とんでもない選択肢を迫る神の声
運命というものは時に、人の行動の本質すら狂わせる。
あの時の決断で、僕は自分が自分で無くなるような感覚がした。
――極度の緊張がそうさせたのであろうか?
否、本当にあの時決断を下したのは本当に僕自身では無かったのだ。
失敗を心の中で静かに嘲笑し堕落に塗れて生きる自分と、それを傍観している”誰か”は、確実に僕の中にいる。
もっと早く気づけていれば、こんな矮小で稚拙な人間にはならなかったのかもしれない。
……思えば、恥ずべきことの多い人生だった。
僕は今一度、過去の事を振り返る。
※
その日、僕は何時ものように授業を受け、休み時間になると友人と下らない話をして笑い合う。
そこに突然クラスに担任の先生がやってきて「明日から家庭訪問があるから準備しておくように」と告げられた。
事前に知らされていなかったことにクラス中が驚く。
放課後、私は帰宅し家に着いて荷解きをしているとチャイムが鳴る。
玄関を開けるとそこには担任の先生ともう一人、長い髪の女の子がいた。
何処かで会ったことがあるような気がするが、私にはそれが何処で会った誰だったのかは思い出せない。
彼女は先生に促されると丁寧にお辞儀をして言った。
「ご無沙汰しております、私はあなたの腹違いの妹に当たる者です」
「彼女とはこの道でばったり出会ってね、ぜひ一緒に挨拶したかったというので連れてきたんだ」
担任の先生はそう説明すると、女の子は私の反応を伺っているようだった。
私は……
A.「初めまして」と挨拶をした 。
B.「そうですか」と素っ気ない返事をした
C.「え? ……妹ですか?」と聞き返した。
D.「うっひょー!義理の妹キタコレ!」と大喜びした。
……Dは無い。絶対にありえない。あまりにも初対面の人に対して失礼すぎる。
しかし、私の意思とは裏腹にDを選びたい気持ちになり、その瞬間には行動を起こしてしまっていた。
「うっひょー!義理の妹キタコレ!」
普段友人にも披露している、おちゃらけた態度を目の前の女の子に示す。
一瞬、女の子の表情が曇った気がしたが、先生はそれを見て苦笑いした。
「ははは、君は相変わらずお調子者だね。一応今日は家庭訪問という名目で来てるのだから、真面目に頼むよ」
寒い雰囲気を先生にフォローされ、九死に一生を得た。
僕は後頭部を掻いて、照れくささを誤魔化し、なんでこんな事言ったんだろうと激しく後悔する。
「上がらせてもらうよ」
先生はそう言うと女の子と一緒に家へと上がると、僕は言われるままに部屋へと案内する。
特に目立った物も置かれていない殺風景な部屋に通された彼女は少し緊張気味に見えた。
「すぐにお茶を持ってきます」と言いながら台所へ向かう途中、先生から不意に声をかけられる。
「……にしても彼女は本当に君の妹なのかい?」
「え? ……どういう意味ですか?」
僕は彼女の事を妹だと信じて疑っていなかった。
いきなり美人の女の子が妹になると言う嬉しさが勝って、全く警戒して無かったが、確かに突然の出来事ではある。
「君の親御さんから彼女については何も聞かされてないのか?」
先生は神妙な面持ちで僕に問いかける。
確かに父母は、この子の事は何も言わなかった。
こんな大事なことを黙り通すなんてよっぽどの事情があるのだろうか。
僕は知らされていない事を先生に話すが、先生の表情は更に曇るばかりだった。
そんな時、お茶を沸かした薬缶が音を出して、この場を遮った。
「居間で座って待ってるよ」
先生はそう言って、歩いて台所から出て行こうとする。
僕は……
A.「妹か……。先生にもご兄弟はいらっしゃるんですか?」
と、自然な感じで聞いた 。
B.「僕はあなたの事が知りたいです!」
と、真剣に聞いた 。
C.「わざわざ僕に会いに来るなんて変わってますね」
と、自嘲気味に呟いた 。
D.「えへへへ!初夜が楽しみですね!」とセクハラ発言した。
……さっきよりまともな選択肢が減っている気がするぞ。
分かってるよな?変な雰囲気になることだけは避けたい。
そして僕は、
「えへへへ!初夜が楽しみですね!」と言った。
「……は?」
私の発言に先生は戸惑う。そりゃそうだ、馬鹿か僕は。
僕は発言を撤回して、「いえ……しょうや……醤油はどこだったかなと言っただけです」
先生は「お茶菓子に醤油は必要ないと思うが……」と言いつつ、居間へと歩いていった。
……どうにか誤魔化せただろうか。
僕は心臓がバクバク鳴っているのを悟られないようにして、先生たちにお茶を出す。
そして、妹と名乗る女の子の対面に座った。
彼女はこちらを見据えて黙り込んでいる。
このままではらちが明かないので僕は……
A.「あの……、本当に僕の妹なんですか?」
と、ストレートに聞いた。
B.「お茶が冷めますよ」
と、少し急かすように答えた。
C.「僕は君の事知らないんだけど……」
と、訝しげに聞いた。
D.「初夜が楽しみですね!」
と、セクハラ発言をした。
おい、Dを本人に言うのだけはマジでヤバい。
絶対誤魔化し切れない。本気で止めてくれ。
そう考えつつ、僕は答える。
「あの……、本当に僕の妹なんですか?」
よしよし、それでいいんだ。
引き続きその調子で頼むよ。
気まずい沈黙の後、彼女は答える。
「ええ、私はあなたの妹です。信じられないかもしれませんが……」
その答えに僕は一瞬動揺したが、彼女が嘘を言っているようにも見えない。
彼女の表情は真剣そのもので、僕を騙そうとか何かを企んでいる様には見えなかったからだ。
「その腹違いの妹が何故急に訪ねてきたんだい?」
先生は他人事のようにお茶を啜りながら、問いかける。
もはや僕の家庭訪問など二の次で、テレビドラマに夢中になっている感覚で僕たちの様子を視聴している。
「突然の事ですので、驚かれるのは当然です。……ですが私はどうしてもあなたにお会いしたくてここに来ました」
彼女はそう言うと立ち上がり僕の目を見つめる。
長い黒髪が綺麗で、思わず見とれてしまうほどだった。
彼女の目はパッチリとして大きく、まるで吸い込まれそうになる。
そして僕は彼女から目が離せなくなった。
そんな僕を見て彼女は少しだけ口角をあげる。
僕はつい……
A.「悪いけど僕は君の事なんて知らないし、興味もない。帰ってくれ」と冷たくあしらった 。
B.「君みたいな美人が僕の妹だなんて信じられないよ」とお世辞を言った。
C.「は?何この展開!ちょっとまってて!」と慌てて部屋に戻った。
D.「初夜が楽しみですね!」とセクハラ発言をした。
……おい、いい加減にしろよDの選択肢。
というか無難な選択肢が実質一択しか無いじゃないか。
僕は思考を巡らせ、言葉を選んで答える。
「悪いけど僕は君の事なんて知らないし、興味もない。帰ってくれ」
つ、冷てぇ~!さっきのおちゃらけた僕はどこに行ったんだ。
いきなりクールキャラ気取りやがってあまりにも情緒が不安定すぎるでしょう。
彼女は少し驚いた表情を見せ、そして笑った。
「あはは!……やっぱりあなたは変わらないな」
彼女はそう言うと僕の横に移動して座り、僕に寄り添ってくる。
え?なにこの急展開。僕たちは初対面のはずだよね?
なんでそんなに距離感近いの?ちょっとやめてよ先生の前で!?
いや僕としては嬉しいんだけど、嬉しいんですけども!
先生はそんな僕たちの様子を訝しみながら問いかける。
「……邪魔そうだからここで御暇するよ、後は若いものだけで過ごしなさい」
そう言って、先生はろくに僕の家の家庭訪問もせず、帰って行ってしまった。
そ、そんな気の使い方はされとうないんじゃ。
何故か心の中で広島訛りが出つつ、目の前の推定妹の女の子を見つめる。
「初夜を楽しみましょう」
その言葉を聞き、僕は即座に彼女から離れた。
「まさか……変な選択肢があったのって」
「そう、私があなたを操っていた。初めからね」
彼女はくすくすと悪戯っぽい笑みを浮かべ、こちらを伺っている。
こいつ……ただの女の子じゃない。
僕の勘がそう告げていた。
「へぇ、君が僕を操っていたのか。一体どういうトリックなんだい?」
僕はこの状況をなんとか打開すべく、会話を続けることにした。
「……私が直接操作したわけじゃないけど」
彼女はそう言うと自らの額を人指し指でなぞり、何やら呪文のようなものを唱えた。
すると……
A.「はっ、僕は一体なにを?」
と、我に返った。
B.「うっ!……頭が痛い」と頭を抑えつつ言った。
C.「は?なにこれ、夢でも見てるのか?」と困惑した様子で言った。
D.「え!? これはまさか……魔法!?」と驚いた様子で言った。
E.「ふっ、僕の力にかかればこんな初歩的な魔術など……」と言った。
……選択肢が頭の中に複数浮かんできた。
Eが特に異彩を放っているな。というかDも大概だけどさ、なんで急にバトル漫画的な展開になっているんだ?
さっきまではせっかくラブコメチックだったのに。
彼女はさっき選択肢を操っていると言っていた。この様子だと僕はまた変な選択肢を選ばされるに違いない。
自分の意思と関係なく僕は答える。
「はっ、僕は一体なにを?」
すると彼女は笑って答える。
「ふっ……もう私の術中ね」
僕が今いるこの空間は彼女の支配下にあるのか?
いやしかしそんな現実離れしたことがあるはずがない。きっとこれは夢だ。
そうに違いない。
「君は一体何者なんだ?」
僕は恐る恐る彼女に問いかける。
「私はあなたの腹違いの兄妹よ」
彼女はそう言って僕に近づくと僕の手を取り、自分の胸に押し当てた。
その感触はとても柔らかく、そして温かかった。
彼女の心臓の鼓動も感じ取れるほどだった。
A.「触っていい?」と興奮気味に言った。
B.「え?何この展開……夢なら覚めないで」と現実逃避した。
C.「……は?なにこれ?夢でも見てるのか?」と困惑した様子で言った。
D.「……ふっ、僕の力にかかればこんな初歩的な魔術など……」と自慢気に言った。
このままではこの女の子にいいようにされてしまう。
いや、されてしまっていいのか?
僕は年端の行かない女の子に支配されて興奮する変態だったのか?
ちくしょう、僕にも人並みのプライドというものが……。
僕が答えを決めかねていると、彼女がぱっと答えた。
「ブー、時間切れ」
何と言う事でしょう。
そういうパターンもあるのか。
選択中はてっきり時が止まっているのだとばかり思っていたが、会話中に固まっているのは確かに不自然だ。
彼女は耳元で囁くように話しかける。
「私は優しいから、最後の選択肢を君に与えてあげる。君の自由意思を君に選ばせてあげるね」
そう言って、彼女は再び指先を操作する。
複数の選択肢が僕の頭の中に浮かんでくる。
何が自由意思だ。そっちが勝手に決めているくせに。
彼女の言う最後の選択肢……僕は……
A.「触っていい?」と興奮気味に言った。
B.「え?何この展開……夢なら覚めないで」と現実逃避した。
C.「……は?なにこれ?夢でも見てるのか?」と困惑した様子で言った。
D.「ふっ、僕の力にかかればこんな初歩的な魔術など……」と自慢気に言った。
E.「これは夢だ!」と言って床に頭を打ちつけた。
F.「夢ならちょっと味見……」と言って彼女の胸を舐めた。
G.「ふっ、僕の力にかかればこんな初歩的な魔術など……」と自慢気に言った。
H.「うっわ……女のおっぱい触ってるよ僕」と言いながら自分の頬をつねった。
I.「僕は選択する。世界の理を破る術を」厨二病を発症した。
J.「これはきっと孔明の罠だ」三国武将のせいにした。
K.「うっひょー!揉み放題定額サービスじゃん!」と嬉しそうにプラン内容を語った。
L.「僕って別に妹萌えじゃないよね?」自分の性癖を疑い始めた。
M.「……これは夢だ」と現実逃避した。
N.「これは夢だ……そうに違いない」と自分に言い聞かせた。
O.「僕ってやっぱりロリコンなのかな?」と唐突に自覚した。
P.「
【フリーアカウントの利用上限に達しました。約5時間後に再度お試しください。】
アハハハハッハハ!!!!!!!!フハハハハハハ!!!!!!!
この戦い!!!!僕の勝ちだああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
※
……あの時の出来事は未だに思い出せない。




