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みょんちゃんが奏でる虹色のメロディー ~皆で紡ぐ、楽しい学校と素敵な町並み~  作者: 根 九里尾
第2章 虹ヶ丘へのタイムスリップ(虹ヶ丘小学校はじまりの想い)【現在・過去の連結】
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14 未来への風 5(はじまりの出会い)

「すみませーん。ごめんください」

「はーい、どちら様ですか?」

 女の人がすぐに現れた。見知らぬ来客を見ても、笑顔で応対をするので、北野先生達は警戒心をとらずに済んだ。


「あら、小さいお子さんがいるのね、うちで休んで行かれませんか?」

 彼女は、小さい子どもを見ると、理由も聞かないで家に上げようとした。


 あわてて北野先生は、説明をしなければならなくなった。

「あのう…、実は、道に迷ってしまいまして……」

「それは、ますます大変ですわ、…」

 彼女は、奥に向かって

「あなた…いいでしょ、あがってもらって…」

と大きな声で言ったと思ったら、もう子ども達の手を引いて家の中へ引っ張って行ってしまった。

 

すると、奥から体格のいい男の人が、あわてて出て来た。

「いやあ、すみませんね、家内はせっかちなもので。

でも、悪気はありませんから、遠慮なく休んで行ってください。

この辺で道に迷ったのなら、しばらくはうちに泊まるといい。

2,3日たつと荷物を運ぶ馬車が来るから、それで目的地へ向かえばいいと思う。

自分のうちだと思って、気楽に過ごしてください」

 体格に似合わず、優しい声で、みんなを労わった。


「それじゃ、遠慮なくお世話になります」

 北野先生は、お礼を言って奥に案内されたが、そんなに広い部屋ではなかった。

中央に木製のちゃぶ台が一つあった。

現代のようなソファーや食器棚はなかった。

かろうじて、部屋の真ん中に照明用の電球がぶら下がっていたので、電気が通っていることはわかった。

もちろん、テレビやラジオは無かった。


北野先生は、どうしても気になることがあり、もう一度村長さんに聞いてみた。

「あのう…ここは、何ていう町なんでしょうか?」

「町の名前かい?

…うん…まあ、まだ村ってとこなんだけどなあ。

まあ聞きなさい。

私らは、ここに開拓に入ったんだ。

今から、5、6年前かな。

ようやく軌道にのってきたので、人も増えてきた。

作物もたくさん採れるようになってきたんだ。

これでも、村も少しは大きくなったんだよ。


最初に、ここに来た時、雨が降っていてな。

その雨があがった時、とてもきれいな虹が出たんだ。

そして、だれともなく、このあたりを虹ヶ丘と呼ぶようになったんだ。


空が透けるような水色だったのを今でも覚えているよ」


「そうですか」


 北野先生は、ここが自分達の住んでいた虹ヶ丘の町で間違いないと確信した。

しかし、ものすごい昔の虹ヶ丘だということもわかった。


「(なぜ、こんな昔の虹ヶ丘に、ぼく達は来てしまったんだろう)………」

 北野先生が、ぼんやり考え事をしていると

「だから言ったろ!先生。やっぱり、あの木は“虹の木”だって」

 三成実が少し自慢げに言ってきた。

しかし、北野先生は、相手にはしなかった。それよりも、もっと情報を集めなければならないと考えていた。


 

 しばらくして、1人の女の子が帰ってきた。


「ただいまー。あ、お客さん?」

「ああ、旅の方達で、道に迷ったんだ。次の荷物が届く馬車が来るまで、うちに居てもらうつもりだよ」


「私、娘の“美代乃(みよの)”です。よろしくお願いします」


 背が高く、長い髪をしっかり結んでポニーテールを作っていた。

 元気で活発な女の子は、ジーンズ生地のオーバーオールをはき、チェック柄のシャツを腕まくりして着ていた。

 大きな麦わら帽子と手のカゴは、今までの仕事を物語っていた。

 たぶん、元気で活発に一生懸命な仕事ぶりがうかがえる17歳か18歳だった。



「あのう、すみません。道に迷ってしまって、お世話になります」

「気にしないでください。晩ご飯は、大勢で食べた方がおいしいわよね、お母さん。

ジャガイモをたくさん持ってきたから、天ぷらにしましょうよ。

今、掘ってきたのよ。いっぱい食べてね」


美代乃は、突然の訪問者に、旧知の友でも尋ねたかのように何の屈託もなく接した。

太郎も志津奈も、すぐに打ち解け、まるでお姉さんのように話し出していた。


「私、ジャガイモ大好き」

「ぼくだって、毎年ジャガイモ祭りに行くんだよ」


 現代の虹ヶ丘の町では、恒例になっているジャガイモ祭りがある。

しかし、村長さんが

「ほう、君たちの町にもジャガイモ祭りがあるのかい?

この虹ヶ丘でも毎年やっていてね。

毎年っていっても、今年で三回目だけどね。

ぜひ、この祭りはずっと続けていきたいと思っているんだ」


 みんなが、本当にジャガイモを好きなんだと思える顔をしていた。


元気者の三成実が、真っ先に美代乃にしがみついた。

「お願いがあります!私も、いも掘りがしたいです!お願いします!」

右手を挙げながら、まっすぐ付け加えた。

「みんなもしたいよね!!ね!ね!」

 太郎も志津奈も

「お願いします」


流れに巻き込まれてはいたが、笑顔でお願いしていた。そして、返事はすぐに帰ってきた。

「よし、わかったよ!明日、みんなで、ジャガイモを掘ろう!」

「わーい」

「じゃー、晩ご飯を作るのも手伝ってくれるかな?」

「はい!がんばります」


 自然に、みんなが楽しそうな雰囲気になり、仲良くお手伝を始めた。

美代乃は、子ども達をうまく元気づけつつも、大切なことを教え、しっかりお手伝いをさせていた。まるで小学校の先生のようだった。


「(ひょっとして、僕より子ども相手が上手かもしれない……)」

 美代乃の様子を見ながら、北野先生は、そんなことを考えていた。



〔つづく〕


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― 新着の感想 ―
親切な人が多いのですね〜。 ジャガイモ掘りはしたこと無いですけど、サツマイモ掘りは10回はやりましたよ。 自分自身で掘ったやつは、何となく5割増で美味しく感じますw
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