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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第5章 つながり行く未来を求めて(虹ヶ丘小学校の発展)【過去】
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45 虹ヶ丘小学校はどこへ 4(絆の光)

 卒業式の次の日、上杉(うえすぎ)は、みんなを(にじ)()の所に呼び出した。


“虹の木”とは、虹ヶ丘小学校の校庭にある大きなどんぐりの木のことである。


校庭を作る時、ほとんどの木は切り倒した。しかし、隅にあった他の木よりも太めのこの木は、この虹ヶ丘小学校の象徴として残しておくことにしたのである。

 

昨日の卒業式は、あんなに晴れていたのに、今朝は明け方から小雨が降っている。

3月とはいえ、外はまだ雪が残っているので、こんな小雨でも雪はだいぶ()けるのが進む。

この時期の雨は、春を告げる暖かい贈り物に感じることがある。

 風もなく、気温もそんなに低くはないが、まだお昼前だというのに小雨のせいで薄暗く感じるので、そんなに浮かれた気持ちにもなれない。



「何だよ、(ばん)ちゃん。こんな天気に」

「うるさいよ、一太(いち)。お前は、黙ってなさい。……えー、みなさん、雨の中、お集りいただきましてありがとうございます」


「……あのう、みんな、ごめんなさい。私のせいなんです」

「何のことですか?校長先生」


「実は、私が、上杉君にお願いしたんです」

「校長先生、また、変なお願いしたんでしょ!」


「何を失敬な!」

 上杉は、少し茶化して、わざともったいぶって、話し始めた。

「今日集まってもらったのは、美代乃校長先生に、あるものを作って、みんなに渡してほしいと頼まれたからなんだ」


「何を作ったんですか?」

彩子が、興味をそそられたのか、目を丸くして質問した。


美代乃(みよの)先生は、ここにいる7人に、お礼がしたいと言い出したんだ」

「7人って、僕と万ちゃんと岡崎(おかざき)君と一太と北野(きたの)多田野(ただの)、それに彩子(あやこ)ちゃんかい?」

「そう」


「どうして?お礼って、何だい?」

「それは私が説明するわ。

この虹ヶ丘小学校を作るって言った時、最初私は、反対だったの。

でもね、あの人達に会って話をするうちに、夢のような学校もいいかなって思ったの。

そして、その話にみんなは、黙って協力してくれたわ。

絶対に無理なことがたくさんあるってわかっていたはずなのに……。

だから、この気持ちをいつまでも繋いで持ち続けれるようなものをお願いしたの」


「…………そこで、考えたのさ。

この6年間の技術の粋を集めて完成させたのが、この“三角軸(さんかくじく)の鉛筆”なのさ。

秘密はいろいろあるけど、まずはこれを1本ずつ空に向けて持って、自分の名前を叫んでもらうよ」



岡崎が叫ぶと鉛筆の先からは赤い光が、

多田野が叫ぶと橙の光が、

一太が叫ぶと黄色い光が、

北野が叫ぶと緑の光が、

上杉が叫ぶと青い光が、

彩子が叫ぶと藍色の光が、

桜山が叫ぶと紫の光が、


飛び出した。いずれもきれいな蛍光色だった。



「わーあ!すごい、きれいな光ね」


「みんな、この光を一点に集中させて!」


 鉛筆の角度を真ん中に寄せると、7人の中心に光の玉ができてきた。

そして、その光の玉の中に美代乃の姿が浮かびあがり、7人に向けてメッセージを語りかけてきた。

 

虹ヶ丘小学校が軌道にのっている現在の喜びと、それまでの感謝の気持ちがあふれるように光の中から7人に降りそそいだ。


「……あー、……んーん……」


 みんな、返事ともなんと言われない声を出して、美代乃のメッセージに答えようとしていたが、あふれる涙で、言葉にはならなかった。


 しばらくして、上杉は、静かに付け加えた。


「この鉛筆には、まだたくさんの秘密がある。

きっと、僕達が壁にぶつかった時、みょんちゃんが助けてくれる。

いや、僕達のやろうとしていること信じてくれる。

だから、この鉛筆は、大切にしてほしい、これから先ずうっーーとな」


 いつしか、鉛筆の光は、雲をよけて、青空を広げていた。そして、まん丸い虹を“虹の木”の真上にもたらしていたのだった。





〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
なるほど〜。ここであの不思議な蛍光鉛筆が出来るんですね〜。 (*´ω`*) 三月の小雨だったのが、晴れるまでには至らなかったですけど、それぞれの所有者の心にだけは晴れが広がった……そんな風に読み取り…
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