プロローグ
〜地球・日本国・私立清華高等学校1ーA教室〜
<チャイムの音>
「じゃあ、今日はここまで。委員長、挨拶を。」
「はい。起立!礼!ありがとうございました!解散!」
「ふぅ、やっと終わった〜。」
あ、はじめまして。私はこの学校の生徒で『四葉 杏』っていいます。少し背が低いのがコンプレックスな普通の女子高生です。
「杏!今日、このあとカラオケ行かない?」
彼女は『七宝 梓』です。私のクラスメイトで、仲良くしてもらってます。背が高くてかっこいいんです。羨ましいな…
「うん!いいよ、行こ!」
「よし、決まり!」
〜カラオケの帰り道〜
「あ〜、歌った〜。」
「あはは、楽しんでもらえたようで良かったよ。じゃ、私こっちだから。またね!」
「うん!また明日ね!」
梓と別れた私は、再び歩きはじめました。
「はぁ、楽しかったなぁ〜♪っと…え?」
なんで私、倒れてるの?転んだのかな、全く私はドジだなぁ。起き上がらなきゃ…あれ?体に力が入らないな。なんか背中が痛っ…違う、熱い!熱い熱い熱い!熱い熱い熱…い?寒い?熱いのに寒い?わからない。なんだろう、眠くなってきたなぁ………。
私はそこで意識を失ったのでした。
〜???〜
次に目を覚ますと、私は果てしなく続く真っ白な空間に浮かんでいたのです。
ここ、どこだろう。すごく安心する。いつまでも微睡んでたいな。
「いいえ、だめですよ。そろそろ起きてください。」
あれ、全然気がつかなかった。いつの間に目の前にいたのかな。すごく綺麗な人だ……人?背中に翼が生えてるから違うかな。
私の目の前にいたのは、純白の衣を纏い、人形よりも整った肢体にしみひとつない白く美しい肌を持ち、艶のある濡羽色の髪を足まで伸ばした非常に美しい女性でした。しかしその背中には3対6枚のミルクのように柔らかな白の大きな翼があったのです。人間の背中には翼などあるはずがありません。
「はい、お察しの通り私は人間ではありません。いわゆる天使と呼ばれる存在です。」
やっぱりそうなんだ。ってことは、私は死んだのかな。
「いいえ、厳密に言えば、あなたはまだ亡くなっているわけではありません。亡くなる直前の状態と言うべきでしょうか。」
そうなんだ…ってあれ、私声出してないよね。もしかして心を読んでますか?
「はい、主より人の思考を読み取る能力を頂いております。」
私、変なこと言ってませんよね?
「はい、大丈夫ですよ。そろそろ本題に移ってもよろしいでしょうか。」
は、はい、大丈夫です。
「はい、それでは…四葉杏さん、私達からあなたに異世界への転生を提案させていただきます。そこはあなたが以前憧れていらした物語のような、所謂剣と魔法の世界と呼ばれる世界です。」
な、なんで知って……っていうか異世界に行けるんですか!?
「はい、詳しい理由はお話しできませんが。」
そうですか、それって拒否できたりするんですか?
「はい、可能です。しかし拒否されますと、亡くなりかけているあなたに意識が戻り、じきにあなたの命は消滅してしまうでしょう。助かる確率は0%ではありませんが、非常に低い値です。ですから拒否をすることはおすすめできません。」
助かる確率は0%ではないとはいえ、実質選択肢は一つしかないんだ……。なるほど、わかりました。異世界に転生することを受け入れます。
「はい、かしこまりました。しかし、もう少し悩むと思っていましたが。」
家族や友達を残していかないといけないのは寂しいですけど、拒否しても生き延びる見込みがほとんどないなら受け入れるしかないかなって。それに私、恥ずかしながら異世界へ行ってみたいって思っていたんです。バレてましたけど…。だから、このチャンスをふいにしたくないし。
「なるほど、そうでしたか。では、転生を受け入れられたということで、キャラメイクとまいりましょうか。」
キャラメイク…ですか?ゲームみたいな…
「はい、あなたが思い浮かべたものと相違ありません。このキャラメイクでは、あなたが成長しきったときの容姿をある程度決めることができます。しかし、注意点として、遺伝や生育環境によって容姿に誤差が生じることを念頭に置くようになさってください。」
なるほど、わかりました。どうしよっかな…せっかく新しい人生だし、調子乗っちゃお。やっぱり前は身長が低かったから高くしたいよね、170cmとかあるといいな〜。それとナイスバディで脚長くて〜、顔も美人にしたいよね。本当は天使様みたいな姿が理想だけど高望みがすぎるからね。
「はい、構いませんよ。」
ほら、天使様を構いません……っていいんですか!?
「はい、この姿はあくまで人間に姿を見せるためのかりそめのものですので。私の現在の容姿になさいますか。」
じ、じゃあそれでお願いします!
「はい、かしこまりました。それでは、容姿は決まりましたでしょうか。」
はい!
「はい、それでは、初期スキルを決めてください。スキルポイントが渡されていますので、その範囲内でしたら、いくつ選ばれても構いません。」
スキルももらえるんですね!
「はい、所謂転生者特典と呼ばれるものです。スキル一覧をお見せしますのでよく考えてお決めください。」
転生者特典…!いい響きだ…っと決めないと。
残りSP:1200
〜数時間後〜
残りSP:0
武の天才:武術系スキル取得条件緩和(大)、武術系スキルレベル上昇補正(大)、武術関連パラメータ上昇補正(大):必要SP:200
魔の天才:魔法系スキル取得条件緩和(大)、魔法系スキルレベル上昇補正(大)、魔法関連パラメータ上昇補正(大):必要SP:200
技の天才:生産系スキル取得条件緩和(大)、生産系スキルレベル上昇補正(大)、生産関連パラメータ上昇補正(大):必要SP:200
智の天才:頭脳系スキル取得条件緩和(大)、頭脳系スキルレベル上昇補正(大)、頭脳関連パラメータ上昇補正(大):必要SP:200
耐の天才:耐性系スキル取得条件緩和(大)、耐性系スキルレベル上昇補正(大)、耐性関連パラメータ上昇補正(大):必要SP:200
感の天才:感覚系スキル取得条件緩和(大)、感覚系スキルレベル上昇補正(大)、感覚器官成長補正(大):必要SP:200
「スキルは決め終わったでしょうか。」
はい!でもスキルポイント多くないですか?
「はい、スキルポイントの量はその人の人柄や現在までの行動などから算出されるのですが、あなたのものは今までの転生者たちの中でも上位に入る量でした。」
やっぱり。でももっと多い人もいたんだ。
「はい、最高ですと5000を超えるような方もいらっしゃいました。」
ほぇ〜すごい。
「そろそろ、転生を開始しますが準備はよろしいでしょうか。」
あ、はい、大丈夫です!
「はい、それでは転生させます。」
目の前の天使がそういうと私の体が光に包まれていきます。
あ、そうだ、天使様ありがとうございました!
「ふふ、はい、こちらこそ楽しかったですよ。貴方の新たな人生が幸せなものになることを祈っています。」
あ、初めて笑ってくれた…!うっ、眩しい!
光がますます強くなり、目を開けているのが辛くなると、私の視界は暗転しました。
〜異世界ティルア・シュテルビルト帝国・フィアレーベ公爵邸〜
「奥様!おめでとうございます、元気な女の子ですよ!」
「無事産まれてくれたのね、抱かせてちょうだい。愛しい私の娘…。私が貴方のママよ、よろしくね。」
その日、世界に新たな1つの生命が誕生したのです。