表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 最初のメインターゲット 大魔導士、ウィザー=アルヴァレン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/41

第11黒 屋敷侵入、月明かりの襲撃者

 

 夜の魔都エルヴァーネ

 月明かりは塔の隙間をかすかに照らすだけで、街は闇に沈んでいた。


 リィナ=エーべルヴァインは、闇に溶け込むように街の屋根伝いを移動する。

 黒の魔装が月光を吸い込み、赤い瞳だけが鋭く光っていた。


 貴族街の最奥、石壁と魔術結界に守られた一際大きな屋敷。

 ――オルベール=カインハート子爵の私邸。


「……屋敷は、この奥だ。中はオルベールの手先が守っている可能性が高い。」

 レジスタンスのリーダー・ライラが低く囁く。


「作戦通り、我々は途中までの道案内と脱出路を確保して置く。」


 リィナは剣を軽く握り、唇を引き結ぶ。

「……ええ。十分よ。」


 屋敷の壁際に潜む影。リィナの指先が軽く触れ、魔力が静かに流れ込む。

 その瞬間、視界が微かに歪む。ステルス――姿が世界から消えた。


「……行くわよ。」


 二人の黒衣のレジスタンスとともに、リィナは屋敷の裏口から静かに侵入する。

 扉は古く錆びていたが、鍵はかかっていた。

「ここは任せろ。」

 レジスタンスのメンバーが魔法障壁を解除し、音もなく扉を開く。


 屋敷内部。

 豪華な調度品が闇に溶け、足音は床に吸い込まれる。

 壁の小さな窓から漏れる月光が、赤い瞳を一層妖しく浮かび上がらせる。


「警戒は?」

 リィナの問いに、レジスタンスの一人が耳打ちする。

「見張りは居ますが、数は少ない。夜勤の者だけです。」


 その時、ライラが扉を指さす。


「……書類庫がある。

 オルベールの部下が、重要書類を保管しているはずだ。」


 リィナは無言で頷き、影のように歩を進める。

 月光に照らされる赤い瞳は、標的を捉えて離さない。


 書斎の扉の前。

 リィナの手が軽く触れると、鍵は音もなく解かれる。

 扉を押すと、香木と紙の匂いが漂った。


 中には、オルベールの名入りの書類と、貴族らしい豪華な調度品。

 シルフィが素早く周囲を警戒する。

「誰もいません。今がチャンスですよぉ」


 リィナは書類を手に取り、中身を確認する。

「なるほど。……ウィザーの研究資金の流れも、奴らの策略も、全てここにある。」

 指先でページをめくるたび、闇の魔力が微かに反応する。


 リィナは書類を閉じ、闇に溶けるように姿を消す。

「情報は手に入った。あとはオルベールを消すだけね。」



 雨に濡れた石畳が月光を反射し、建物の影は長く伸びる。


 警戒の魔灯が淡く揺れ、屋敷の中には複数の武装した手下が巡回していた。


 だが――

 その警戒網に、”穴”が開く。


「……今の私は、闇を統べるものだ。」


 音もなく、闇から闇へ――リィナが現れた。


 次の瞬間。


「な――っ!?」


 見張りの一人が声を上げる前に、

 黒い剣閃が喉元で止まる。


「……終わりよ。」


 鈍い音。

 男はその場に崩れ落ちた。


 異変に気づいた別の手下が振り向く。


「敵だ! 警――」


 言葉は続かない。

 影の中から、銀色の閃光。


「影が……通りますよぉ。」


 シルフィの短剣が、武器を握る手を正確に叩き落とす。

 怯んだ瞬間、背後から首筋に一撃。


「な、何が起きて――」


 その続きが紡がれることは二度と無かった。


 屋敷の中庭。

 巡回していた者たちが次々と倒れていく。


 逃げようとする者。

 助けを呼ぼうとする者。

 武器を構えて抵抗する者。


 ――すべて、同じ結末を迎えた。


「逃げ場はないわ。」


 リィナの剣は、最短距離だけを描く。

 殺気だけが先に届き、理解した時には、もう遅い。


 数分後。

 屋敷の警備は完全に沈黙した。


 血の匂いと、恐怖の余韻だけが残る。


 カイゼルが、空中で低く笑う。


「ふは……見事だな。

 ここまで一方的だとは。」


「雑音は嫌いなの。」

 リィナは淡々と答える。


「本命に、集中したいだけ。」



「オルベールはおそらくこの奥ですよぉ。残りの雑魚は私達に任せてくださいねぇ。」

 シルフィが通路の奥を示しながら小さく呟く。


「分かったわ」


 仲間と離れ、リィナはオルベールの下へ急ぐ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ