78 みんなで集合
「ごめんくださーーい! あ、いたいた、みょんちゃん!」
「ああ、いらっしゃい。おや、太郎君も一緒じゃね」
わしは、ここ上杉電器商会でアルバイトをしてるんじゃ。アルバイトといっても、簡単な店番をするだけなんじゃが、ここのじいさんとは腐れ縁でな。昔からよく知っとるんじゃ。
「いらっしゃい、さあ、2人ともこっちに来て」
「あ、三成実ちゃん!」
「おお、志津奈も太郎君も中学生かー。大きくなったわね」
「何いってんの、みー姉ちゃんだって、上杉電器の名前入りジャンバーが似合ってるよ」
「へへえ、いうねえ~太郎君。どうだい次期社長の姿は!」
「「「あははははは…………」」」
まったく、いつも賑やかで楽しいのがこの上杉電器じゃの。この三成実ちゃんは、上杉電器の三代目なんだよ。一人娘なんだけど、大学を卒業してこの店に就職するって自分で決めたそうじゃ。今年が勤めて3年目になるかの。
「ひょっとして、みーちゃんも、わたしの話を聞いてくれるの?」
「もちろんよ、みょんちゃんに聞いたけど、何か相談があるんだって?」
「うん……まあ、相談というか、何というか……とにかくわたしの未来を決める材料が欲しいの!」
そうだの~中学生になったということは、自分の未来が気になる年頃じゃなあ。この子達は、どんな未来を見ているんじゃろな。
「なあ、志津奈ちゃん。三成実ちゃんの意見も役に立つんじゃないかの? 彼女は、もう立派に社会人なんだしな」
「うん、わたしもそう思う。期待してるわよ、みーちゃん!」
「ああー任せてくれよ! このあたしの経験を存分に話してあげるからさ。……ま、みんなここに座ってジュースでも飲みながら、楽しくやろうや!」
三成実ちゃんが運んできたジュースやお菓子を上杉電器屋の売り場に置いてある応接セットに置き、わしらはそこのソファーに腰かけたんじゃ。
この時間帯ならほとんどお客さんは来んし、来てもみんな町内の顔見知りばかりじゃから、わしらがここで話をしていてもまったく気にすることはないんじゃ。なんだったら、来たお客さんも志津奈ちゃんの悩み相談に応えてくれるかもしれん。
つまり、虹ヶ丘っていう町は、そんな気心の知れた人達が集まっている町なんだよね。
「なあ、志津奈。何を悩んでるんだい?」
歳は離れているけど、幼馴染の三成実ちゃんは、すぐに核心を突く話を持ち掛けたんじゃ。まったく、この子は素直じゃから、回りくどいことなんかまったく頭に無いんじゃ。ストレートに進むのが、この子の持ち味じゃな。
「え? みー姉ちゃん、いきなり聞くの?」
「いいじゃんか、太郎君よ。さっさと話して楽になればいいんだよ!」
「……あはは、えっとね、わたし、別にそんなに落ち込んだり、気にしたりしているわけじゃないからね」
「そうなの? しーちゃんってさ、いっつも一人で頑張っちゃうから、今回もすっごい困ってることがあるのかなって思っちゃってさ」
「あはは、太郎君は、気にし過ぎだよ!」
「ほら、見ろ! 太郎君は、繊細過ぎるんだよ。いいから、志津奈、いってみろよ! 何でも聞くからさ」
「うんとね………………」
(つづく)




