18 日記②
——〇〇年。〇〇月〇〇日。
今日は良いことと悪いことがあった。
まずは悪いことから書こうかな。
何と今日はダンジョンに入ったんです。私たちは止めたのにさぁ、君がどうしても入りたいって言うから仕方なくね。
私、ダンジョンって良いイメージ沸かなかったんだ。
だってまず暗いでしょう? 私が暗いところ苦手なの君も知っているはずなのにさ。もうメチャクチャ怖かったんだから。
それに魔物だっているし。
わざわざ魔物がいっぱいいるところに行くかな普通。
トラップだってあったんだよ?
下手したら即死するような超危険なのが! こうして日記を書いている今も、生きて帰ってこれたのが不思議なぐらいだよ。
ダンジョンにはロマンがあるんだって目を輝かせていたけど、男性って本当にそういうの好きなんだから。でも、君以外はもれなく可愛い女性しかいないことを、ちゃ~んと理解するべきだと思うんだけど。
だから私は気が進まなかったんだ。
結局ダンジョンに入ることにはなったんだけど、終始生きた心地がしなかったよ⋯⋯。
案の定、君はいっぱいやらかしちゃうし。
最初に見つけた大部屋が落とし穴だらけで私落ちそうになったんだから。しかも天井がみるみるうちに下がってくるし、あのまま脱出できなかったら潰されてたよ全く。
何とか出れたと思ったらスケルトンの大群が現れるし。
まぁ、あれは聖女の加護と君の光魔法で簡単に倒せたけど。
でも一番大変だったのは最後のミミック!
宝箱を見つけて嬉しいのはわかるけど、もう少し慎重に開けるべきだよ。勇者がミミックに食べられて死んだなんて絶対に嫌だからね私。
本当に昔っから無邪気で、考え無しなんだから君は。⋯⋯そういうところが可愛いんだけど。
と、まぁいろいろ文句を書いちゃったけど、最後に良いこともあったんだ。
ダンジョンから出ようって時に、道が二手に分かれていたんだよね。最初は一本道だったのに、気が付くと地形が変わっているのもダンジョンの怖いところだ。
でも大丈夫。
こっちには聖女と魔法使いがいるからね。二手に分かれて、出口を見つけた方がもう片方のペアに合図するって作戦を取ることにしたの。
その時、私は君とペアになったんだ。
二人きりでダンジョンを進むのは怖かったけど、君が手を繋いでくれたことが凄く嬉しかった。
手を握っていると、君も大人になったんだって思ったりしてさ。大きめの手がやっぱり男性なんだな、とか。凄く、ドキドキした。
ただ、君は何とも思っていないみたいだったのが癪だったけど。
そりゃあ私だってスタイルに自信なんて無いし、魅力的な女性ってわけじゃないけどさ。それでも私だけドキドキしてるのは、何か負けた気がしたんだ。
絶対いつか君の顔を真っ赤にさせてやる!
って決意した時、君が私を抱き寄せたんだ。
一瞬、何が起きたのかわからなかったけど、壁から突き出された槍が全てを物語っていた。
君が助けてくれたんだ。
私は嬉しくって君を見た。そしたら、顔を真っ赤にして慌ていてね。あぁ、ようやく私を異性として見てくれたんだって。いや遅すぎるぐらいなんだけど、まぁ君はそういうやつだしね。
だからこのチャンスを離してやるもんかと思って、つい抱きしめちゃった。
君は戸惑っていたけど、実は私もかなり恥ずかしかったんだから。
大きくて、暖かくって、ドキドキした。君の匂いを嗅いで、好きが溢れだしちゃった。
幸せだったなぁ。
大好きな人をあんなにも感じられたんだもん。この気持ち、君にも伝わっていればいいのに。
本当に最高な時間だったんだ。
もうずっとこのままでもいいやって思ってしまうぐらいにね。
けど、そんなわけにもいかない。
非常に残念だったけど、仕方なく離れてあげた。それに、見たことの無かった君の新しい顔も見れたしね。
あの顔が見れるならダンジョンも悪くないかな。
もし魔王を倒して機会があったなら、また行くのもいいのかもしれない。
その時、君は何て言うのかな?
喜ぶかな。それとも思い出して恥ずかしくなっちゃうかな。
後者の方がいいって思っちゃう私は本当に悪い女だよね。




