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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第1章 未知のウィルス対応(虹ヶ丘小学校現在)【現在編】
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05 希望の友情 3(奇跡のバトン)

「んんーーーあー、お腹がすいたわー。……お母さん、カレーね!」

「そうよ。だけど、まず、顔でも洗ってきたら」

「はーい」


 その後、久しぶりで家族三人の夕食になった。


食べながらの話題は、やっぱりあのリモコンである。最初に切り出したのは、お父さんだ。


「よく、思いついたな。あのリモコン……」

「うん、しーちゃんの家には大きなテレビがあるんだ。

いつもあのテレビにゲームをつないで遊んでいるんだけど、なんとかあれにクラスのみんなを、つなげないかなと思ったんだ。

パソコンやゲーム同士ならつなぐことはできるけど、しーちゃんのクラスは三十人以上いるし、しかもみんなが同じものもっているとは限らないよね。

でも、テレビなら、今は絶対みんなもっているんだ。

だから、テレビをつなげてしまえば、いいんじゃないかって思ったんだ」


「さすが、ミーちゃんね。よく考えたわね」

「ありがとう、お母さん。でもね、リモコンは完成したの。でもね……」


「どうしたの?なにかうまくいかなかったの?お母さんには、わからないわ?」


「そうか、使い方かい?」

 お父さんが、真剣な表情で、質問した。


「そう、いつ使ってもらうか?どうやって使ってもらうか?それに、そばに大人がいると、きっと大変なことになってしまうと思うの……」


「そうね、私達は慣れているから、『またミーちゃんの発明ね』で済むけど、他の人はそうはいかないわね。できれば、内緒で使いたいわね……」


「…………」


 しばらく、みんなは考え込んでしまった。お父さんが、ふと席を立ち、茶の間から出て行ってしまった。



「お父さん、どうかしちゃったのかな」

「大丈夫よ、お父さんが無口になった時は、何かいい考えが浮かんだ時なの!」

 お母さんは、ミーちゃんに心配しないでと、ウィンクして見せた。


 しばらくして、お父さんは手に真新しいテレビのリモコンを持って戻ってきた。

「これ、何だと思う?」

「え?テレビのリモコンじゃないの?」


「実は、ここを押すと、LEDライトがつくんだ。もちろん、テレビのリモコンとしても使えるんだぞ」


「え?これどうしたの?」


「これは、おれがお得意さんに配ろうと思って、自作したテレビのリモコンに、LEDライトが内蔵された防災グッズなんだ。おれの発明だぞ!!」


「なーんだ、お父さんも、ミーちゃんと同じようなことやってんじゃないの」

と、お母さんが、嬉しそうに二人を交互に見比べて笑った。


「何を言っているんだよ、おれのは仕事だよ。ちゃんとした電器屋のし・ご・と!そんなことはどうでもいいの、わかったか?三成実(みなみ)。これをつくるんだ」

「うん!わかった」


「え?え?お母さんにもわかるように説明してよ!!」


「あ!そうね。………

私が作ったテレビのリモコンにLEDライトを組み込むの。

そして、お得意さんとしてしーちゃんのクラスメイトの家に、私が作ったテレビのリモコンを防災グッズとして配るの。

上杉電器商会としてね。

……………そうでしょう、お父さん!!」


「その通り。そうすれば、後はみんなで一斉に使うだけ」

「でも、その使い方は?」


「まあ…、それは大丈夫だよ。なんとかなるよ、きっとね。さあ、善は急げだ、お父さんもお母さんも手伝うから、早速リモコンの改造をしよう!」


「うん!お願い」


 リモコンの改造は、あっという間に終わった。三人で協力したので、その日のうちに完成し、出来あがったリモコンは、段ボールにつめて三成実の部屋に置かれた。


 明日、お父さんと二人でお得意さん回りも兼ねて配ってくる予定だ。

 今日は、もう夜中なのに、何だか明日が楽しみなのと、これでうまくいくのか不安な気持ちが入り混じって、なかなか眠れなかった。

 




 部屋は暗かったが、かすかに月明かりが入ってきた。

三成実は、眠れずに寝がえりをうっていると、月明かりより少し濃い光を感じた。部屋の隅に置いた段ボールからだ。

 明日配る予定のテレビのリモコンが入っている。

起き上がって、三成実は近づいた。そおっと、段ボールの蓋を開けてみた。

底の方から青い光、蛍光色に光る帯状の青い光が何本も見えた。

 

きれいな光だ。

光ってはいるが、まぶしくはないのだ。


だから三成実にもその帯がよく見える。思わず、手を伸ばす。

光の出ている方を触りたくなるのだ。一つずつリモコンをよけてみる。すると、底の方に鉛筆が一本光っていた。


手に取ってみる。


「変わった軸だ。これは、書き方鉛筆だ。昔、小学生の頃、使ったことがある」


持ち上げてみた瞬間、鉛筆からの光は、ある高さまで伸びたあとゆっくりカーブを描き、一本一本が段ボールの中のリモコンに吸い込まれていった。


 三成実は、鉛筆を手に持ちながら、きれいだという気持ちと不思議だという気持ちが、交互に沸き上がってくるのを感じた。


すると同時に不思議な声も聞こえてきた。



≪ミーちゃんよくがんばったね。後は、大丈夫だよ。ぐっすりお休みなさい≫



三成実は、そのまま深い眠りに包まれたのである。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆




 次の日、お父さんとお得意さん回りをしたとき、


「おや、三成実、昨夜リモコンに色付けをしたのかい?きれいにできたね。いい色じゃないか。蛍光ブルーは、お前の色だね」

と、お父さんに言われ段ボールをのぞいて初めて気がついた。


段ボールの中のリモコンが、昨夜の青い蛍光色の帯状の光の色と同じ色に染まっているのである。

あの光は、リモコンを塗装していたのだ。


「(まあ、お父さんに言っても信じないだろうから、黙っておこう……それにしても私の色って何だろう?)まあ、いいか。早く、このリモコン配ってしまおう!」



…………………………………………………



 その夜の月は、なんとなくいつもより輝いて見えた。

黄色が何倍にも増して、まるで光の帯が見えるような気がした。三成実は、いつになく月を眺める時間も長かったが、いつしか寝てしまったようだ。


でも、不思議な夢をみた。

しーちゃんが、三成実のつくったテレビのリモコンを使って、クラスのみんなと楽しくお話をしているのである。みんなが笑顔である。それだけで、三成実もうれしかった。



……………………………………………………



 次の日の朝、しーちゃんが笑顔で三成実の家にやってきた。そして、楽しい夢の話をしてくれた。


三成実と同じ夢の話を。とびきりの笑顔で……………………。


〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
またも光る鉛筆が出てきましたね。謎が開示されるのはまだ先のような感じですし、しばらくは楽しみをとっておきます。 一家全員でリモコンの組み立てをやっている様子を想像したら、少し笑ってしまいました。 細か…
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