね、青白い魔導鎧の隙間から光の魔力が脈打つ。
背中の大剣を引き抜く。
刃が抜けた瞬間、剣が眩く輝いた。
「……雑魚が多すぎるな」
次の瞬間。ドォン!!
光の斬撃が一直線に走った。
石畳が裂け、レジスタンス達がまとめて吹き飛ぶ。
悲鳴と破片が夜に散った。
カイランは剣を肩に担ぐ。
「フン、ウォーミングアップにもならん」
だが。
彼の視線は、戦場ではなく――その奥を探していた。
(……おかしい…)
眉がわずかに動く。
(”黒のカサブランカ”が姿を見せない)
本来なら、ここに現れるはずだった。
レジスタンスがここまで大規模に動けば、彼女が現れないはずがない。
だが。いない。
(……どういうことだ)
その瞬間、怒号が響く。
「囲め!!」
レジスタンスの戦士が一斉に突撃する。
四方からの同時攻撃。
カイランは思考を切り替えた。
「ちっ……まあいい」
剣が光を放つ。
≪蒼光斬!!≫
衝撃波が広がり、数人が宙を舞う。
だが――
一人だけ倒れない。
レジスタンスのリーダー・ライラ。
傷だらけの鎧で、一直線に突っ込んでくる。
「はあああああッ!!」
剣が振り下ろされる。
ガキィィン!!
光剣と鉄剣がぶつかり、火花が散る。
カイランは目を細めた。
「……女か」
剣を押し返す。
「悪くない。だが俺の求めてる相手はお前ではない。」
そして次の瞬間。
カイランの視線が再び戦場を走る。
(何故、姿を現さない。)
舌打ち。
「チッ……」
ライラが笑う。
「余所見する暇は与えぬ!」
剣が横薙ぎに走る。
カイランはギリギリで受け止めた。
ガン!!
衝撃で一歩下がる。
「……妙だな」
カイランは低く呟く。
「お前ら、わざと派手に暴れてるな…」
ライラは答えず、ただ剣を構え直す。
その沈黙が――
答えだった。
カイランの目が細くなる。
「なるほど…。」
剣を肩に担ぎ、空気が変わる。
「……してやられたな」
次の瞬間。
剣が強く輝いた。
「だが――お前らごときでこの俺を止められると思うなよ」
カイランが、殺気を放ちながら答える。
その頃―― 王国魔法協会本部《蒼光》の塔。
外壁の影を、一つの黒い影が滑っていた。
リィナ。
音もなく壁を登り、結界の隙間へ手を触れる。
「……ここですよぉ」
シルフィが調べた結界周期の
わずかな歪みに魔力を流す。
パリンと小さな音立てて結界が静かに開き
リィナ達が内部を進む。
青白い魔力灯が照らす長い廊下。
王国魔法協会の中枢。
(ウィザー……)
赤い瞳が細くなる。
(もうすぐよ。)
その時だった。
「……やっぱり来たか“黒のカサブランカ”…」
リィナが声を振り向くと、廊下の奥に
壁にもたれかかる男。
蒼光魔導師”ルシオ=アストレア”が余裕の笑みを浮かべている。
彼はゆっくりと拍手した。
パチ……パチ……
「さすが元勇者様だ。正面戦闘を避けて最短侵入…」
眼鏡を押し上げ薄く笑う。
「実に合理的だね。」
リィナは剣を構える。
「……どきなさい」
冷たい声。
「それは困る」
ルシオは肩をすくめた。
「ウィザーの駒ってわけ?」
ルシオが鼻で笑う。
「この僕がウィザーの駒?馬鹿にしないでくれたまえ。
ボクの方がウィザーよりずっと上だ。君を倒してそれを証明してやるよ」
指先で魔力を弾くと、空間が歪む。
「僕は僕のやり方で“天才”を出し抜く」
パチン。と指が鳴る。
その瞬間――
廊下の壁、床、天井に巨大な魔法陣が展開した。
≪結界魔法、展開!!!≫
「抵抗は無意味だ」
完全な戦闘空間。
逃げ道はない。
ルシオが微笑み、眼鏡が光る。
「功績は全部、僕のものだ。」
リィナの赤い瞳が冷たく光り
剣がゆっくりと持ち上がる。
「……邪魔ね」
次に瞬間――
魔力と殺気が交差し
黒百合と魔導師が対峙する。




