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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第3章 あの時の想いに再会(現在の虹ヶ丘)【現在からの意思】
23/91

22 新しい風を感じて 1(出会い)

 虹ヶ丘(にじがおか)小学校には、あれから4か月の時間が流れた。

 5年3組の岡崎志津奈(おかざきしずな)中村太郎(なかむらたろう)は、冬休みを向かえて、宿題に追われる毎日を過ごしていた。


 宿題といっても、虹ヶ丘小学校は、学校が決めた課題は一切無い。すべて自由研究として、各個人が自分の課題を設定して進めるものだけなのである。


 これは、虹ヶ丘小学校の設立当時からの方針だった。



「……太郎君、ここ間違ってるよ……直してよね、まったくもー」

「あ、ごめん、ごめん……しーちゃん、よく見つけるよね~」

 宿題が無いとはいえ、グループで集まってわいわいやりながら自由研究をするのは、当たり前になっている。

 そして、これはもう一緒に集まって遊ぶよりも高学年では、楽しい一時になっているのも事実だ。


「しっかりしてよね。今度こそ、ちゃんと自由研究まとめて、みんなに発表するんだからね」

「わかってるよ」

 志津奈達にとって、夏休みの自由研究は完成したけれどあまりに極秘の部分が多くて、発表できたのはほんの一部分でしかなかった。

 そこで、今回の冬休みは、みんなに発表できる自由研究にしようと、リベンジを誓ってまた一から始めたのである。



「大丈夫なのかい、君達?

 えーっと、ところで、どうして君達は、私の家で、勉強してるかな?」

「あー、気にしなくていいです。ミー姉ちゃん」

「そうそう、これは、勉強ではなくて、自由研究をまとめているだけだからねー」

 夏休みと同じように、相変わらず集まる場所は、志津奈の家の向かいの上杉電器商会だった。


「んんー、そういうことじゃなくて、ここは、上杉電器商会という所で、塾ではないのですよ。

 そういうことは、中村太郎君の家か、岡崎志津奈さんの家でやればいいんじゃないでしょうか?」

 お盆にジュースとお菓子を載せてもってきた三成実は、ちょっといじわる風なセリフを言ったが、目は笑っていた。

 上杉三成実(うえすぎみなみ)は、志津奈の幼馴染で、年齢は離れていたが、姉妹のようにしていた。


 志津奈は、三成実のセリフに合わせるように、おどけて

「だあって、うちは病院で患者さんが来るし、太郎君の家も八百屋さんで忙しいのよ。

 それに、ここならミーちゃんがいるから、おやつも出るし、とっても嬉しいの!」


「まったくもー、はい、そのおやつよ、あははは………」

と、お互いに大笑になった。


 年は十歳以上離れているが、とても仲良しだ。


 そして、太郎と志津奈、それに三成実は、夏休みに不思議な時間旅行をした仲間だった。

 あの時は、太郎と志津奈の担任である北野先生もいた。


 今は、この3人で楽しく冬休みの自由研究作りをしている。

 夏休みの時間旅行も、自由研究が始まりだった。

 


 上杉電器商会は、入り口が広くて外がよく見える。ロビーには大きなテーブルもあるから、自由研究の模造紙を広げるには、もってこいだ。

 すべて志津奈のアイディアである。

 三成実は、店番をしながら、子ども達の自由研究を時々覗いてくれる。

と言っても、見てるだけでほとんど何にもしない。

 わからないことを聞けば答えてくれるが、それも調べ方を教えてくれることが多い。


 それでも、子ども達には、ありがたい。

 放っておかれることが、ありがたいのだ。

 場所を貸してくれることと、見てくれているという安心感で、満足なのである。


 三成実が、不意に立ちあがり外の方を凝視した。

「どうしたの?」

「んー、何か探しているみたい」

と、言って玄関の外へ行ってしまった。


 太郎が、外を注意深く見たが、何も見つけられなかった。


「だれか、いるわ」

 志津奈が、三成実に教えた。

「ミーちゃんは、気になるのよね、放っておけないの……」

 すぐに、三成実は、一人のおばあちゃんを連れて、店に戻って来た。


「どうしたの?」

 志津奈が、心配そうに聞くと、

「手袋を無くしたんだって、このおばあちゃん。それで、自分が歩いたところをずーっと探して歩いていたらしいの」


「そっか、それで右手だけ手袋をつけてないのね」

「え?」

 太郎は、しーちゃんの言葉を聞いて初めて気が付いた。

 おばちゃんの左手は手袋をつけているのに、右手は何もつけていなかった。


「(冬だから、外はとても寒い。昼間とはいえ、手袋なしではとてもつらいだろうに。

 だから、ミー姉ちゃんはすぐに店につれてきたんだ……)」

 言われて初めて、太郎は気が付いた。


「手が冷たかったでしょう?おばちゃん。あ、お名前、何て言うんですか?」


「……はい?……すみません。

 わし??……みよ・のー…??……いいますのー……??…」


〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
夏休みの課題の方針は、新聞部とリンクさせてるんですね。 両方読んでいると、何だか繋がりを感じられて嬉しいです〜。 冷え症だと手袋無しはつらいでしょうし、おばあちゃんも親切は嬉しかったように思いますよ。…
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