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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第6章 ”みょんちゃん”の日常(未来の子ども達へ)【過去】
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76 健やかな未来を 5(私の進む道)

 1時間余りの講義が終わると、岡崎先生は、ぼく達を学生に紹介してくれた。


 そして、簡単な自己紹介の後、ぼく達から質問する時間を作ってくれた。

 

 和美(なごみ)笑太(しょうた)は、学生が医者を目指す動機や勉強の仕方、勉強で苦労すること、大学で楽しいことなどを質問していた。

 動機は様々あったが、みんなお医者さんに憧れて、患者さんを助けたいと思っていることが分かった。

 ただ、勉強は難しいらしい。

 それでも、あきらめないで頑張っていると話してくれた。




 そんな話を聞きながら、ぼくは、ちょっと違うことが知りたかった。


「あのー、みなさんは、岡崎先生にいろいろ教えてもらっているんですよね。

 岡崎先生は、大学の先生ではなくて、病院の先生なんですけど、どうして病院の先生が、患者を直すこと以外に人に教えることをしているのでしょうか?」


 学生の一人が、すぐに手を挙げて、答えてくれた。


「ぼくは、岡崎医院に子どもの頃から通っていました。とってもよくしてもらいました。

 はじめは、患者さんもたくさん来ていたんです。

 病院ですから、繁盛していたというのは、おかしいんですけど、そうなんです。


 ある時、先生は言ってました。“これじゃ、ダメだ”って。


 たぶん、時間が足りないんです。患者さん一人にかける時間が足りないんです。

 そこで、先生は仲間のお医者さんを増やすことにしました。


 そして、患者さんを他のお医者さんと分け合うことにしたんです。

 そうすると、1人の患者さんとゆっくり話もできるし、治療もできる。病気の研究もできるという訳です。


 でも、そう簡単にお医者さんは増えませんでした。

 そこで、先生は自分の時間の半分をお医者さんの育成に使うようにしたそうです。

 そうすれば、いつかきっと、この虹ヶ丘にお医者さんがいっぱい増えるだろうと考えたんです。

 ぼくも、その考えに共感しました。

 だから、ここで学ぶ事にしたんです。」


 別の学生も話してくれた。

「私も同じです。

 虹ヶ丘大学は、医学の勉強をしようと思えば、町のお医者さんが手伝ってくれます。

 また、他の大学へも勉強に行かせてくれます。

 東京だって、勉強に行っていいんです。

 もちろん、お医者さんになった時、どこでお医者さんになって勤めても構いません。

 とっても勉強のしやすい町なのです。

 もし、他の町でお医者さんになったとしても、いつかは虹ヶ丘のために、役に立とうと考えています」


 他の学生もみな、うなずいていた。




「私も……お医者さんの勉強がしたいの……」

 その時、和美が声を上げた。



「お父さんが、お医者さんだからという訳ではなく、……私は……“人がどうして病気になるのか”……を知りたいの。

 ……そして、その病気を一つでも多く治せるようになりたいの。

 薬も調べたいの。

 ……人間自身の直す力も知りたいの。そんなお医者さんになりたいの」


 すると、学生の一人が

「そんなお医者さんがいてもいいんじゃないかな。

 病気で苦しむ人が一人でも少なくなれば、きっと世の中がよくなると思うよ」

と、優しく言ってくれた。


 そして、母さんも

「そうね、そんなふうに思っている子どものことは、絶対にみんなが助けてくれると思うの。

 いいえ、この虹ヶ丘は、今まで助けてきたのよ。あなたのお父さんのようにね………」



「………助けられましたね………本当に。

 ……私は、この虹ヶ丘で育てられたからこそ、医者になれたんだ。

 だから、何としても医者になりたかったんだ」


「何言ってるの?……お陰で私も、ここにこうしていられるんでしょ!」


 そうか、母さんは自分だけが特別じゃないことをみんなに知ってほしかったんだ。この虹ヶ丘に住む人達が安心して暮らせることが、大切なんだってことを。


 母さんの願いは、虹ヶ丘の町を発展させることでも、町民を裕福にさせることでもなかったんだ。ただ、そこで健やかに暮らすことが幸せだったんだ。


 母さんにとって幸せとは、お金でも買えないし、物でも満たされることがないということを開拓に入った時からわかっていたんだから……。



 ぼくは、もう一度母さんの顔を見た。いつも穏やかで優しい顔をしている。どんな時もみんなを信用して任せていたんだ。

 ただ母さんは、それを見守り、みんながこの虹ヶ丘の町で幸せに暮らせることだけを願い、考えてきた。


 母さんが作りあげた“虹ヶ丘小学校”は、そんな母さんの想いを受け止め、実現させられる多くの人達を育てたんだ。


 でも…………実際にそうだったとしても、きっと“みょんちゃん”は、こう言うだろう!


「私だって、いつもみんなに支えられ、育てられてきたのよ!素敵でしょ、この虹ヶ丘は……ね!」


〔つづく〕


 このお話のもとになった「北の虹風 シリーズ5作分」は、これで終了です。一応完結なのですが、次回からは、新作を追加していきます。

 多少、間が空くかもしれませんが、今月中には、この続きを投稿したいと考えています。

 その時は、また、お付き合いいただけますよう、お願い申し上げます。


 ありがとうございました。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。


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― 新着の感想 ―
医療の思いのリレー。素敵ですね。 大団円かと思いきや、続きがあるのですか⁉️ そう言えば現代の時間軸もまだ途中でしたね。ひょっとしてそちらの続編でしょうか? 続きも楽しみです。 (*´ω`*)
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