蘇るトラウマ
私は高校の同級生から複合レジャー施設に来いと誘われ、渋々ながら赴いた。
15分も経てば17時を迎える時刻に、到着し、誘ってきた久米須の姿を探す私。
二度と逢いたくなかった女子大生の姿を瞳が捉え、踵を返そうとした刹那、久米須洋子に気付かれ、呼ばれる。
「チサぁーっ、来てくれてありがと!急に誘ってごめん〜!人ぉ、たんなくてさ……」
「……ぅ、うん。私、そんなだよ。知ってるでしょ、久米須さん」
「なぁ〜にぃよそよそしくすんの、チサ!少し逢わないだけでそんな風に話すか、あんた!」
久米須が私の背後から肩に片腕を回して、馴れ馴れしく返した。
「ご、ごめん……高校生、居るけど、誘拐してきた?」
「誘拐とは失敬なぁ〜!繋がりのある高校生さぁ!……で、さっき逃走をはかろうとしたけど、遥菜っしょ?」
久米須が武藤に対し、背中を向け、私に耳打ちしてきた
「あぁ……うん。だって……」
「私が傍に居たのに気付けず、止めらんなかったことは悪かったって思ってる。遥菜がどうしてもチサを誘えって言ってきたんだよ。今日だけだから、耐えてほしいチサ。断ったら、どう出るか分かんないでしょ」
「守ってくれるんだよね?信じてるよ、久米須ぅっ!」
「洋子ぅ〜千紗兎とひそひそして、どうしたぁ?千紗兎が来て、もう始められるでしょ。さっさと行こうや」
背中越しに響いてきた伊佐磨の高圧的な声に萎縮した私だった。
「何でもないよ。気にせず、先に行ってて」
私は高校に通っているあるとき、伊佐磨遥菜に迫られ、襲われた。
私は女子バスケ部に所属しており、ある日の部活終わりの更衣室での出来事だった。
私が更衣室の中央に置かれたベンチでひと息ついて腰を下ろしていた。
隣にTシャツを脱いでブラジャーを付けた伊佐磨が腰を下ろし、片手を私の太腿の上に載せ、撫でた。
「千紗兎、好きな人居ないの?」
「ど、どうしたの、伊佐磨さん?居ないけど……」
「そう……私とキスでも、してみる?」
「えっ?そういうのは……」
「してみたら、どういう気分になるか分かるよ。好きな人と付き合えたとしても、キスが上手くないと嫌われることだってあるから。ねぇ、しましょ……キス」
「でも……その、あぁっ……ちょっ——」
私が動揺しているのも構わずに、伊佐磨は両手で頬を挟んで唇に唇を重ね、キスをしてきた。
更衣室にチームメイトの中津と平川が入ってきて、伊佐磨が私にキスをしている光景を面白がって、二人が私の身体を撫でてきた。
伊佐磨がキスを止め、私をベンチに押し倒し、胸を揉んだり、脚を広げさせ、プラクティスパンツ越しに敏感な部分に触れ、弄り、絶頂かせた。
私は伊佐磨遥菜と中津、平川の三人に好き放題に弄ばれ、部活を辞めた。
部活を辞めても、伊佐磨達三人は私に対し、嫌がる行為を何度も及んできた。
全員が着替えを済ませ、バスケのコートに入り、チーム分けをして、バスケが始まった。
私は久米須とのチームになり、一安心し、バスケに集中できた。
一回戦を終え、休憩を挟んで、一時解散する。
私が自動販売機で清涼飲料水を購入していると、背後から声を掛けられた。
「千紗兎、久しぶりじゃん!元気してた?千紗兎に逢えない間ずぅーっと寂しくてさぁ。逢えて嬉しいよ、千紗兎」
「ひぃっ……い、伊佐磨さん。えっと……」
「友達に怯えるって何ぃ〜!高校んときみたく遥菜って呼んでよ、千紗兎〜!」
私が振り返ると伊佐磨が無害そうな笑顔を讃え、柔らかい声音で話してきた。
「……」
「何ぃ、黙っちゃって〜!千紗兎、高校んとき楽しかったよねぇ〜!」
「……楽しくは」
「あんなはしゃいで楽しんだ記憶、失くした〜?久しぶりに逢ったら、またしたくなっちゃうよね〜?まだ余裕あるし、千紗兎も楽しみたいよね」
「私は——」
「遥菜ーっ!チサから離れて!チサを恐がらせないで、ほんと」
「ンだよ、洋子?千紗兎との再会を喜んでるだけなのに、酷いこと言うじゃねぇか。洋子、千紗兎が私とサシで話してぇことがあるらしくてさ……イイよね?」
「アンタ……チサはゲスなアンタの所有物じゃないからね」
「やっと出したか、洋子。拒むか?」
「チサが泣きついて来たら、すぐ帰すから」
「よぅ、洋子ぉ……」
バスケのコートに戻っていく久米須の背中に呼んでみるが、彼女は立ち止まらず、振り返ることもなく離れていく。
「邪魔者は消えたな。さぁ、千紗兎楽しもうね、今から」
「いっ嫌ぁっ……嫌だよぅ、行きたく……なぁいぃ」
私は伊佐磨にトイレへ連れて行かれ、何故か中津と平川の姿があり、当時のトラウマが蘇り、伊佐磨らは現在の私の身体にまたも恥辱を刻ませた。
「ちさちゃんが可愛くなってて、楽しめたよ。またあのときみたいに楽しく遊ぼ、ちさちゃん。久しぶりに興奮しちゃった」
「また茉敷を味わえるなんて思ってもなかったからノっちゃったなぁ。楽しかったぁ〜!次はいつ会おうか、茉敷?」
「なぁ……はぁはぁ……なん、でぇ……こんなことぅっ、出来、んの……?」
「千紗兎の可愛い顔を見て可愛い声を聴いたら抑えらんないんだから、仕方ないよ」
——で、いつだったら空いてる千紗兎?
私は恐怖で身体が震え続けた。