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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第5章 つながり行く未来を求めて(虹ヶ丘小学校の発展)【過去】
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56 親子喧嘩 1(みょんちゃん)

 あれから10年経ったんだって。


 だって、ぼくは10歳になったんだもん!ぼくは、大樹(だいき)桜山家(さくらやまけ)の一人息子だ。

 まわりの大人は、『あの時は、大変だったなあ~』って、よく楽しそうに話しているけど、ぼくにはさっぱりわからない。

 

 それでもぼくにわかることが一つだけあるんだ!


 それは、ぼくのお母さんのことが、みんな大好きだってことさ!もちろんぼくだって、大好きなんだ。でも、お母さんは、ぼくにもアレを押し付けてくる。嬉しそうに!

 照れてるぼくを嬉しそうに見ながら、お願いするんだよなあ~


 大人たちは平気で、そう呼んでいる。≪みょんちゃん≫って。

 でも、ぼくは、まだちょっとなんとなく恥ずかしいんだけど……………








 まな板の乾いた音がする。たぶん、今日もいい天気なんだ。

「(……………早く起きなきゃ…)


 味噌のにおいがする…………

「(………ん、まずい、急がないと…)……よし!」


 何とか間に合った。



「あら、ダイちゃん、おはよう。……うん?もう……、起きちゃったのね ╮(╯-╰)╭」


「おはようございます、みょんちゃん。……え?もうって…何?………ぼく、お腹すいたよ」


「あら、まあ、じゃあ、早く、顔洗って、着替えちゃいなさい」


 今、“みょんちゃん”と呼んだのは、うちのお母さんだ。

 理由あって、うちでは、いや知っている人は、みんな“みょんちゃん”と呼んでいる。



「お、ダイちゃん、最近は自分で起きれることが多いじゃないか」


 外の花壇の水まきを終えて帰ってきたお父さんが、“知ってるくせに”、冷やかしてきた。


「おはようございます、けんちゃん。そんなこと、また聞くの?」


「そうなのよねーー。

 ダイちゃんったら、最近自分で起きちゃうから、私の出番がなくて、朝の楽しみが無いのよねー」


「だって、いつまでも寝ていると、みょんちゃんが……“布団はそんなに楽しいの?”って言って潜り込んできたり、体をこちょばしたりして、一人で笑い転げて楽しんでいるんだもの。……ぼくは、もう大変なんだよ」



「へー、そーなんだー、ふふふふ…」


 何となく、父さんは、思い出し笑いをしているように見えた。


「けんちゃんだって、やられたら、大変なんだからね」


「…………ああ、大丈夫…………もう、だいぶ前に…………、いや、………何でもない」



 母さんは、何だか楽しそうに鼻歌を歌いながら、台所で茶碗にご飯を盛っていた。

 父さんは、台所へ行き、母さんが盛ったご飯やみそ汁など、食べるものを茶の間のちゃぶ台に運んだ。

 茶の間の真ん中には、大きくて丸いちゃぶ台があり、座布団が敷いてあるので、それに座ってみんなで食べる。


「みよちゃん、あの花が、今年もきれいに育ってきたよ。つぼみも見えてきたぞ」


「きっと、黄色やオレンジの花がたくさん咲くわね。あの時、けんちゃんがくれた花束についていた種から増やした花ですものね」


 これは、この前聞いたんだけど、父さんが母さんに結婚を申し込んだ時に渡した、ドライフラワーっていう花の束に、種が紛れこんでいて、それを見つけた母さんが、この10年間でうちの庭いっぱいに増やしたそうだ。


「ねえ、けんちゃん?あのドライフラワーっていう花は、乾燥していたけど、とっても本物の生の花のようにきれいだったわよね。

 私も、ドライフラワーに負けないくらいきれいでしょ……?」


「ええ?やっぱり、あの花が育つと、今年もそれを聞くの?」


「もちろんよ!」


「はいはい!それは、やっぱり、みんなで“みょんちゃん”って呼び続けているからに、違いありません」


「そうそう!“みょんちゃん”は、魔法の言葉なのよ!なのに、けんちゃんは、呼んでくれないのかしらね???」


「いいじゃないかー“みよちゃん”って昔から呼んでいるんだから、勘弁してよ!」


「まあ、いいでしょ!あはは」



 母さんは、いつもの笑い声で、また朝から食卓を明るく照らしていた。

 本当に母さんは、自分の年齢よりも、ものすごく若く見えるんだ。

 化粧だってそんなにしているところは見たことがない。


 ぼくは、別に“みょんちゃん魔法”だとは思っていないけど、母さんは、いつでも、だれに対しても、楽しく一生懸命に接している。だからみんなが、“みょんちゃん”って言ってくれるんだ。

 そして、みんなが元気になるから、その元気をちょっとずつ分けてもらっている母さんが、いつまでも若いんだと思っているんだ。

 そんな母さんが大好きだから、ぼくも“みょんちゃん”って呼んでいるんだ。……ちょっと恥ずかしいけど……




「みょんちゃんは、今日、何するの?」


「そうね、今日は、何をしようかな?けんちゃんは、昨日の続きで、田中さんのお家を作るんでしょ。ダイちゃんは、今日も学校よね。」


「そうだよ」


「あ、お弁当は、これね」

「いつも、ありがとうございます。みょんちゃん」


「いいえ、どういたしまして。今日は、誰と食べるのかな?」


「いつもの、仲間かな……、ところで、みょんちゃん、今日、何するの?」


「……やっぱり、今日も好きな事を、いっぱいやります。

……みんなも、好きなことを頑張ってね」



〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
おお、一気に10年の月日が経過したんですね。 それと、何で皆がみょんちゃん呼びなのかを納得しました〜。 (*ノ・ω・)ノ♫ きっと内面が若いのも、呼ばれ続けていることに繫がりがあるのかもですね〜。 …
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