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短編集/feat.AI  作者: トミタミト/feat.AI
16/26

海底遊覧船

――×××××年。

人類は環境変化により未曽有の人口減少の危機を迎えた。

事態を重く見た政府は、遥か海底に人類の種を保存するための生命維持装置”主母船”を制作することを発表する。

その計画とは特殊な酸素の含まれた水分に肉体を浸して保存し、未来に残すというものだ。

国によってその告知がされた後、直ちに国民からランダムにサンプルが選ばれると、その人たちは生命維持装置によって管理されながら、海底での生活を始めることになる。


――計画が実施されて数百年……途方も無い年月が流れた。

……そんなある日の事。

今日は生命維持装置から人が解き放たれ、レクリエーションが開始される日である。



『おはようございます』


生命維持装置から発せられる機械音声と共に、私は目覚める。

水が抜けて外に噴き出す音が耳元で響き渡り、身体にまとわりつく水分の感触が徐々に無くなっていく。

やがて酸素が全身の細胞に行き渡り、私はゆっくりと目を開いた。


「……」


寝ぼけ眼を擦りながら、ゆっくりと装置から這い出る。

薄ぼんやりと青く照らされた部屋の大きな強化ガラスの窓の目の前には、見渡す限りの海。

そしてその海は鏡のように映し出され、私がどんな人間だったかを思い出させた。


私はこの主母船における船長……つまりリーダーを任命された者だ。

……まあ人類がこのような形でしか生きられない時点で、上下関係など大した問題ではないが。


「おはよう」

「おはよう!」


次々と他の人類たちも装置から出てくる。

皆特に問題なく、生命維持装置は安全に機能しているようだった。


「今日は何するんでしたっけ?」


そのうちの一人がとぼけた口調で言う。


「確か……今日はレクリエーションの日だったはずだ」


私はそう答えた。

この”主母船”は、人類の種を保存するために作られた巨大な施設である。

しかし数年に一度、主母船のメンテナンスと、人が人らしい生活を忘れないために、レクリエーションを行うことになっている。


「ああ、そうだったな!じゃあ早速準備しようぜ!」


元気な若者が威勢よく答えた。

他の人間たちも続々と集まると、私たちは部屋の端にある大きな機械へと向かっていく。


過去の人類が残してくれた歓楽エリアに移動する為の転送装置。

通称、鳥籠とりかごと呼ばれている。

複数人が入れるように作られた檻のような装飾がされたガラスの器が、既に部屋の隅へと到着していた。

中は真ん中にテーブルや椅子が置かれており、外から見える景色を楽しむことが出来るように作られている。


「それでは皆さん、準備できましたら鳥籠に乗って下さい」


私の指示と共に、その鳥籠の中へと人々は次々入っていく。

そして全員が乗り終わった後、転送装置のハッチが自動で閉じ、鳥籠は移動を開始する。

鳥籠は鉄製のレールを軋ませながら、ゆっくりと私達の身体を揺らしつつ滑っていく。

時には期待に胸を躍らせるものの会話が細々と聞こえつつも、その静かな時間は過ぎていった。


……しばらくして、薄暗い景色が明るく切り替わっていく。

それは海底都市にある歓楽エリア、その入り口だ。

ガラス張りの壁越しにどこまでも暗い海を眺められる巨大なロビーに私たちは降り立った。

今までの暗がりでの生活でのギャップからか、例え人工的な光源でも眼窩がんかにひどく染み渡り、それが有り難くさえも感じる。


「ん~!久しぶりの外だぜ!」


「外って言っても海中だけどね……」


「いいんだよ、細かい事は!」


一人の若者は嬉々とした表情で伸びをしながら、メンバーと会話をしている。

確かに海中とはいえ、鳥籠の外に出たのは数年ぶりだろう。

心地よい解放感を感じると同時に少し緊張もしている人もいるようだ。


「さあ、今日は存分に楽しみましょう!」


「うん、久しぶりに遊ぶぞ!」


私は威勢のいい若者たちと共に歓楽エリアへと足を踏み入れた。

歓楽エリアは広大な空間に様々なアトラクションが並んでおり、まるで遊園地……テーマパークのようだった。


「まずは何に乗ろうかな……」


「ジェットコースターがいいぞ!」


「いやいや、ウォータースライダーだろ?」


皆が楽しそうに話し合っている声を聞きながら、私はふと足を止める。

それは数々の料理が立ち並ぶ屋台だった。

昔ながら……とでもいうのだろうか。

わざとらしいくらいレトロなそれらは、液晶画面に映し出された店員の映像と共に、次々と料理が作られていく。


「……」


長い休眠の末に何も入っていないお腹が活動を再開し、原始的な欲求が求められているのを脳で感じる。


「……美味しそうですね」


「遊ぶ前に何か食べようか」


皆の考えもどうやら一致していたようである。

私がそう言った矢先、皆は屋台の前に一斉に並びはじめていた。

そして各々好きなものを注文していく。


「このたこ焼きっていうのを食べたいなあ……」


「じゃあ私はたこ焼きと焼きそばで」


「えっと……俺はこの焼き鳥とビールって奴を下さい!」


「はーい!少々お待ちくださいね!」


液晶画面に表示された店員は丁寧に接客をしていく。

すると注文した商品が出来上がり次々とカウンターに運ばれてきた。

皆でテーブルに座り、それぞれが好きな料理を味わう。

数年ぶりの食事を堪能しながら、久しぶりの会話に花を咲かせる。


「こうしてみんなと話すのも久しぶりですね」


「やっぱりみんなとこうやって会話するのは楽しいぜ」


皆がそう言いながら笑う。

私もかつては行っていたであろう、楽しい日常を思い起こし、郷愁きょうしゅうふける。


「さて、腹ごしらえも済んだし……遊ぼうぜ!」


男の一人はあっという間に食事を平らげると、アトラクションを勢いよく指差す。

「ちょっと元気すぎじゃない?」と他のメンバーも呆れ気味だった。

私はその様子を微笑ましく見守った後、立ち上がって答える。


「これからは自由時間にしよう。夜になったら鳥籠前に集合ということで」


それを聞いた男は喜び勇んで、アトラクションエリアへと向かって走り出した。

数人の男も賛同して一緒についていき、あっという間に半数がいなくなってしまった。


「はあ、全く男子ってのはいつまでも子供なんだから。

……船長はどうします?」


「私はもうちょっとここで休んでいるよ」


私が答えると、心配する女性は一礼しつつ、物販エリアの方に歩いていった。

1人残された私は紙カップの珈琲コーヒーを啜って、皆が遊んでいる様子を眺める。

遊び慣れていない絶叫マシンや乗り物に彼らは一喜一憂している。

楽しそうで何よりだ。


人類が生命維持装置によって生活しはじめて――早、数千年。

これが主母船における”人間らしさ”を維持するための目的となる活動となっている。


人類の種を保存するために作られた主母船で過ごす日々は、普段は眠っているためか退屈とは感じない。

しかし常に機械に”管理”されているという感覚は拭えないものがある。

このまま保存するだけでは人間はただの遺伝子データとして扱われ、尊厳が失われてしまう。

そう考えられた末、日々を退屈に過ごさないようにと用意されたのが、このレクリエーションの日だ。


”人が人らしい生活を忘れないために。”


そんな希望を持った有志により建築されたこのエリアは、ありがたいことに遥か未来の時代にいる私達を、未だにもてなしてくれているというわけだ。


「……そろそろ私も行動しようかな」


私ははしゃぐメンバーたちを見守りつつ、腕時計に目を配ると、数時間ほど経過していた。

……どうも年を取ると、如何せん行動が鈍くなるらしい。

私は身体こそ生命維持装置のお陰で若いが、年齢を数えるともう……数えきれないほどになる。

よっこらと重い腰を上げて立ち上がると、ゆっくり前へと歩き出し、私もしたいことをすることにした。


……。


歓楽エリアに備え付けられた大浴場で汗を流した後、私は着替えて脱衣所を出る。

風呂に入るのも久しぶりの事だったので、随分と気持ちがいい。

このまま寝てしまいそうなほど気分が良いが……寝て時間を過ごすのは非常に勿体ないと我に返った。


私は大浴場を出てすぐ近くにある土産物屋へと足を踏み入れる。

色とりどりのアクセサリー類やぬいぐるみが棚に並べられている光景を見ると、何だか懐かしい気持ちになった。

ふと目に留まったのは、綺麗な装飾が施された熊のぬいぐるみ。

ロゴから察するに恐らくこの遊園地のマスコットなのだろう。

私はその可愛らしい顔につられて、ぬいぐるみを手に取ると画面上の店員に話しかけた。


「これください」

「はいよ」

「電子マネーで」

「はいよ」


私は腕時計を機械にかざして、間の抜けたSEサウンドエフェクトと共にぬいぐるみを購入する。

もはや貨幣の価値など無いので全く意味のない行為なのだが、人間らしい行動を忘れないための過去の人間からの仕込み……いわば演出である。

……こういう意味のない行動を面白いと思えるのが、人の本質なのだろうか。

私は難しい事を考えながら、お土産用の紙袋を手渡されると、店を出た。


歓楽エリアの一角にある休憩所へ向かうと、そこのベンチに腰掛ける。


……私はどうして可愛いものが好きなのだろう。

それはいつからなのか、今でもよく分からないが……彼のつぶらな瞳を見ていると不思議と精神が落ち着くようだ。


「お土産を買ったんですか?」


気が付くと目の前にはメンバーの一人である女性が立っていた。

彼女の片手にはお菓子が山盛りに入っていた紙袋が紐づけられている。


「ああ……せっかくだからね」


「そうですよねー。私もついいっぱい買っちゃいました」


女性は紙袋の中から細長いクッキーの入った小さな袋を取り出し、「ひとつあげます」と言ってくれた。

私は女性から手渡されたクッキーを受け取ると「ありがとう」と答えてポケットにしまう。


「座ってもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


彼女は紙袋を太腿に乗せて私の隣に座った。

そして私の紙袋から覗いているぬいぐるみの頭を見て、彼女は話しかける。


「ぬいぐるみ好きなんですか?」


「……まあ月並みには。……これは自分用じゃなくて家族へのお土産だよ」


彼女はその返事を聞くと不思議そうな表情で私の方を見る。


「家族……がいるんですか?」


「この主母船にはいないけどね」


彼女はその返事に少し驚いたような反応を見せる。


「そうなんですね。初めて聞いたかも。

……それってかつて主母船にいた人たちの中に家族がいた……って認識で良いですか?」


私はその言葉に首を振って答える。


「いや、夫と子供は主母船には乗らなかった。

……宇宙開発組の方に選ばれてね。今はどこかの銀河の宇宙船で漂っている筈さ」


「夫と子供がいたんですか……。

……それに離れ離れになっているなんて」


私は自嘲の笑みを浮かべて答える。


「再び元の生活に戻れたあかつきには、二人にお土産を渡そうと思っているんだ。

離れた時にたくさん土産話をしようって約束もしたからね」


彼女は私の言葉をひとしきり聞いた後、申し訳なさそうに首を傾けていた。


「君が気を病む必要は無いよ」


「いえ……家族に会いたいという気持ちは痛いほど分かります。

……この遊園地でのレクリエーションの日が無ければ、私もそんな日常があるだなんて忘れてしまう所でした。

……家族に会いたいという気持ちは、今も昔も皆同じですよ」


私は頷き、彼女の言葉に賛同した。




古今東西、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるものだ。

……人工太陽が沈み、辺りは暗くなってくる。

私は早めに集合場所に来ていたが、人々はまばらにしか集まらず、時間になっても全員は集まらなかった。


「……心底楽しんでいるようで何よりだ」


私は集まっているメンバーを待たせ、遅れているメンバーを探しに行くことにした。


……。


私はエリア内をひたすら探し回り、最後に歓楽エリアにある屋敷の前にやってきた。

中世のお城のような外観を模したそれはなぜかひっそりとエリアの奥に建てられている。

遊園地の景観にするならもっと中心に建ててもいいはずなのだが。


「失礼するよ」


城の入り口に似つかわしくない赤色の暖簾のれんをくぐり、中に入るとそこにはピンクに照らされたライトと共に、広い部屋が広がっていた。

フロアには陽気なBGMがズンズンと鳴り響き、独特の香水の匂いが鼻腔を突き抜ける。

壁には人の顔が張られたパネルと卑猥な文字列が書かれた料金表が見えた。

「……」


私は目を細めつつ、この城が何なのか察する。


……ここは遊園地というコンセプトには似つかわしくないが”昔の時代の人間たちが好んで集っていた場所”の一例だ。

人が人らしくあるというのは当然こういった要素も必要不可欠だというのは分かるのだが……私にとっては如何せん悪趣味だと思えた。


「完全合体コースでよろしいですか?」


「はい!よろしくお願いします!」


大理石のカウンターでは男たちが興奮しながら、受付をしていた。


「集合時間はとっくに過ぎているぞ」


私が後ろから声をかけると、男たちは驚き、申し訳なさそうに頭を下げる。


「すみません……!つい夢中になってしまって……」


「よく分かりませんが……なぜかここに来ると心が躍るんです!」


私は肩をすくめて答える。


「君たちが何を楽しもうが構わないが、集合時間は守ってくれよ?」


「本当にすみません!……だけどこのアミューズメントだけはやらせてください!

……何だか男として行かねばならない気がするのです!」


男たちはそう高らかに言って、部屋の奥へと入っていった。


……。


私はため息をついて、城の外に出た。


……。


近くにあったアクアリウムショップを眺めつつ、待機する。

熱帯魚が泳いでいるのを見るのは何時間見ても飽きない。


……。


「……終わったか?」


「はい!もう悔いは無いです!」



数時間後、城から出てきた男たちは満足げな顔をしていた。

私たちは一緒に集合場所に戻ると、待たせていたメンバーに謝罪し、鳥籠へと乗り込む。


「よし……今度こそみんなちゃんと揃っているようだな」


人数を確認し、鳥籠の中に入ると転送装置は動き出した。


「楽しかったねー」

「こんなにたくさんお土産買っちゃった」

「次は何年後だろう……」


ほぼ全員がお土産を両手いっぱいに購入し、袋が破れそうになっているほどだ。


「またこのメンバーで一緒に来ましょう!」


「……ああ、また一緒にな」


私は曖昧に返事をしながら鳥籠の窓から外を見る。

あんなに広く感じていた遊園地は既に小さく、遠景として映るだけとなっていた。


数分ほどして、鳥籠は設置された海底トンネルを抜けた後、主母船への帰路に辿り就く。


「お土産は各自コンテナに積んでおくように」


主母船の廊下に用意された四角いコンテナに各々はお土産を保存していく。

このコンテナは数百年単位で鮮度を保つことの出来る優れものだ。

人々は惜しみながらも、ゆっくりと思い出に浸りつつ、それらを仕舞っていく。


私も例外でなく、お土産に買ったぬいぐるみをコンテナへと片づけようと蓋を開ける。


「……また一緒に、か」


私はコンテナの中にあった家族写真を見て、無意識に呟いた。

そしておもむろに、棚の方へお土産のぬいぐるみを飾ると、既に物でいっぱいになっていたコンテナの蓋をしっかりと閉じた。



「全員が装置に入れば、再び皆は休眠状態へと入る。

……心の準備は大丈夫か?」


私の指示を受けながら、メンバーは頷きながら装置に入っていく。


「それじゃあみんな、また数年後に会おう」


それに続き私も装置へと身を預けた。

全員は笑顔で返事をし、私は最後に装置のハッチを閉める。

すると機械音と共に装置の蓋がガチャリとロックされ、穴から仄かに光り輝く水が満たされていく。


「……」


水音が聞こえる中で私は静かに目を閉じた。


……意識が落ちる直前。



―――。

―――――。

―――――――。


――ガコン。



機械同士が擦れてぶつかるような異音と共に、私は目が覚めた。

視界は緊急事態を示すアラートで真っ赤に染まり、辺りを包んでいた水分は穴からどんどん抜けていく。

 

そして装置のハッチが勢い良く開いた。


「な……何だ……!?」


メンバーは慌てて起き上がり、立ち上がったまま、お互いの顔を見合わせている。

突然の出来事に動揺が隠せないようだ。


「原因を調べてくる」


私は急いで緊急用のマニュアルが保管されている棚へと向かった。

未だに物理的な見た目をしている薄いプラスチックで出来た分厚い冊子を捲り、対処法を確認する。


……しばらくして休眠時の不具合についてのトラブルシューティングという項目を見つけ、私はじっと

目を通す。そしてマニュアルを閉じて、生命維持装置のマザーコンピュータにアクセスした。


「……」


数人が心配して見守る中、私は素早く原因を見つけると、メンバーの方に向き直って言った。


「どうやら生命維持装置に繋がっている浄水槽のフィルターが詰まってしまったみたいだ」


「フィルターだって?」


「ああ、ある程度のゴミは自動で検知され浄水されるのだが……当然フィルターに通せないくらいの物を装置に持ち込んでしまったら不具合が出る」


「ええっ!?もしかしてお土産を誰か装置に持ち込んじゃった!?」


「お、俺じゃないぞ!?確かに全部仕舞ったぜ!」


「あんたの口の中に食べ残しとかが残ってたんじゃないの?

寝る前にたくさんお土産食べてたみたいだし」


「失礼な!ちゃんと全部飲み込んでるに決まっているだろ!?」


メンバーが言い合いになる中、私は冷静にメンバーに指示を出す。


「皆、落ち着いて。……とにかく原因はフィルターが詰まった事によって起こった酸素濃度の低下による緊急停止だ。

停止してしまった場合はこうやって自動操作が外れてしまうのだが……。

生命維持装置をマニュアル操作で再起動すれば問題ないはずだよ」


私はそう説明すると、マザーコンピュータの電子キーボードを叩く。


「私が手動で操作するよ」


「……でもそれだと船長が取り残されてしまうんじゃ」


「心配しなくても大丈夫だ、何とかするからこのまま皆は装置に入っていてくれ」


メンバーはそのまましゃがみ込み、装置へと戻っていく。

1人は心配そうにしばらく私を見ていたようだったが、私が微笑んで返すと、装置の内部へと身体を隠していった。

私は彼らが全員寝そべったのを確認すると、再びキーボードを操作し始める。



――。



「……ふう」


私はマザーコンピュータの画面を確認し、装置のハッチを全て閉じた。

そしてフィルターに詰まった異物を取り除く作業を行った浄水槽が作動し、装置に再び水が満たされる。

メンバーはそれぞれが安心した表情を見せながら、再び装置へと身体を委ねていく。

私はその光景を見届けると、静かにマザーコンピュータの操作画面を落とした。


「……」


辺りは静寂に包まれる。

私を見ているのは、もう熊のぬいぐるみだけだ。



「――人類の未来に幸あれ」



私はポケットに仕舞っていたクッキーを齧り、暗い海底の景色を見つめながら、そう呟いた。

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