hug
私は八佐視に肩を貸してもらいながら、帰宅した。
玄関扉を開けると、明石華菜子が佇んでいた。
「……えっ?な……んで明石が居るの?」
「八佐視先輩に呼ばれて、縞那賀先輩をどうにかしてやってくれって言われて……なんですか、そんな服ぅ汚して?こんなクズに頼らなくても私が居ますよ!」
明石が両腕を広げ、縞那賀に歩み寄り、泥で汚れたりぐしょぐしょに濡れた服を気にせずに抱きしめた。
「うぅぅっ、華菜子ぅっ……私ぃ、どうし……たら?」
縞那賀が泣き出し、抱きしめられたままで胸に顔を埋め、弱音を吐露した。
「状況がのみ込めないんですけど……とにかく落ち着きましょ?このままだと風邪をひくので、風呂に入ってきてください」
明石は縞那賀の背中をさすり、宥めながら、汚れた身体を洗い流すように促した。
◇◇◇◇
縞那賀が身体の汚れを落とし終え、明石が浴室から出てきて同性二人でリビングで会話が繰り広げられた。
八佐視も雨に濡れ、浴室で清潔にしている間、常温のお茶を飲みながら、向かい合ってトークをした。
「私の為に駆け付けて来てくれてありがとう。学校はどうしたの?」
「縞那賀先輩になにかあれば、いつでも駆け付けますよ……もう大丈夫ですか?体調不良だって言って抜けてきました。それで……八佐視先輩に酷いこと、されてませんか?それが心配で」
「ありがとう……華菜子が心配するようなことぅ…………ないから」
「あんなクズに依存する程縞那賀先輩はっ——」
「祐斗に傷付けられることはあるけど、祐斗以外は考えられないの。心配してくれるのは嬉しい……でも、私には祐斗以外居ない」
「そう、ですか……あの、今言うのは変ですけど、私……縞那賀先輩が好きです。キスとかしたいっていう意味で」
「…………そうなの。そう……」
「……そうなんです」
気まずい空気が漂う。
八佐視はリビングに姿を現さない。
グラスに注がれたお茶を喉に流し込む。
「そういうのに……応えられない。私には祐斗が居る。同性は対象外で……ごめんね」
「でもっ!!それでも浮気したんですよね?」
「浮気……そう捉えられるのは心外ではあるけど、まぁそうだね」
ダイニングテーブルに載せた腕が微かに震えた彼女。
「今日はそういう……気分じゃないのは分かってくれるよね、華菜子?」
「はい……今日は縞那賀先輩を安心させてあげる為に来たんです。なにがあったんですか?」
「うん……それはね——」
私は後輩に話せる範囲の状況を開示した。
「そうなんですか……酷いですね、その人。誤解してました。ごめんなさい。それは心配ですね、そんなときにあのクズ先輩はそんな……」
「私にはどうすることも……」
「そうですね。連絡がくるまでどうしようもないですね」
◇◇◇◇
13時前になるとインスタントのカップ焼きそばで腹を満たし、落ち着こうと努めた。
明石から八佐視の愚痴が泉のように湧いてきたのを真面目に訊いた。
この日は明石が泊まっていくことになり、二人の寝室は私と明石が占領し、八佐視をソファーに追いやった。
私はおやすみと挨拶できることに感謝して、明石と並んで就寝した。




