表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集/feat.AI  作者: トミタミト/feat.AI
2/24

従いたくない男

男は部屋で目を覚ました。

ベッドから起き上がり、背伸びする。


すると、扉がノックされた。

「おはようございます」

そう言って入ってきたのはメイドだった。

「ああ、おはよう。今日もよろしく頼むよ」

男はそう言いつつ、服を脱いでいく。

そして全裸になったところで、部屋の隅にある鏡台の前に


「行くわけないだろ! 誰だお前は、お前なんぞ知らん!」

男は急いで服に着替え、部屋から外へ飛び出していった。

「俺は絶対にAIの言う事なんて聞かないぞ」

男はため息を付きながら、街を歩く。


すると、街の人たちに話しかけられた。

「こんにちは。あなたはお仕事を探しているのですか?」

「え? あ、はい……」

「それなら私のところへ来ませんか?」

「あなたのところに?」

「ええ、私のお店で働くといいですよ」

そう言われて男はその女性について行った。

そこは酒場のような場所だった。

「ここのお店で働かせてください」

男がそういうと女性は笑顔を浮かべた。

「あら嬉しいわ。ちょうど人手が足りなかったのよね。じゃあ早速働いて


男は渡されたお盆を目の前で投げ捨てた。

「こんな怪しいところで働くわけないだろ! 失礼します!」

男は酒場のような場所から一目散に逃げていった。

「全く油断も隙も無い、AIの手から逃れられる方法は無いものか」

きょろきょろと辺りを見回す。

そこで見つけたのは、


一軒の花屋さん。

「おお、これは花畑じゃないか」

男は花畑の中に入り込み、ごろりと寝ころんだ。

「ふぅ、ここは落ち着くなぁ。なんだか眠くなってきた……zzZ」

男はそのまま眠りについた。

「んーよく寝た。さて、そろそろ帰るかな」

男は立ち上がって帰ろうとしたのだが、足が動かない。

見ると、植物の蔦のようなものが男の足を掴んでいたのだ。

「なっ!? 離せっ! このっ!」

しかし、植物には言葉など通じず、どんどんと蔦が伸びてくる。

ついに首まで巻かれてしまい、身動きが取れなくなってしまった。

「うぐっ、苦しい……。助けてくれぇ……」

そこに現れたのは一人の少女。

その顔を見た瞬間、男は声を上げた。

「あっ、君はあの時の! どうしてここにいるんだ!?」

「ごめんなさい、私、もう戻れないんです。でも大丈夫です。私がずっと傍にいますから」

そう言って彼女は笑った。

こうして、男は永遠に彼女の


「こんなしょうもない事で死んでたまるか! あとお前笑ってないで助けろや!」

男は蔓を引きちぎり、少女を突き飛ばして花畑から走り去った。


「……はぁ、ひどい目に会った……そもそもなんで花屋に花畑があるんだよ……」


男は考えた末、森の中へと入っていった。

「ここには誰もいないようだし、少し休ませてもらおうか」

木陰に腰かけ一休みしていると、

「あれ、あんた誰だい?」

そこには一人の少女がいた。

「おっとすまない。ちょっと疲れていてね」

「ふーん。まあいいわ。私はここで静かに暮らしているだけだもの」

「へぇそうなんだ。俺はしばらくこの街にいる予定だからまた会うかもね」

「ええ、その時はよろしくお願いするわ」


男は少女にバックドロップをかます。

「嫌だよバーカ! この街に少女どんだけいるんだよ! 

非モテの社会人の前に都合よく美少女が現れるわけないだろ! 

ふざけやがって!」

地面に突き刺さった少女を尻目に男は突如現れた森から去っていった。


「非モテ……なんで自分の言葉で自分が傷つかにゃならんのだ……」

不思議少女との出会いとか、冒険に巻き込まれるとかそういうのは求めていない。

俺が求めているのは、日々のストレスを解消する心の癒しだ。

せめて俺に普通の休日を与えてくれ。

男はぶつぶつと文句を言いながらしばらく通りを歩いていると、


「うわああああ!!」

悲鳴を上げて逃げ惑う人々の姿があった。

「おい、どうしたんだ?」

「ば、化け物が襲ってきたんだ」

「何だって?」


(普通の休日を与えてくれっていったのに……)


男が騒ぎの中心に向かうと、そこには体長2メートルを超える大きな生物がいた。

それは巨大なゴリラのような姿をしており、手には大きな棍棒を持っている。

そしてその周囲には血を流して倒れている人々がいた。

「こいつは一体……」

男がそう呟いていると、ゴリラのような怪物がこちらに気付いた。

「ウホォオオオ!!」

雄たけびを上げながらこちらに向かってくる。

「ひいっ! こっちに来るなぁあ!!」

男は一目散に逃げだすと、その後をゴリラのような怪物が追いかけてきた。

必死で逃げる男だったが、ついに捕まり持ち上げられてしまう。

「くそっ! はなせぇっ!」

男は暴れるが、怪力には勝てずにそのまま投げ飛ばされてしまう。

「うわあ!」

地面を転がりながらもなんとか受け身を取った男は起き上がり、すぐさま逃げ出した。

しかし、先ほどまでとは比べ物にならない速さで追ってくる。

男は必死で走る。

すると、目の前に突然壁が現れた。

「うおっ!」

急ブレーキをかけたものの勢いを殺しきれずに激突してしまう。

「いてて……」

男が頭をさすっていると、

『おめでとうございます』

そんな声とともに目の前の壁の一部が開き始めた。

中から出てきたのは白衣を着た女性だった。

「あなたは幸運にも私の実験の被験者に選ばれました。これからあなたは異世界へ転生することになります」

女性は笑顔を浮かべてそう言った。

「いや、どういうことですか? そもそもここはどこなんだ?」

「質問が多いですね。まずここがどこかですが、簡単に言えば天国ですよ」

「なるほど……天国か……。じゃあ次、俺は何故死んだんだ?」

「さっきも言いましたけど、あなたの運の悪さが原因ですよ。あと、あなたはもう死んでるんです」

「マジか……」


(さっきのゴリラのくだりなんだったんだよ)


「はい、大マジです」

「ということは、このままだと俺は地獄行きなのか?」

「いえ、そこは大丈夫です。今から行くところは異世界なので」


「え~とですね、マジで嫌です。現世に帰してください。なんなら地獄行きでもいいんで異世界だけは勘弁して下さい」


「まあまあそう言わず。ちゃんとお礼はしますから」

「それでは早速説明を始めましょうか」

こうして、男は無理矢理に異世界へと連れていかれる事になった。

「はい、という訳でやってきました! 皆さんこんにちは


「嫌っつってんだろうがー!!!」


男は白衣の女性にジャーマンスープレックスで投げ飛ばし、周囲の建造物を破壊して回る。


「帰せ! 俺を日常の世界へ帰せ!」


男は壊れた壁の隙間を見つけ、身体をねじ込む。

そして元いた世界へと帰って来た。


「……もう嫌だ。せっかくの休日だがこのままでは身がもたん。おとなしく家でゆっくりすることにしよう」

男は自分の家に戻り、ベッドに横たわる。

(もう知らないメイドだったり少女だったりはいないだろうな)

部屋を見渡すが、人の気配はない。

俺は一人になり、ふと物思いに耽る。


運命という言葉がある。それは絶対に逆らえないとされていて、

それぞれの人生は本当にAIが勝手に決めた運命によって決まっているのかもしれない。

生きたくても病気や怪我であっさり死んでしまう者もいれば、平和に一生を終える人もいる。


……我ながら中学生で封印しておくような考え事だな。これはAIが考えたってことにしてくれ。


過酷な運命を背負ってしまった者は、運命というものに抗い続けるのだろう。

せめて人生の最後に悔いは無かったと言い残せるように。


俺は運命という言葉が、嫌いだ。


自分の人生を自分で決めたい。

だから、神様なんて信じない。

そして、この世界には神がいるらしい。

俺の目の前に、いるらしい。

「……どうしてこうなった?」

目の前に一人の老人が立っている。

「あのー、すみません


「クソが!!!」

男は包丁で自分の首を突き刺し、死んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ