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第七ラウンド いざ、入門!

「初日は、動ける服装ならなんでもいいよ」と、スキンヘッドの「川内先生」に言われた通りに、学校の体操服を着てぼくは公民館に向かった。


 夜七時から八時半までが一般生徒の練習らしい。ぼくがこの間に見学したのは、選手用の特別メニューなのだそうだ。


 この間と同じく、公民館の入り口ではお母さん達が井戸端会議中だった。

 ぼくが横を通ろうとすると「こんばんは」と、皆に声を掛けられた。ぼくも「こ、こんばんは」とあいさつを返し、頭を下げた。


 玄関に入ると、例の女の子「川内優希」が、大きな鏡の前でパンチやキックのフォーム確認をしていた。ぼくと目が合うと、彼女は、ちょっと驚いた様な表情を見せた。それから、


「靴は下駄箱に入れて。そしたら講堂に入るから」


 と言って、先に講堂に入って行った。その際、小さく「オス」と言いながら一礼した。


 なんとなく真似をすべきな様な気がして、ぼくも、一礼してから中に入る。


 中には、七、八人の生徒がいた。


 ほとんどが小学生で、他には中年の男の人がふたり。中学生は、ぼくと彼女だけのようだった。

 それぞれが、青色や黄色、緑色などの帯を腰に巻いている。川内優希は、茶色の帯だ。


「オス!」


 大きな声が、玄関から聞こえた。


 見ると、スキンヘッドの川内先生が一礼して入り口を潜るところだった。生徒たち全員が「オス」「オス」と口々に返す。


 川内優希が「こっち」と、ぼくを先生の前に促す。


「おぉ。入門するかい?」


 川内先生が、笑顔を見せた。


「え、えっと。これ」


 ぼくは、入門願書と現金が入った封筒を、先生に差し出す。先生は、中の書類に目を通す。


「じゃあ……堀田隆一君。さっそく、今日からやっていこうか」


「はい。よ、よろしくお願いします」


 ぼくは、頭を下げた。


「そう固くならんでもいいよ。気楽に始めて気長に続けるのが一番だ」


 川内先生が、笑いながらそう言った。


「整列!」


 川内優希が声を張り上げると、全員が一列に並んだ。おどおどしているぼくを「こっち」と川内優希が再び促し、ぼくは、列の一番端、小学校低学年くらいの青色の帯の子の横に並ばされた。


 川内先生が前に立ち、


「はい、座って」


 と、声を掛け、皆が、さっと腰を下ろす。正座だ。


 ぼくも、真似して座る。


「姿勢を正して。黙想」


 先生が言い、目を瞑る。


 隣りの子を盗み見ると、背筋を真っ直ぐと伸ばして、かっちりと目を瞑っている。


 ぼくも、真似して背筋を伸ばし、目を瞑った。


 とたんに、講堂の中がしんと静まりかえる。 


 外から聞こえる虫の鳴き声や、誰かの咳払いの声が、やけに大きく、ぼくの耳に響いた。


 

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