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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第6章 ”みょんちゃん”の日常(未来の子ども達へ)【過去】
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71 恋の案内人 5(希望のバレンタイン)

 翌週、虹ヶ丘大学の阿部好男(あべよしお)教授の部屋で、とうとう最終回の講座が始まった。


 図書館先生は、しっかりと阿部教授を見つめ、話を聞いている。

 ぼくと母さんは、難しい話は苦手なので、教授の話よりそんな図書館先生が気になって仕方がなかった。


 それでも、無事講座が終わった。


「好男さん、長い間講座お疲れ様でした。これは、ほんの少しの気持ちです。お納めください」


 図書館先生が、阿部教授に渡したのは、今日の朝、母さんと相談して持って来た本とチョコレートだった。




「はい、ありがとうございます。それでは、遠慮なくいただきますが、その前に、お話を聞いていただけますか?」


 改まって阿部教授は、より丁寧な言葉で静かにお願いしてきた。

 これは、図書館先生に聞いてほしいということらしいが、ぼく達にも証人として、一緒にこの場に居てほしいと頼まれてしまった。


「僕は、この講座の受講者が、あーちゃんだと知った時、とても嬉しかったのです。

 そして、半年の講座を無事やり遂げること、その間あーちゃんが講座に出席し続けてくれること、この2つの事が重なったら、それはまさに僕があの卒業式で感じたことを今お願いしなければならない時だと思っていたのです。


 僕は、あの卒業式の時、あーちゃんがこの虹ヶ丘から居なくなると聞いて、とても悲しくなりました。

 僕は、ずっと傍に居てほしいとあの時思ったのです。

 そのためなら何でもできると思いました。


 だから、僕は学びました。

 そして、今があります。


 この講座を開けるようになりました。


 だから、言います。

 本田彩子(ほんだあやこ)さん、僕と結婚してください。ずっと傍にいてください。

 一緒に、本に囲まれて暮らしていきましょう」


 阿部教授は、真剣だった。今までの想いをすべて吐き出すように、最後まで図書館先生……いや、彩子さんに自分の言葉で伝えた。






 彩子さんは、その言葉を一つ一つかみしめるように、自分の心の中で繰り返しているように見えた。

 そして、彼女は何のためらいもなく、


「ありがとうございます」

と、大粒の涙を流して答えていた。


 これは、うれしいのだということは、ぼくでもすぐにわかった。


 すると、母さんが、少しおどけたように付け加えた。


「好男君…………さっきもらったもの見てごらんなさい……」


「あ!………これは!……チョコレートと本ですね。

 この本は、“セントバレンタインデーの新しい風習”……!!


 知ってます!この本!


 本当のバレンタインデーを模倣した新しい習慣を定着させようと試みている国のお話で、女性が男性に求婚をするためにチョコレートを贈る……あ!!」


「そう!その通りよ!よかったわね、好男君、先に求婚できて。

 …………もう、返事は、決まっていたのよ……よかった、よっかったわね……」


 阿部教授も図書館先生も、二人とも頭を掻きながら顔が真っ赤になっていた。








・・・・・・・・・・・・・・・・・


 後日、阿部教授から小包が届いた。

 中には、きれいに焼きあがったアップルパイに甘いチョコレートがかけてある逸品のおやつだった。

 それには、手紙が添えられていて、二人がめでたく結婚することが報告されていた。


 まもなく、図書館先生からも自分達の新居建築の依頼を兼ねて大学の料理講座目録が届いた。

 その中に、実はチョコレートバナナサンデーを作れる人の名簿があったのである。


「みょんちゃんは、いつわかったの?

 図書館先生と阿部教授が結婚するかもしれないって…」


「だって、あんな面白くないお話を半年も聞いてるって言うのよ。そりゃあ、好きに決まってるって思うわよ」


「へー、じゃあさ、どうして嫌われるかもしれないのに、面白くないお話をしてたんだろねえー」


「それも決まってるわよ、面白いお話だったら、他の人が来ちゃうじゃないのよー」


「へーそんなものなのー」


「まあー恋の話は、ダイちゃんには10年早いかなー」


〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
みょんちゃんの講座の寸評が辛辣w 講座でなくても、普通にお茶か食事へお誘いすれば良かったのに……と、思いましたよ! (´ε`) バレンタインデーがまだ浸透する前の頃の話なんですね。ほっこりします。 …
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