表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第6章 ”みょんちゃん”の日常(未来の子ども達へ)【過去】
65/91

64 夢の計画 2(社会見学?)

「ダイちゃん、早く出かけるわよ!」

「大丈夫だよ、みょんちゃん。まだ、早いってば。お店は開いてないよー」

「そんなことないわよー、今日は日曜日だし、朝早くから開いているお店だってあるわよ、ねえ、けんちゃん!」

「まあ、中には、あるかな?」


 本当に母さんは、買い物が大好きなんだ。

 そんなに高いものを買うわけではないけど、とにかく、たくさん買ったり、不思議なものを買ったりするんだ。

 この間の“みかん”も、あんなにたくさん買い込んだりするし、前も“熟した柿”を買い込んだりしていたことがあった。

 理由を聞いても、好きだからというだけなんだから、よくわからない。


 今日は、家族3人で、朝から商店街へ買い物に出かけることにした。特に、何を買うという目的はないので、いろいろなお店を見て回るのが目的のような感じだ。



「さあ、はじめはどこから行きましょうか?なんか、ドキドキするわね」


 なぜか、母さんだけが、一人浮かれているような気がする。

幸い12月の中旬とはいえ、天候に恵まれ今日は暖かい日でよかった。晴れているので、雪道でも、安心して歩ける。

 家から商店街までは、そんなに時間はかからない。

 手袋、帽子、防寒のオーバーを着て、長靴を履いて3人で雪道を20分ほど歩いた。


 この辺も前は畑ばかりだったが、今では住宅が多くなった。

 父さんが心配していたように、畑が少なくなってきたとは、このことなのかなあと考えてもみた。

 ただ、住宅の奥の方には、たくさんの畑が見えるし、虹ヶ丘の町全体では、畑が減っているという話は、あの町長選挙の後、聞かなくなった。きっとあの黒岩町長さんが、頑張っているんだろうと思う。



「あそこ、あの店が開いているわ!」

「どこ?みょんちゃん」


「あれは、豆腐屋さんだね。豆腐屋さんは、朝が早いお店だからね」

「そうね、ダイちゃん、豆腐って、どんな材料で作るか知ってる?」

「え?材料?えっとね……豆腐は、……大豆だったかな…」

「そうね、ここの豆腐屋さんは、虹ヶ丘のおいしい大豆と、虹ヶ丘のおいしい湧き水を使っているの、だからおいしい豆腐が作れるのよ」


「そうか、ここは、虹ヶ丘の大豆を使っているのか…」


「おじさん……、いつもの油揚げ、くださいな」

「お、みょんちゃん、いらっしゃい、今日は、早いね」


「え?みょんちゃん、豆腐じゃないの?油揚げなの?」

「何驚いているのダイちゃん。……知ってる?油揚げって、豆腐で作るのよ!おいしい油揚げは、おいしい豆腐屋さんで売ってるの!」


「さすが、みよちゃん、買い物上手だね」

 豆腐屋のおじさんがほめてくれた。


「次行くわよ、次はここね!」


「わあ、いいに香りだね~。これは、味噌のお店だね、みょんちゃん」


「そうよ、ここは、お味噌屋さんよ。おじさん、大根の粕味噌漬けちょうだい」


「あ、みょんちゃん、そろそろかなと思ってたよ、無くなる頃だもんな。待ってたよ、はい、これ」


「え?味噌を買うんじゃないの?」

「うん、ここの味噌はとってもおいしいの、だから、味噌は1年分買ってあるの。

 でも、味噌がおいしいから、その味噌で漬けた漬物はもっとおいしいのよ。

 しかも、虹ヶ丘で採れた野菜を漬けてあるからなおさらでしょ」


「みよちゃんは、漬物の味にもうるさいんだもんね!さすがだよ」

 お味噌屋さんのおじさんも褒めてくれた。


 母さんは、不思議なものを買ってばかりだと思ってたのに、おいしいものをちゃんとわかって買っていたんだ。


「さあ、次は、ここよ」


「え!ここの香りは、ひょっとして、お醤油屋さん?」

「あ、正解」


「まって、みょんちゃん、なんか、全部、大豆でできる商品ばっかりじゃないの?」

「あれ?わかっちゃった?」


「僕も何か変だなあとは思ったんだけど、ひょっとしてこの後は……」

「そう…“納豆屋さん”とか“枝豆屋さん”とか“豆乳屋さん”とか……」


「おいおい、虹ヶ丘商店街には、確かにたくさんのお店があるけど、そんなに専門のお店があるのかい?」


「ええ、あるのよ。

 虹ヶ丘商店街は、今、とてもたくさんのお店があるの。

 実は、いろいろな種類のものを作らないと売れなくなったのよ。

 昨日、一太君が言っていたように、たくさん作っても買う人がいないので、品物が余ってしまうの。だから、いろんな種類のものを作っているの」


「そうか、品物が余ったら、お店が潰れてしまうんだ」


「そうなの。

 それで、いろいろな工夫をしているっていう訳なの。

 他の品物を売っているお店も似たようなことをしているわ。今、虹ヶ丘商店街は、多種多様なお店で、いっぱいになっているの」


「そうか、これが、昨日、笑太のお父さんが言っていた“遠くに品物を売れない”ということなんだ」


「ダイちゃん、わかった?

 もし、どこへでも売れるようになったら、品物は余る心配がないから、たくさん作れるわ。

 これが、作物だったらどう?

 ダイコンやジャガイモだったらどう?」


「うん、いっぱい作っても心配ないと思う」


「いいや、待ってくれ。ダイコンやジャガイモなら、どこでも作ってるぞ!いっぱい作ったからと言って、売れるか?」


 父さんは、心配そうに言った。すると母さんが、自慢げに言った。


「さっきの豆腐の話を思い出して。

 普通の豆腐なら、買わないけど、おいしい豆腐なら、また買いたいと思うのよ。

 ダイコンだって、特別なダイコンなら、特別なおいしい大根なら、きっとまた買いたいと思うはずなの!」


 その話をしている時、一人の男の人が、みんなの前に現れ、話に割り込んで来た。


「そう、その特別なダイコンを作らなければなりません。

 ダイコンだけじゃなくて、ジャガイモも、カボチャも、虹ヶ丘特製のものです。

 これが、農業を基本に据えて、この町を守るために考えた大切な方針です。」


 黒岩(くろいわ)町長だった。

 あの選挙の時より、少し、しっかりした感じに見えた、体格はそんなに変わらなかったが、表情がはっきりし、優しい笑顔は、ますます優しく見えるように感じた。


「あ、すみません。あの時は。

 ……僕も一太さんから、相談を受けたんです。

 とにかく、虹ヶ丘の野菜は、素晴らしいです。皆さんが、開拓の時から、品種改良して育ててきたジャガイモの話は知っています。同じようなことをいろいろな作物で行い、おいしく、そしてもっといろんな料理や生活に生かせるように価値づけして、何とか多くの人に買ってもらえるようにしたいと考えています。

 …………そのためには……」


 その時、ちょうど笑太のお父さんもやって来た。


「やあ、みんな、そろっていたんだね。建造さん、みょんちゃん、ダイちゃん、商店街は見ることができたかな?」


「はい、何件か回りました。朝早くから開いているお店もあって驚きました」


「朝じゃないと、だめな商売もあるんだ」


「それに、一つの材料から、違う商品を作っていることもわかりました」


「あはは……それは、まあ、苦肉の策なんだけどな…」


「で、どうだい、たくさんの人に品物を買ってもらう方法、何かいい方法あるかな?」





「ねえみんな、これから、上杉(うえすぎ)君の電器屋さんに行ってみない?」


 また、母さんが何か思いついたらしいけど、ニコニコしながら言っているところが、怪しいんだよなあ。




〔つづく〕


 ありがとうございます。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
専門店が多いのですね。 何でも揃う巨大なショッピングモールも良いですけど、昔ながらの商店街も素敵ですよね〜。 黒岩さんも町長として頑張っているようで何よりです。 (*´ω`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ