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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第1章 未知のウィルス対応(虹ヶ丘小学校現在)【現在編】
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04 希望の友情 2(優しさの発明)

「あら、お帰り……」

 そう声をかけてくれた母親には目もくれず、三成実は2階の自分の部屋に飛び込んで行った。


「本当にもう、また何かに夢中になったのね」

 母親は、少しあきれたような顔で、でもニコっとしながら、父親の方を見た。

「いいから、好きにさせておきなさい」

 父親もまた、少しうれしそうな顔をしていた。………




・・・・・・・・上杉電器商会の長女、上杉三成実は、後に重大な冒険をすることになるが、まだ何も知らない・・・・・・・




ただ、とにかく直球勝負の女の子で、何事にも一生懸命に取り組む。

思ったことはすぐ実行に移してしまう行動力のある子である。

そして、人一倍優しくて思いやりがある。

きっとこの時も、誰かのために、何かを思いついて、ただ突っ走っていたのである。



 三成実は、すぐに2階から降りてきた。

「お父さん、うちにテレビのリモコン余ってなかったっけ?」

と、妙なことを尋ねた。


「え?リモコン?…そりゃあ、うちは電器屋だから、古いので良ければあるけど…」

と、戸棚から段ボールを取り出した。


ちらっと、中をのぞいた三成実は、

「お父さん、これ全部ちょうだい!」

と、即決した。


「あ…ああ、いいよ…」

 父親の返事を全部聞く前に、三成実はもう段ボールを抱えて、嬉しそうにまた自分の部屋に戻って行った。


「まったく、何をするんだか」

 相変わらず、父親は、嬉しそうに娘の背中を見ていた。



★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ・ ・



「ねえ、お父さん。大丈夫かしら?」

「そうだな、もう3日か?食事はしているのかい?」

「部屋の前に置いてあるおにぎりは、無くなってるのよね。

時々、二階のトイレを使っているのはわかるの。

でも、ずうっと物音はするから、きっと寝てないのよ、あの娘ったら」

「まあ、若いから、二日や三日寝なくても、死にやしないけど、それでもなあ」



……………………



 本当に思ったら一直線の行動なんだから、無茶をします。


困ったものです。


でもそろそろ完成のようですね。



……………………



 心配している2人のところに、階段を転げ落ちる勢いで三成実が駆け下りてきた。

そして、手にテレビのリモコンを持ち


「できた!できた!これで、解決だ!しーちゃんの望みを叶えるぞ!」

と、はしゃぎまわって、茶の間にいる両親をまた心配させてしまった。


「ミーちゃん、ミーちゃん。ちょっと、落ち着いてくれるかな」

「なあ、父さん達にもわかるように説明してくれんかな?」


 ここで、我に返った三成実は、茶の間のソファーに腰を下ろし、深呼吸をしてから説明を始めた。


「私はね、しーちゃんがクラスのみんなに会えなくて、寂しいって言うから、会えるようにしてあげたいと思ったの。

それで、このリモコンを改造したの。

このリモコンを使うとね、テレビの前にいる人同士が、つながってテレビに映るの。

しかもおしゃべりができるの。

トランシーバーのテレビ版ね。

これはね、このテレビリモコンがあれば、どんなテレビでもできちゃうんだからすごいでしょ」

と、一気に話した。


父親は、そのリモコンを手に取って

「ほー、すごいな。

パソコンでは似たようなことができるが、その機能をリモコンに埋め込み、しかもテレビの電波を利用して、同時中継を行うシステムをたった3日で作り上げてしまうなんてな。」

と、感心してしまった。


「まあ、お母さんにはそんな難しいことはわかんないけど、きっとすごいことなんでしょうね。

でーも、それがわかるお父さんも、すごいわよ。

……あらら、ミーちゃんったら、疲れたのね。

ぜーんぶ、お話ししたら、もう寝ちゃってる。

今日は、ここでおやすみなさい。

よく、がんばりました」


 ソファーの上で毛布にくるまって眠っている三成実の幸せそうな顔を見て、2人はまた微笑だ。




★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ★ ・ ・ ・






「それにしても、ミーちゃんは機械に詳しいわね。

小さい頃から、何でも分解して遊んでいたけど、他の子と違うのは、それをまた組み立ててしまうのね。

しかも、組み立てると、前よりもちょっとだけ違うものが出来あがるのよね。

目覚まし時計を分解して組立てたら、ベルだけじゃなくおしゃべりするようになったり、掃除機を分解して組立てたら、ごみを吸うだけじゃなく、分別までするようになったりしたのにはおどろいたわ……」

と、娘の寝顔を見ながら、母親が昔を思い出していた。


「まあ、何にでも興味をもって、とことん追求する気持ちを大切にした、お母さんのお陰だよ」

「何いってんですか。好きなことを好きなようにさせてあげた、お父さんのことをよく知っているから、ミーちゃんだって、NASAの研究室に誘われたのに、断ってお父さんの電器屋さんに就職したんじゃない。

大学の教授が、もったいないっていっていたわよ。」


「おれは、好きなようにしなさいって言ったんだぞ。…………ところで、まる一日も眠りっぱなしで大丈夫なのか?」

 

茶の間で三成実の寝顔を見ながら、それでも顔が緩んでいる父親に、夕飯の支度をしながら母親が、これまた笑顔で返していた。


「大丈夫よ、ミーちゃんの大好物のカレーができたから、すぐ目が覚めるわ。この香りを逃すはずがないもの」

と言って、母親が、カレーの鍋の蓋をあけかきまぜると、すぐにソファーで眠っていた三成実の体がムズムズと動き出した。


「…ん、…あ、ああ、んんんーん…………」

 大きな伸びをして、ソファーから起き上った三成実は、すっきりした顔をしていた。




〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
カレーの香りは最強ですよねぇ〜。 笑顔が絶えない家族の光景にほっこりします。 にしても、分別までやってくれる掃除機は、マジで欲しいですw
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