表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第4章 信頼の軌跡をたずねて(虹ヶ丘小学校の成り立ち)【過去】
40/91

39 虹ヶ丘小学校のはじまり 8(あこがれて)

 虹ヶ丘にも収穫の季節が来た。


 畑には、いろいろな作物が実り、大人から子どもまで作業に駆り出されていた。

 特に、ジャガイモは虹ヶ丘の代表的な作物になっていて、多くの場所で芋ほりがされていた。

 開拓に入ったばかりの頃は、ここが農耕に適した場所かもわからず、手当たり次第に様々な野菜の品種を植えていた。

 ジャガイモも、どの品種がこの土地に合うかわからず、最初の数年は品種選びの年だった。いくつか成長のいい品種を見つけてからは、村長の発案で違う品種同士の交配をして、品種改良にも取り組んだ。

 

 おかげで今では、どこにも負けないおいしいジャガイモが採れるようになっていた。

 




 北野(きたの)は、休憩を兼ね、草むらに寝っ転がって空を見ていた。


「(………どこまでも透き通る……青い空はいいなあ。

 ………どこまでも行けそうな気がする)……僕は、何でもできそうな気になる……」


 先日、教員試験を受けて来た北野は、その時のことを思い出していてた。


「(別に、先生になりたい訳じゃなかったんだ……ただ、僕は、みょんちゃんに会って、不思議な気持ちになったんだ……)あの時の空も青かったなあ……」


 北野が、開拓でこの虹ヶ丘に来た当時は、まだ子どもだった。その頃の北野は、美代乃をやっぱりみょんちゃんと呼んで慕っていたのだ。


 みょんちゃんと一緒にいると、何でもできると思っていた。一緒に遊んでいる時も楽しかったし、歌を歌っている時も楽しかった。何かを教わっている時も楽しかった。

 どうしてかは、わからなかったが、村のみんなも、楽しそうにしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 北野は、当時をよく振り返ることがあった。


≪そりゃ、上手くいかないことも、いっぱいあったんだ。

 友達の一太の方が、相撲は強かった。

 でも、みょんちゃんは“だいじょうぶ”って言ったんだ。

 等が、めんこで勝った時も、みょんちゃんは笑って見ててくれたんだ。

 僕が、友達に勉強を教えて役に立ったら、みょんちゃんは褒めてくれた。

 逆に僕が困って、みんなに助けてもらったら、“よくお願いしたね”って、僕が褒められちゃった。

 みょんちゃんは、いつも僕のことを………いや、みんなのことを、見てくれていたんだ……だから、みょんちゃんと一緒にいると楽しかったんじゃないかなあ………≫




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



≪そんな、みょんちゃんが、先生になる………いや学校を作るっていうから助けたいだけなんだ…………≫




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「…………“そら”!…………“そら”ってば!………

 また、ボーっとして……………………

 試験に受かるかどうか、心配してるのか?」


 一太(いちた)が、北野の傍に寄って来て、顔を覗き込んで声を掛けた。


「あ、一太か。…………誰が、心配するかよ。

 あんな試験。………………大丈夫に決まってるさ。お前こそ、大丈夫か?」


「俺だって、大丈夫さ……………あははははははは」

 2人は、ジャガイモ畑で寝転んでふざけ合った。


「そっか、お前、また、美代乃先生のこと考えてたろ?」

「……何?言ってんだよ!」


 北野は、少しムキになって否定したが、中村は、かまわず続けた。

「だめだぞお前、美代乃先生は、桜山先輩の彼女なんだからな………」


「うるさい!そんなのは、みんな知ってるよ!」


 2人は、起き上がり、顔を見合わせて、軽く笑った。


「それにしても、俺は、みょんちゃんのような先生になりたいなあ……」


「そうだなあ、僕もあんな先生になれたらいいなあ。あの時は、傍にいるだけで、何でもできそうな気がしたんだ」


「俺は、今でも、何でもできそうな気がするぞ!」


「あ!ずるいぞ、僕だって!」


 もうすぐ教員試験の発表である。虹ヶ丘小学校の申請が通るかどうかも決まる時期だ。そして、それに合わせて、もう一つ新たな旅立ちを待つものが……。



〔つづく〕


 ありがとうございます。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
みよのさんは、皆の憧れだったんですね。 優しく見守る存在であり、導いて指し示してくれる存在でもあったみよのさんは、間違いなく虹が丘のアイドルだったと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ