泣いてる毎日
私は妻に隠れ女子大生を抱く頭のテッペンが薄くなり始める冴えないサラリーマンといた。今まさにサラリーマンの森繁に太くて硬いアレを挿れられ、激しく突かれている最中だ。
ベッドの上で両膝をつき、お尻を森繁に突き出し両腕を引っ張られ両手首をがしっと掴まれる私だった。
私は彼との行為中に馴れ馴れしくリコちゃんと何度も呼ばれながらヤられていた。
私は喘ぎはすれど、別に彼とのセックスが気持ちいいわけではない。性欲旺盛な人間でもない。他人に経験人数を聞かれるのは、私と初めてセックスをしようと近付く相手ぐらいのものだ。
私が好意を抱く人物でもない人間に抱かれているのは、一種の自傷行為だ。快楽を得るための行為ではなく、自傷だ。
私は自傷行為の最中に、脳内で繰り返し浮かんでいるモノがある。それは、谷崎潤一郎の『異端者の悲しみ』の光景である。
高校生の頃に読んだソレに関して抱いた感情が、自傷行為中に押し寄せてきて、泣くつもりもないのに、涙が流れる。
主人公が父親に抱く感情と同じソレが沸々と湧き出す根拠が私にも判りはしない。
私が暗闇に堕ちた生活に身を置いているのは、私の……自身が犯した愚かな大罪の所為なのに、他人の所為となすりつけている。
私は森繁が行為を終わらせ、水分補給をしている彼の傍らのベッドで仰向けで泣いていた。
彼が水分補給を終え、泣いている私の傍の位置に腰を落ち着け、声をかけてきた。
「また泣いてるね、リコちゃん。もう慣れてるだろ、ボクとはさ」
「……あぁ、うん。まあ……ね。森繁さん……奥さんとお子さん、ほったらかしていいんですかホント?こういうの……奥さんとヤればいいんじゃないですか?私とじゃなくて……」
「森繁さんじゃなくて、トウヤ……って呼んで、リコちゃん。ほったらかし……てはないって。二人目、つくる気がないってヤらしてくんないのよ……妻はさぁ。リコちゃん、俺との子供は産む気ぃ無い?」
「サイテーですね、森繁さん。ブちますよ。森繁さんの奥さんに代わって」
「ぷっ……ハハっ!面白いこと言うね〜!リコちゃんにブたれるのはむしろご褒美だなぁ〜!ブってよ、ブちたいならさぁ」
「変態オヤジっ!」
「くっ……ふぷぅ〜っはぁ。堪んねぇ、リコちゃんはぁ!変態で良いから、トウヤって呼んでよそろそろさぁ〜!」
「ぅっ……臭ぇ口を近付けんなッ!……トウヤ。もう帰りたいんだけど」
「傷付くなぁ、ボク……ケアしてるよ、常にね。リコちゃんの芳しいとこ舐めたんだから、仕方ないよ」
「わざわざそんなこと口にすんな!マジ、ブつぞ!」
「宣言せずにやってくれてよかったのに。まだ甘いな〜そこはぁ。はぁ〜あ、もうリコちゃんってば、そろそろ解ってよボクの扱いを!」
「キモっ!帰る!」
「もう帰んの?もう一回戦、ヤろうよリコちゃん」
「もうアンタと付き合うの、疲れた。帰る」
「ぁあーッ、待って待って!もう一万追加したげるからッ!ねッ?」
私が全裸でベッドから降り、歩き出そうとした時機に森繁が片腕の手首を掴んで、引き留めてきた。
「五千プラスなら、考えなくもない……」
「くぅっ……リコちゃんのため。分かった、出すよ」
「そう……そこまでするなら、一度だけね」
森繁が呻いて、渋々首肯したのを確認して、私は再びベッドの上にのり、彼に抱かれた。
こんな私を更生させてくれる素敵な男性なんて現れるのかな、本当に?
森繁に抱かれている最中に、他の男性からSNSのアプリのメッセージが届いた。
私の裡の〈本当〉を観て、救ってよ救世主。
彼女の所為で、こんな生き方しかできなくなった憐れな私だった。
彼女と出逢わなければ、こうなっていないだろう。