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ブラック企業の目の前を歩いていたらお先が真っ暗になってて気ぃついたらベルトコンベアの前で流れてくる小豆が一粒通るたんびにボタンを一つぺたんと押し続ける男、蝦蟇言三郎って、誰やねん……わしの事かっ!?

作者: 橋口しん

くだらない物語に、ほんの少しばかりのお時間に、お付き合いくださいませ。

 わしは、小豆が一粒通るとボタンを一つ押す役目をなぜかやっておった。


 ほんの少し前まで……自分の家におって、なんか暑いから冷たいもんでも買おうと思て……家から出て30分先のコンビニまでジュースを買いに行ったはずやねんけど……。


 外の暑さにやられてしもたんか自分でもわからへんねんけどブラック企業の目の前を歩いてたら……お先が真っ暗になってしもて、気ぃついたら……、ベルトコンベアの前に立っておった。


「あ! あずきがながれてきますよぉ~っ!」


 ベルトコンベアから小豆が一粒……流れてくる……またや。


 やたらと可愛らしい女の子の声で、天上から御告げが聞こえてくるとわしは【せやな、そら小豆で間違いないワ】と書かれとるボタンをひとつ、……ぺたんと押す。


「ぱんぱかぱ~んっ! 大☆正★解っ! 

そうです! これが正真正銘っ!  あずきなのですっ!」


 そして、わしの目の前に流れてきよった豆粒は、ベルトコンベアに乗って奥に運ばれて行きよった。


「……一体、何処に行きよるんやろ……? あの小豆」


 わし以外、工場に誰もいいひんのについ独り言を言ってしもうた。


 同じ事を繰り返して小豆が一粒流れてくるたんびにボタンを一つぺたんと押してたから、なんや時間の流れが遅そいしなぁ……。


 この工場……よう見たらどっこにも時計飾ってへんなぁ……。窓もないから今が夜なんか、朝なんか、昼なんか、15時のおやつ時なんかよくわからんし……。


 せや……あの漫画の続き、まだ読みかけやったなぁ。


 次々に小豆が流れて来よるとボタンを一つぺたん。


 せやけど、中村のばぁちゃん……元気にしとぅかなぁ。


 小豆が一粒、流れてくるとボタンをぺたんと繰り返し。


 あぁ、なんや無性にトンカツカレー唐揚げ盛りが喰いたくなってきよったワ。


 平和亭のご亭主はん、まえに店に行ったんワ……3週間くらい前やったやろか?


「じりりりり♪ きょうはここまでぇいっ!  おつかれさまでしたーっ!」


 わしは毎日同じことを繰り返しておった。


 ♪あ~った~らし~ぃい~あ~っさっが~ぁ! きたのさ! ホラッ! ヤッテキタノサァ! はーたらっこ! はーたらっこ! はたらこおーっ♪


 あぁ、早よ帰りたい。


 そういやジュース買いにコンビニ行ったけど途中で気ぃ失ってしもて、まだ口にしてへんのよなぁ……。


 もぉ、喉がカラカラや。


 わしは次の日も、小豆がくるとぺたんとボタンを押しとった。


 次の日も。

その次の日も。


 しかし……いつになったらわし……帰れるんやろ……?



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