25 日記⑤
もう今日が何日なのかもわからない。
何をしていたんだっけ。
何でこんなことになったんだっけ。
今は馬車に揺られている。
みんなと乗っている。
みんなは座っている。
座って下を向いている。泣いている。
何が悲しいのニオちゃん。
ねぇ、いつもみたいに笑ってよ。
どうして泣いているのティタちゃん。
ほら、いつもの強気な態度で私と喧嘩しようよ。
そうでしょエオ君。
⋯⋯聞いてるのエオ君?
ずっと眠ってる。
魔王との戦いで疲れちゃったのかな。無理も無いよね。凄い戦いだったもん。
君は最高に格好良かったよ。
ずっとずっと、君は格好いいんだ。
昨日も、今日も、明日だって。
私の傍で格好良い君でいてよね。
痛い。
痛いし、悲しい。
ティタちゃんに殴られた。
本気で殴られた。
どうして?
ねぇ。
私が笑ってるから?
何で笑ってるかって?
だってエオ君が褒めてくれた。
私の笑顔が好きだって。可愛いって。褒めてくれたんだよ?
だからずっと笑っているの。
私、ずっと笑っているの。
それの何がダメなの?
どうして今笑ってちゃいけないの?
エオ君が起きちゃうから?
ねぇ、どうしてニオちゃんは私を抱きしめるの?
これじゃあ日記が書けないじゃない。
日記。
書かなきゃいけないんだ。
だってエオ君に言われたから。
君は記録係だって言われたの。
エオ君が言った。
全部、エオ君が言った。
だからしたの。
だから笑ったの。
笑って笑って。
みんなも笑えばいい。
そうしたらエオ君だって、
意味わかんない。
エオ君はもういないって、意味わかんない。
いるよ。
ほらすぐそこに。
眠ってるだけだもん。
今は疲れて眠っているだけだもん。
直ぐに起きるよ。
きっと、もうすぐ起きる。
あはは。
ニオちゃん何その顔。
あはははは。
ティタちゃんも変な顔。
あはは。
はは、は。
は⋯⋯。
あはははははははははは。
ダメだ。
もうダメだ。
エオ君が死んじゃったんだ。
もう二度と起きないんだって。
じゃあもう笑っても意味ないじゃん。
笑っても、君はもう褒めてくれない。
あはは、はは。
ダメだよ。そんなの。
何でエオ君が死ななきゃいけないの?
エオ君は魔王を倒したんだよ?
世界を救ったんだよ?
みんなはそれで笑えるのに。
みんなは何も知らずに笑うくせに。
何で私たちだけ泣いているの?
何で私たちだけ笑っちゃいけないの?
おかしいよ、そんなの。
絶対おかしい。
冷たい。
凄く冷たい。
エオ君の手が冷たい。
ダンジョンに入った時も、花火の時も、もっと温かかったのに。
どうして冷たいの。
君はいつも温かかったでしょ?
死んでるから?
死んでるから。
死んでる。
いや。
そんなのいや。
いやだよそんなの!!
私はエオ君とずっと一緒にいたいの!
一緒に笑いたいの!
一緒にご飯を食べたいの!
一緒に生きていたいの!!
私ひとりじゃダメなんだよ。
私だけじゃなにも楽しくない。
生きている意味が無い。
だから、お願いします。
お願いします女神様。
どうかその力を貸してください。
本当にいるのなら、私を助けてください。
エオ君を助けてください!
何でもするから。
私、どんなことだってするから!
お願いします。
エオ君を生き返らせて。
もう一度、あの頃に戻りたい。
幸せだったあの頃に戻りたい。
大好きだったあの頃に戻りたい!!
もう一度。
もう一度、やり直せたら。
最初から全てをやり直せたら——。




