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第二十三ラウンド 一軍入り……?

 ロビーの端に置いてあるソファーセットが目に入り、僕はそこに腰掛けた。


 有線放送と、各部屋からちいさく漏れ聞こえるカラオケの音が入り混じり、ロビーの空間をどんよりと満たしている。それを聴くともなく耳にしながら、ついさっき注いだばかりのコーラを、ストローで啜る。


 あの後、なぜか僕は放課後にクラスの一軍連中からカラオケに誘われた。

 牧島岳と二里美祢を中心にした、男子四人、女子三人のグループだ。


 学生は持ち込みOKの店で、コンビニでお菓子をそれぞれ買い込んで、入店した。


 やたらとテンション高めの連中になんとか調子を合わせて、僕も回ってきたマイクを持って三曲くらい歌った。メジャーなアーティストが歌う無難なアニソンで、とりあえずお茶を濁した。


 で「ちょっと、トイレに」と言って、いったんここに避難してきた。


 決して楽しくない事はないのだけれど、どうにも居心地が悪い。


 家の都合で四月にこっちに転校してきてから、一学期の内は学校で話すのはせいぜい晴人と先生達くらいのものだった。いきなりのこの落差は、正直キツいものがある。


 そろそろ部屋に戻ろうか、それとも、用事でもでっち上げて、ひとりで家に帰ろうか……。そんな事を考えていたら、いきなり「おそいよ、堀田っち」と、声が掛けられた。


 そこに、二里美祢が立っていた。

 空のグラスを、両手で器用によっつ持っている。


「手伝ってよ。ひとりじゃ持っていけん」

 二里美祢が口を尖らせる。僕は慌てて立ち上がり、グラスをふたつ受け取った。


「めんどくさいから、ぜんぶジンジャーエールでいいや」

 笑いながらそう言って、二里美祢は、次々とグラスを薄緑色の液体で満たしていった。そして「あれ、どれが誰のだったっけ」と言った。僕は、思わず笑ってしまった。


「やっと笑った」

 二里美祢が、ニヤリとしながらそう言った。


「え?」

 僕が動揺しながら訊くと、


「カラオケきてから、堀田っち全然たのしくなさそうだったよ」

 と、二里美祢が答えた。


「……あの彼女といる方が楽しい?」

「だから、彼女じゃないよ」


 僕がそう答えると、二里美祢はニヤリと笑った。


「ほら、そっち持て。部屋に運ぶよ」


*****


「いいよ。俺の奢り」

 帰りのフロントで僕が財布を出すと、牧島岳がそう制してきた。


「え、でも」

 僕がそう言うと、牧島岳はさっさと支払いを済ませてしまった。それはいつもの事らしく、みんなは「ゴチ」「ありがと」などと、極めて軽い調子でそれぞれが謝意を示した。


「あ、ありがとう」

 僕も、牧島岳にお礼を言う。ドリンクバーとカラオケ代だけとはいえ、中学生には決して少ない出費ではないはずだ。


「おう。また来ような、堀田」

 まるで気にも止めていない様子で、牧島岳はそう言った。





 

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