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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第3章 あの時の想いに再会(現在の虹ヶ丘)【現在からの意思】
24/91

23 新しい風を感じて 2(思いやる推理)

「……冷たかったでしょー……」

 志津奈は、おばあちゃんの手袋をつけていない方の手を両手で握った。


「みよおばあちゃん、これあたたかいお茶です。少し持っていると、手も温まりますよ」

 そっと湯呑を渡して、暖をとることを勧める志津奈は、優しく微笑みかけていた。


 おばあちゃんは、身長170センチぐらい。腰は真っすぐの延び、髪の毛はきれいに結っていた。


「(目がぱっちりしていて、なんてかわいいんだろう。上下のジーンズ姿なんて、おばあちゃんにしては、おしゃれだなあ。でも、首や手の感じじゃ、けっこう歳はとっている感じがんだけど……)」

 太郎は、そんなことを考えながら、おばあちゃんと志津奈の会話を聞いていた。


 そして、最近太郎は思うことがある。特に、あの時間旅行の後、感じることが多くなったような気がするのだ。

「(しーちゃんって、優しいよなー。初めて会ったおばあちゃんにも、こんなに親切にして………、誰かもわからいのに………)」


「どの辺で、手袋を無くしたか、わかりますか?」

 志津奈が、おばあちゃんに質問をしている声で、何となくボンヤリ考えていた太郎は(はっ!)と、我に返った。


「(そうか、おばあちゃんの手袋を探すんだ……)」

 太郎は、何となく他人事のような気でいたが………。


「わからないんだのー。……でも、これを買ったお店に入る時はのー……、あったようなのー……、気がするのー……」

と、買い物カゴを見せた。


 そこには、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎが入っていた。

「あと、お肉屋さんに行ってのー……、買い物をするだのー……」


「あー、今晩は、カレーライスなんですね」

「おー、よくわかったのー……。その通りだのー……」


「しーちゃんすごい!」

 太郎は、拍手していた。



…………………………


「太郎君、今、携帯持ってる?」

 志津奈が、少し考えてから迷わずに何かを決断したように尋ねた。


「うん、お母さんに、持たされてるよ」

「これ、直通で、お母さんにかかるわよね、ちょっと貸してね」


『もしもし…………。はい。お願いします。…… あ!……ありがとうございます。それじゃあ、今、行きますから』

 志津奈は、八百屋である太郎の母親と何やら話をした後、笑顔になってこちらに向き直った。


「……みよおばあちゃん、手袋があったわよ!」


「おー、なんとのー……、見つかったのかのー……」


「しーちゃんすごい!!」

 太郎は、また、手放しで喜んで拍手していた。


「太郎君、何言ってんの、それより太郎君、早くお母さんの所へ行って、手袋もらって来て」

 志津奈は、澄ました顔で、次の指示を太郎に告げた。


「へ?」

「いいから、早く!」

 太郎は、要領を飲みこめないまま、ただ志津奈の言われた通りに動くしかなかった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 太郎は、息を切らして十数分後、戻って来た。

「………は、はい、これ!」

 手には、片方の手袋が握られていた。


 志津奈が、受け取って、みよおばちゃんに尋ねた。

「この手袋で、間違いないですか?」

「あーこれこれだのー……。間違いないだのー……」

「やっぱり、しーちゃんはすごいよー」

「太郎もそう思うだろう……」

 三成実も一緒に感心した。


「なあ、しーちゃん、どうしてわっかのか、教えてよ。たねあかしをしてくれよー」

「んー。ミーちゃんに言われちゃあ、仕方ないわね。

 ……秘密は、カゴの中よ。

 中身を見たら、八百屋での買い物だったのよ。

 しかも新鮮で、おいしそうなものばかりだったの。

 みよおばあちゃんの足で行けるのは、この近所だから……。

 だからあれを売ってる八百屋は、太郎君の家しかないのよ。

 きっとお金を払うとき、右手だけ手袋を脱いだのね。

 その時、手袋をポケットに入れたつもりで落としたんだわ。

 親切な太郎君のお母さんは、手袋を拾ってしまっておいてくれたはずなのよ……きっとね」


「そーか!それで、電話して確かめたんだね!!」


「あんたのー……、すごいのー……。まるで、探偵さんみたいじゃのー……」


「いやーよ、みよおばあちゃんたらー。あはははー…………」


 1つの事件をきっかけに、楽しい笑いに包まれた上杉電器商会のロビーだった。これが、彼らの初めての出会いだと……思っていたのだった。


〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
この段階では双方気付いていないんですね。 八百屋で見つかって良かった。 寒い季節のカレーもいいですよね〜。夏に汗かきながら食べるのも好き。 みよのさんの作るカレーは、恐らく絶品なんだろうと思いますよ。
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