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呼び出し

 交際している縞那賀を金山の住むマンションに置いてきた翌日は、ラインの通知音で目覚めた俺だった。

 スマホの画面に、『送ってこうかって言ったら、断られた』という金山からの文面が表示された。

 俺は思わず舌打ちをして、上半身を起こした。

 髪をガシガシと掻いて、欠伸をした。

「今日は予定がなんもないな……」

 俺はベッドから下り、裸足のままでスリッパに引っ掛け呟き、立ち上がる。

 そのまま扉の方へ歩み、寝室を出て渇いた喉を潤しにリビングに向かう。

 リビングに片脚を踏み入れた刹那、スマホが着信音を鳴らした。

 スマホの画面には、明石華菜子と表示され、迷う事なく通話に出る俺。

「もしもし、華菜子ちゃん。こんな朝っぱらからなにー?」

『はよ〜っす、せぇ〜んぱいっ!例のカフェで会いたくて。開店時間に来てくださいねっ!』

 甘く舌足らずな溶けそうな声で用件だけを告げて、通話を切る明石。

 俺は明石の一方的な通話に、首を傾げながら時刻を確認した。

 スマホの画面には、05:17と表示されている。

 俺が目覚めて三分も経過していない。

 キッチンで二Lのペットボトルを手に取り、天然水を沸かし即席のあさりのみそ汁の支度を始める。お椀に入れた調味みそとあさりに沸かした天然水を注ぎ、混ぜ終え、あさりのみそ汁を喉に流し込む。

 あさりの殻を捨て、二人掛けのソファに歩いていき、腰掛け、テレビのリモコンの電源を入れた。


 俺は明石に呼び出されたカフェの開店時間まで三時間以上も余裕があり、ソファに横たわり読みかけの小説を読み始めた。


 俺が外出するまで、縞那賀は帰宅しなかった。

 俺は8時55分に借りてる203号室を出て、玄関扉の施錠を済ませ、明石が集合場所として挙げたカフェに赴いた。


 カフェの開店10分前に、カフェに到着した。

 俺は明石と合流して、奥の席で向かい合い、後輩の女子と対峙した。

 注文を済ませ、明石ははにかみながら、交際が順調に進んでいるかを訊いてきた。

「で、どうです……縞那賀先輩とは?」

「朝っぱらに呼び出して、用件ってそれなの?どうも……浮気されたね」

「浮気、ですか……浮気されたのに、落ち込んでないように見えます。正気ですか、八佐視先輩?」

「僕は正気だよ。落ち込んでないね。強がってるわけでもないんだ。僕の見たいものが拝める条件が揃ったのに、落ち込むわけがないじゃない。ねぇ、華菜子ちゃん?」

「……そのココロは?」

「軽蔑される事ではないよ。浮気した沙奈に浮気した相手とセックスしてるとこを見せてもらうってヤツで、もう興奮したね。至高の景色で、肉眼ではあきたらず——」

「変態」

「歳下に罵られて悦ぶ性癖じゃないから、期待の反応は出来ないよ華菜子ちゃん。言っとくけど、拘束されてサれたいという性癖の華菜子ちゃんに蔑まれるのは納得出来かねないね……」

「私こそ、変態と同類に見られるのはムカつく」

「呼び出されて蔑まれるとは……ノらなければよかったなぁ」

「クソキモい性癖を聴かされた私こそが、変態の反応をするんじゃないの?嘆くという反応をさ」

「ここに来て、厚い皮を剥がすとは……可愛くないね、初めて明石を可愛くないと思ってしまった」

 俺は生きてきた今までに出したことのない低い声を、明石に浴びせていた。

「今までの発言を撤回する気はないけど。ごめんなさい」

 俺の気迫に怖気付くことなく意見を主張して、しおらしく一言だけ謝ってきた。

 明石はグラスのお冷やを一気に呷り、飲み干しグラスをガタンとテーブルに叩きつけるように置く。

「つい熱くなりました。今までの関係は続けたいです……ですから私と関係を断たないでください。お願い、します……」

 頭を下げ、声を震わした明石だった。

「はぁー。沙奈といい華菜子ちゃんといいそんな選択を採るの?僕にはさっぱり。クズで変態な奴と関わり続けるメリットがどこにあるのさ?」

「八佐視先輩ぃ。ダメ……ですか?」

「駄目ではないよ。無駄話で進まないし、この話題は止そう華菜子ちゃん。本題にはいってくれない?」

「無駄話……えっと、その……縞那賀先輩の喘ぎ声を聴きたいって相談で——」

 明石は瞳を忙しなく彷徨わせ、遠慮がちに発した。


 俺は大学に進学してから付き合いが始まった縞那賀で、明石は小学校から知ってるわけで交流してる歴で言えば明石が相談してくるのが不自然なことだ。

 俺が明石と交流しているのは、縞那賀が紹介したからである。


 俺は明石に付き合い、二時間もカフェに居る羽目になった。


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