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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第3章 あの時の想いに再会(現在の虹ヶ丘)【現在からの意思】
26/91

25 どこまでも吹き抜けて 1(仲間の支え)

 新学期になった。志津奈や太郎は、6年生になった。

 この辺りは、5月頃になってようやく春らしくなる。


 太郎の斜め後ろには、築山のある公園があり、一面にタンポポが咲いている。

 今日は、天気もいいので、黄色い花が満開になって見ごろだ。青い空がよく映えていた。


 この辺は、商店街だけれど、小さい店が多いから、静かで穏やかな街だ。

 太郎は、今、志津奈の向かいにある上杉電器商会の前に立っている。


「ごめんくださーい。しーちゃん,いますか?」


「はいはい、いらっしゃいだのー……」


「あ、みよおばあちゃん。こんにちは。しーちゃんは、来てますか?」


「大丈夫だのー……。今、ミーちゃんとおやつの準備をしてるだのー……」


「じゃあ、おじゃましまーす。みよおばあちゃん、今日もよろしくお願いいたしますね」


「はいはい、こちらこそ、よろしくなのねー……」

 太郎は、最近毎日のようにここ上杉電器に通っている。

と、言っても、電器屋さんに用事があるわけではない。


 ここ、上杉電器商会は、上杉三成実の家で、その幼なじみが志津奈なのだ。そして、最近この上杉電器商会には、新しいアルバイトの人が入った。

 お昼から夕方にかけて、お店の留守番をしている。みよおばあちゃんだ。


 ちょうどこの時間帯は、お客さんもあんまり来ないので、毎日太郎や志津奈が遊びに、…いや勉強に行って、そのついでに、おやつをごちそうになったり、みよおばあちゃんとお話をしたりして、楽しく過ごしているらしい。


「さあ、できたわよ。……あら、太郎君いらっしゃい」

「やったー、ミー姉ちゃん、今日のおやつは、なーに?」


「もー、太郎君ったら、お行儀が悪いわよ」


「はいはい、しーちゃんったら、厳しいんだからなー。でも、すっごいいいにおいがするんだ。ミー姉ちゃん、チョコレートのケーキか何か作ったの?」


「聞いておどろきな!なんと、ホット団子のチョコレート包み仕立てだ」


「また、発想がすごいよね……(でも、最近のミー姉ちゃんのおやつは、おいしいんだ。見た目やネーミングは、????なんだけど、なんだかほんわかするし、もう一回食べたいなあと思っちゃうんだな……)」


「……おいしいよ、温かい団子とチョコレートがよく合うよ」


「な!そうだろう」


「ミーちゃんったら、散々みよおばあちゃんに相談してたくせに」


「いいじゃない、そんな細かい事気にしないでよ」


「(あんなに料理が苦手だったミー姉ちゃんが、こんなにおいしいおやつを作れるようになるなんて………)」

 太郎は、少し疑っていた。

「ねえ、ミー姉ちゃん。どのくらいみよおばあちゃんに手伝ってもらってるの?」


「え?どのくらいって?……うん、そうだな、手伝ってもらってるっていうか……」


「あ!やっぱり、代わりに作ってもらってるんだ!」

 太郎は、身を乗り出した。


「ちがうわよ!!みよおばあちゃんは、ただ私の話を聞いてくれるだけなの?」


「話を聞くだけ?」


「そう。こんなおやつが食べたいとか、こんなふうに作ったらおいしいかもとか、ただ話すだけ」


「え?それで、おやつ作りが上手になったの?」

 不思議そうな表情をした太郎だった。


「それは、一緒にそばにいた私が保証するわ」

いつも一緒におやつ作りをしていた志津奈が、自信をもって言った。


「そうよね、みよおばあちゃん」

 志津奈が、真面目な顔でみよおばあちゃんに言った。


「あたしは、なんものー……しとらんのー……。おいしそうな話をいっぱいしてくれるんで、楽しくってのー……」


「なんか、みよおばあちゃんは、私の話をいつもニコニコしながら聞いてくれるんだ。だから話しているうちに、いろんなアイディアも浮かんで来るんだよね」

 三成実は、とても嬉しそうだった。


「(そっかー、だからヘンテコリンなおやつもできるのか。

 アイディアの出し過ぎかな?

 みよおばあちゃんが、いろいろ教えているのかと思ったんだけど、話を聞くだけとは……。

 でも、なんとなくわかるかな。

 今日の「チョコレートだんご」だって、おしそうだって真剣に聞いてくれる人がいなかったら、作ろうという気持ちにならないかもしれないもんな。

 作ろうという気持ちにならなければ、工夫も努力もしないから、上手にはならないしな。

 そういう意味じゃ、みよおばあちゃんがいたから、ミー姉ちゃんの料理の腕があがったんだな…………)」

 太郎は、三成実の笑顔を見ながらこんなことを考えていた。



〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
チョコレートだんごの話は、本当にその通りですよね。 真剣に聞いてくれるだけで、もうちょっと良くしたいと思って頑張るのには強く共感しました!
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