心配
私は茉敷が戻ってくるまでカフェで待ち続けた。
懸念している事態になっていないか不安で……心配で手に持つグラスを落としそうになる瞬間が何度もおとずれた。
金山は異性ならなんでも手を出す雑食ゲス野郎だ。彼が茉敷を生意気だと感じ、黙らせる為に私に及んだ行為を行うことは考えられる。
彼はヤりたい対象でない異性でも罪悪感を抱かずヤれるクズだ。茉敷がヤられないという保証はない。
彼女がクズに穢されている光景が脳内に浮かんで、頭をぶんぶんと左右に振り、かき消そうとする。
16時を過ぎた辺りから店員が迷惑な客だと言いたげな顔で見てくる。
胃がきりきりと痛みだし、腹を摩りお冷を喉に流す私だった。
18時を過ぎても茉敷は姿を見せず、連絡も寄越してくれなかった。
「遅いよ……どうしたんだろ、チサぁ?ほんとにアイツがチサに……大丈夫だよね、チサぁ?」
私は不安で十鞠に連絡した。
彼は三コール後に通話に出てくれた。
『もしもし、縞那賀?どうしたの?』
「あっ……えぇ、っとぅ……あのぅっ……そのっ——」
『縞那賀落ち着け!縞那賀、息を整えて落ち着こ。な?落ち着いて、ゆっくり話そう……縞那賀』
「あぁっ、うぅ……うん。はぁーふぅー……はぁーーふぅうっ——おぅ、落ち着いた、十鞠くん。えっと、チサから連絡とかメッセ来た?」
『茉敷から?いや、来てないけど……彼女になんかあった?』
「えっとぅ、そっ……それはぁ……なんていうか……」
私は言い淀むことしか出来なかった。
『言いにくいことなら無理に聞かない。何をして欲しいんだ、縞那賀?』
「……あっ、ありがとぅ。えっと、チサにどうしてるか聞いて欲しい……」
『わかった。じゃあね』
「うん。ありがと、ごめんね」
十鞠との通話が切れ、八佐視にも連絡した。
八佐視に連絡したが繋がらず、二度も掛け直したが繋がらなかった。
「祐斗のバカっ!なんで出てくんないの、こんな時に……もうぅ祐斗ぅぅっっ!」
一滴の涙がスマホの画面にぽたりと落ちた。
十鞠との通話を終え、12分後に十鞠が連絡をくれ、通話に出た。
『あっもしもし縞那賀?彼女に連絡をしたけど出なかった……三度も掛けたんだけどね。メッセも送ったけど返信は……来てない。茉敷にしてはおかしい……縞那賀にも、そうなんだろ?』
「う、うん……十鞠くん、チサがぁぁ……チぃっうぅぅ……チサぁああぁぁ!!チサに言わなきゃあぁ、きぃ……きっとこんなことにはぁ……うぅっ……っすぅ、ぐすぅっ……うぅっ……ごぉ、ごめんなさいぃ、十鞠くぅうんんんっっ!!!私のせいでぇぇ……ぐすっ……あぁああん、ごっ、ごめんなさいぃいぃぃ……!!」
『泣くなよ、縞那賀ぁ!なんでおまえが謝んだよ、謝らなくていいんだよ、泣くな、落ち着くんだ、縞那賀。何があったか知らないがおまえが謝ることはないからな。茉敷から連絡やメッセが来たら知らせる。それに彼女ん家に行って様子見てくる。おまえは彼氏と家に居ろ。わかったか?』
「うん……ごめんね、ありがとう十鞠くん」
『おぉう……じゃあな』
カフェが閉店する19時まで彼女を待ったが姿を現してくれなかった。
店員に出て行く様に言われたが15分だけ待たせて欲しいと懇願し待つことが許され残ったが、結局彼女は戻って来なかった。
私はカフェを出て、カフェの前で彼女に連絡したが繋がらなかった。
彼女にメッセージを送信し、帰宅した。
私は帰宅して着替えもせずに八佐視に連絡を入れた。
しかし、繋がることはなかった。
夕食を摂る気にもなれずに、手洗いうがいを済ませ、寝室に直行し、ベッドに寝た。蛍光灯の照明が付いていない暗い寝室の天井を見つめた。
茉敷からの連絡やメッセージの返信は待てども待てども来ない。
後悔ばかりしている。
チサぁ……無事であって。
私は瞼を閉じてみるが、茉敷が金山に穢されている光景ばかりが延々と流れて映っている感覚ばかりが身体を侵蝕して寝られやしない。
涙が溢れて、止まらない……ずっと涙がベッドのシーツを濡らし続けた。
私は私自身を呪った。昨日と同じ様に……一昨日と同じ様に——金山に犯られた日からずっと呪い続けている。
十鞠健に謝るだけでは赦されないことをしてしまった。償えない罪を犯してしまった……私は。




