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それぞれの  作者: ゲノム蒼石
3/3

尖兵

神を自称する者が発した言葉を聞いた僕は言葉を失った。


(…今何て言った?戦争を起こさせた!?そんな事をして何の意味が!?)


「何の意味があるのか、ですか?簡単ですよ。駒が欲しかったからです。」


「思考を読み取れるのですか…いや、それよりも…駒ですって?」


「ええ、あの戦争は地球全土を焦土と化す規模でしてね。実のところ貴方が目覚める前に人類は滅びているのですよ。ただの一人も残らずにね。あぁ!何と愚かな生物でしょう!」


その神は信じられない事実を並び立て、落胆したような仕草をしながらもクスクスと笑い、話を続ける。


「で、何故駒が必要かという問いにお答えしましょう。それは私が思いついた遊び…もとい実験のためなのですよ。」


「実験…ですか?」


「はい。先程異世界に行ってもらうと申し上げましたが、これこそが実験のキモなのです。つまり"私が能力を与えた異世界転生者を送り込んだ世界は最終的にどうなるのか?"という観察対象として実に興味深い題材なのですよ。」


意味が分からない。異世界転生者の目的など大抵は魔王がいるから倒して〜…とかそういう類のものだろう。ならば結末など決まっている。


「どうなるのかって…そんなの平和になって終わりじゃないんですか?」


「いえいえ。確かに転移先は勇者も魔王も存在する世界です。だからと言ってどちらかに肩入れしろなんて命令はしませんよ。旅立つ前に私がかける言葉はたったの一つです。"好き勝手にやれ"。」


荒唐無稽な話である。わざわざ地球人を滅ぼしてまでやる事がそれか?ますます意味が分からない。


「疑問に思いますか?そうですねえ…例えば地球に宇宙生命体が飛来したとします。貴方にはそれらがどんな行動を取るか正確に予測出来ますか?」


それは不可能だ。未知の存在が考える事など知る由もない。


「つまりそういう事です。宇宙生命体と違って異世界転生者は姿形は現地人と同じ人間ですがね。この私が授けたスキルによって危険な外来種と化しています。これらを複数放り込んだら最終的にどうなるのか、その過程を観察したいのですよ。」


放り込まれる側からしたら実に迷惑な話である。神の気まぐれで自分達の世界が荒らされるとは…ん?複数だと?


「気付きましたか?既に貴方の前に何十人か送り込んでいるんですよ。才能のある人間全てをトラックに轢殺させるのは骨が折れますからね。全員まとめて核の炎で荼毘に付す方が早いでしょう?」


そんなくだらない理由で人類は滅びたのか…憤りたいのだが、あまりのスケールの大きさに脱力感を覚える。


「まぁとにかく、貴方にも異世界転生者として存分に好き勝手やって貰いますよ。典型的な剣と魔法の世界ですから分かりやすく楽しめるかと。さあ、スキルを選択してください。ただし一つだけ、それと強すぎるチートスキルは渡しませんよ。観察対象として面白くありませんからね。」


スキルを貰って異世界行脚とはテンプレートそのものな流れである。確かに地球では不可能な事をするのは楽しいのかもしれない。


しかし


「行きません。」


僕ははっきりと提案を蹴った。



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