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封印師の憂鬱  作者: キンチョウス
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目の前に椅子に座り込む初老の男性が青ざめた唇を震わせながら声にならない声をあげていた。

今自分の目の前で起きた事象に対して理解が追い付いていないのだろう。


「あの、大丈夫ですか?」


「い、今のは一体……。」


その初老の男性は僕の声にハッと顔を僕の方に向けた。今起きたことについて必死に理解しようとして、声を振り絞った様だった。


「今のが呪いの成れの果てです。」


初老の男性は僕が言ったことを必死に考えているのだろう。小さい目を何度も瞬かせさせている。



今回、僕の封印師としての依頼者は飯塚という男だった。

海外の小さい人形を以前結婚していた女性から旅行のお土産として貰った後に暫くしてから体調が悪くなったという。



当初は本人にも何が原因なのか分からず、病院を回ったそうだ。

どの病院でも医者が首を傾げながら、「異常は見つかりません」としか言われなかったらしい。



結局、体調不良の原因は見つからないまま、途方に暮れていたときに飯塚の体調を心配した友人から陰陽師総合協会を紹介され、怪しいと思いながらそれでもそこにしか縋るものがなく連絡を取ることにした。



僕が協会から連絡が来て彼のもとを訪ねたときには彼の頬は痩け、動くことも儘ならない様だった。



マンションの扉を少し開けて隙間から覗き込んだ彼に僕が協会から来たことを伝えると、胡乱な目で僕を見て何も言わずにチェーンを外して僕を部屋に招き入れたのだった。



職業柄なのか僕には彼の部屋に入った瞬間に淀んだ空気がこの空間に充満していることがすぐに理解できた。



人を不快にするような匂いとそこだけ時が遅れているような感覚だ。

電気をつけることも億劫なのだろうか、部屋は昼間でも薄暗がりでカーテンは開いている状態だった。



部屋には夏にも関わらずエアコンも付いておらず、窓も開いていないにも関わらず少し肌寒く感じた。


「それで一体ここで私は何をすればいいんだい。」


彼はソファーに座り込み、疲れきった顔を僕に向けながら小さな声でそれでもはっきりと僕に話しかける。


「ああ、貴方が何もすることはありませんよ。貴方が不調の原因はもう見つかっていますから。なので見ているだけで大丈夫です。」


「何を馬鹿なことを。君は今初めてここに来てばかりだろう?」


彼の言うことは何も知らない一般人から見れば、僕も確かにそう思うだろうなと思う。

それでもこの手のことについては僕も専門家で、小さい頃から携わってきた者としては些細なことだった。



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