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別れたければ、別れてもいい

 俺の眼前で、交際している女性の縞那賀沙奈が知人の男性である金山裕紀とベッドの上で淫らな行為をしていた。

 二人の男女は、全裸で快楽に溺れている。

 金山が膝をベッドに沈ませ、四つん這いの体勢にしていた縞那賀の背中を反らせ両腕の手首をガシっと掴んで身体を前後に激しく振っていた。

 二人とも気持ち良さげに大きく喘ぎ声をあげている。

 縞那賀が喘いでいる最中に、金山と俺の名前を呼んでいる。

 俺は、縞那賀に浮気をされ嫌悪感を抱くことが無かった。俺は、交際している相手に浮気された人間が抱く負の感情を抱くことがなかった。

 寧ろ、喜ばしさが勝ったくらいである。

 俺は、夢にみていた交際している相手が浮気した相手の快楽を受け入れ喘ぐ姿を、瞳に収められている現状に昂揚感が体内を巡り、汗ばんでいた。

 俺は結婚したくて、交際した恋人である縞那賀沙奈が自身以外の男性に身体を委ね、抵抗することなく快楽に溺れていく姿に興奮していた。

 誰にもこの昂揚感を理解されないことは、承知している。

 一年以上も交際している相手が——浮気した立場の縞那賀沙奈が蒼ざめ、頬を強張らせた上に背後に後退りした程の理解できない要求だったのだ。

 金山が住んでいるマンションの彼が借りてる部屋の寝室のベッドの隅やフローリングの上に二人が脱ぎ捨てた衣類が落ちている。

 縞那賀のブラウスやスカート、ブラジャーにショーツらの身につけていた衣類はデートをした際に身につけていた物だ。

 やはり、人間はどのような言い訳で武装したところで快楽には抗えない。

 淫らな音とエアコンの冷房が稼働している物音に、二人の男女が漏らす喘ぎ声が、金山の寝室に響くだけだ。

 最初は嫌がっていた縞那賀が10分も経たずに金山の手つきに抗わずに堕ちていた。

 縞那賀の嫌がっていた顔は唆られたが、二人が淫らな行為を始めるまでの数十分の時間は、萎えたことを付け加えなければならない。


 縞那賀の身体は、世の男性であれば抱きたいという欲求に駆られるほどに煽情的なものである。

 彼女の肌に傷を刻まれれば、激昂して理性を失ってしまう恐れはある。


 縞那賀と金山は二時間も淫らな行為を行い、満足した金山が寝室を出ていった。

 縞那賀は疲れ果てたらしくベッドの汚れているスペースを避けた位置で仰向けで身体を沈めていた。

「祐斗……ごめんなさい。ごめん、ごめんなさい……」

 彼女が枯れた声で申し訳なさそうに謝り続けた。

「別にボクは謝罪を求めてないから、謝らなくていいよ。なんで別れるという提案を挙げたのに、拒絶したの沙奈?怯えるくらいの要求を呑んでまで、ボクとの交際を続けたいの?」

 身体に力が入らないのか濡れて汚れたアソコが見えるように前面を俺に向けた体勢で謝り続け、許しを乞い、顔を歪めて縋り、か細く震えた声で伝えた縞那賀だった。

「祐斗に棄てられるような裏切りをしたのは自覚してる……ほんとにごめんなさい祐斗。祐斗を裏切った罰を科せられてるんだよね……?謝っても謝っても足りないくらい酷いことってわかってて……」

「いいんだよ、必死に弁解しなくても。許しを乞わなくても……気にしてないから。これからの生き方をどうするかとかどうでもいいんだよ、ボクはね」

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい祐斗ぅぅ……ねぇ、祐斗許してぇっっ……怒鳴ってよ、責めてよっっ、恨んでよ……祐斗のお嫁さんになりたいのは変わってないよ、どうしたら許してくれるのぅぅっっっ!ねぇーーーッッッ!」

 必死に片腕を俺に伸ばす彼女が悲痛な金切り声で縋り続けた。

 俺は伸びた彼女の腕を手に取ることなく、立ち上がり、疲れ果て立ち上がることも出来ない彼女を見下ろした。

「許す許さないっていうそんな感情は、ボクには無いって言ってるじゃん。金山くんと関係を続けたいなら続ければいい……他のやつとヤりたいならそれでも文句はない。帰りたくなったら、帰っておいでよ沙奈」

「えっ、ちょっと待ってよ!ねぇ、祐斗!此処にマジで置いてくの?祐斗ぉぉおおおおおぉぉぉぉッッッッ!」

 俺は金山の寝室のベッドの上で横たわる縞那賀を置いて、扉へと脚を踏みだし、廊下に出た。

 金山がいるであろうリビングに向かう。

 キッチンで佇み、透明なグラスに注がれた水を飲み干す金山と視線が交わる。

「俺がいうのはどうかと思うけど、八佐視って最低だな。置き去りにするなんてよ、縞那賀を」

「じゃあ、言うな」

「オォ〜ゥ、怖ぁ〜!良いのか、般若の面ァで睨んでるのに置き去りにして」

 ニヤけ面で恐れてない調子で悲鳴をあげ、真面目な面で訊いてきた金山。

「般若の面って揶揄うな。そんな感情なんて微塵も湧いてねぇよ。好きにすれば、金山くん。じゃ、帰るよ」

「そっ。気ィつけな、旦那ァ」

 俺は振り返りもせずにリビングを出て、金山の住処を後にした。


 8月中旬の猛暑に晒されながら、自宅へと帰宅した八佐視祐斗だった。




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