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神殺しの復讐記  作者: 遊楽
序章 終わりから始まりへ
7/9

救出、そして帝王

7話目

>ドルグの森<




 昼頃に村を出たものの森に入り時間が時間が経つにつれあたりが暗くなってきている。

 広大な森を探索するにはあまりにも足りない。

 依頼上、調査だけでもいいと約束した以上、セイラさんの夫である人物が殺されてしまった場合恩を返すことができなくなってしまう。

 10日も経過しているとなると捕まってい場合、既に殺されていたらその場合はどうしようもないとしか言いようがなかったができれば助けたい。

 

(いや、拠点を見つけるなら夜の方が見つけやすいか)


 夜であれば、拠点の明かりが目立つはずだ。

 ゴブリン、オークには〘暗視〙のスキルがあるため明かりは必要ない。

 だが拠点ともなればスキルを使い続ける労力を割かずに松明を使用するのだ。


 夜を迎え暗くなったのを確認し、見当たる限りで一番大きな樹木の頂点へ向けて跳躍する。

 辺りを見渡し、少しでも明るい箇所を探してみる。


(あそこだな)


 遠方でぽつんと淡い橙色を光る箇所を見つけ、そこが何らかの拠点だと確信する。

 方角を見定め、いま居る樹木の頂点から思い切り跳躍する。


 魔力を脚に込め、目的地付近の樹木の頂点で音もなく着地し拠点の様子を伺う。


―2人の人間がゴブリンとオークの宴のど真ん中に放り出されている所だった。


「あれは殺されるだろうな。」

『魔物の知性でも人間を甚振る趣味があるのだな。』


 ガルヴは感心したように見ているが、かく言う自分も違う視点で興味があった


『助けぬのか?あれらがレムの父かもしれぬのだぞ』

「レムの父親であれば助けたいが、わからないからな。それと人間が追い詰められ、殺されそうな時にどんなことを思うのかを見てみたい」

『アルマも性格が悪いな』

「そうかもしれないな。だが助ける価値があるのかを見極めたい、というのが本音だ。」


 そうこうしているうちに2人のうち片方が掴まれ、槍を股下へ当てられている。

 あれで串刺しにするつもりなのだろう。


 そして串刺しにされそうな男が叫ぶ。


「死にたくない!!!ラーズ!!!助けてくれよォ!!!友人じゃないか!!!」


 ラーズ、村を出るときに門番をしていた民兵に確認したエイラさんの夫の名前だ。

 であればもう一人がエイラさんの夫なのだろう。

 助けようとした時に続いた男の言葉は俺を不快にする言葉だった。


「…あああああ!!!!!!!裏切者!!!助けろ!!!誰でもいい!!!助けろォォォォ!!」



「ハッ!助けるもクソもないだろうに。この状況で動けと言っているこいつの頭には助かろうとする手段しか浮かんでいないようだな。」

『恐怖というのは心を狂わせる。仕方のないことだろうよ。あの絶望は美味そうだな。びーふしちゅーとやらの味はアルマの味覚を共有したがなかなかの美味だった。だがやはり我も実物、実体ある血肉を食らいたい。あやつの死体は我が食いたいものだ』


 ガルヴは既に俺があの男を見捨てることを察しているようだった。


「食らうといってもどうやって食べるつもりだ?」

『刀身化して斬ればよい。あの魔物共も我がもらいたいのだがいいか?』

「相棒の頼みなら聞かざるを得ないな。」

『ククク!魔物は殺さないのではなかったのか?』

「ラーズさんを助けたら敵意を向けてくるだろう。くだらない理由で敵意を向けてくるのであればそれは殺すべき敵だ」


 そう、魔物は問答無用で殺しはしない。

 しかし、あの時の狼のように子のために生きようとする魔物でもなく敵意を向けてくるのであればためらいなく殺せるだろう。


 次の人間にオークが手をかけようとしている。

 そろそろお邪魔するとしよう。


 ラーズさんを掴み上げるオークへ向けて、先ほどと同じように跳躍する。

 飛び移った時のように着地の衝撃を消す必要はない。

 脚を守る魔力膜だけ生成し、オークに激突する。



―それだけでオークは木っ端微塵に消し飛んだのだった。



=====================================


>ドルグの森 ゴブリンオーク共同基地<

 


(相当な数を減らせたな)

『おいアルマよ。直接斬らねば我は食えないのだが』


 不満そうな声で語り掛けてくるガルヴ。

 最初からそう言え…という心の声は表層心理には出さず、串刺しにされている男に近づく。

 串刺しにされ、日に炙られているがまだ息があるようだ。


「ちょっとでも俺の心に響くような言葉をあの状況で言っていれば助かったのにな」


 ラーズさんには聞こえないように小声で呟いてから男の首を切り落とす。


「なっ、何を…!?」


 ラーズさんが悲痛な声をあげる。


「あの出血量と火傷では助からなかったでしょう。ですので楽にして差し上げた所存です」

「助かったかもしれないだろ…!」

「私は無理だと判断しました。あのまま村までの距離、1日2日耐の帰路を耐えきれるとお思いですか?」

「それは…」


 察しはしていたのだろう。

 だが、目の前で友人を殺されてはあの言葉を言ってしまうのも仕方がいない話だと思う。


「すまなかった…それにしても君は…?」

「あなたの奥さんであるエイラさんから依頼を受けた旅人です」


 旅人

 それは国や冒険者組合、ギルドへ所属せず様々な場所を冒険する職業のことだ。

 冒険者組合のように国からの制限もなく、ギルドのように拠点を持たない。

 自分の立場的には旅人が一番しっくりくる。

 門番の時もそう言えばよかったかな?


「エイラが…」

「まぁそんなことよりほかの方々を開放して村へ逃げてください。どうやら奴らの()ス《・》がいらっしゃったようなので」

「………え?」


―――ズシン…ズシン…


骨と脳に響くほどの揺れ、そして威圧感。

ラーズさんは振り返えっていないが、どんな化け物が近づいてきているのか察しているようだった。


「豚鬼帝王《オークカイザー》か?王国の警戒もザルだな。こんなのが王都にでも来たら並の冒険者でも手に負えないだろうよ。」


 豚鬼帝王(オークカイザー)はA⁺級の魔物でオークの体よりも5倍近くの巨体を持ち、作り上げた軍を統率するほどの力と知性を持つ。

 魔力も多く、魔法を使用する個体も発見されたこともあった。


「力試しにはもってこいの相手だ。ラーズさん、早く先ほどお願いした行動を起こしてください」

「君はどうするんだ!?相手は豚鬼帝王(オークカイザー)なのだろう!?全員で逃げるべきだ!」

「全員で逃げて助かる保証はないでしょう?私が時間を稼ぎましょう」


――時間稼ぎとは言ったが確実に殺すつもりでいるんだが


「君は!?豚鬼帝王(オークカイザー)に勝てるわけがないだろう!!」


 もし一緒に逃げたとしても追ってくるだろう。

 その際に犠牲者が出るのは目に見えてわかることでありその上、村の位置まで把握されて志う。

 それでは次の標的は村に定められてしまうだろう。

 

「時間を稼ぎますよ」

「わかった…必ず生きていてくれ。森を出たらすぐに救援を呼んで戻ってくる!」

「ええ、死ぬつもりはありませんので。もし生きてたらまたレムに料理でも作ってもらいましょう。約束ですよ?」

「…っ…あぁ!」


 牢屋の方向へと走っていったラーズさんを見届けながら、近づいてくる獲物へと視線を向ける。


「ククッ、よかったなガルヴ。ゴブリンやオークなんて目じゃないほどのご馳走じゃないか」

『あぁそうだなアルマよ。これだけのご馳走だ。残したら罰が当たるな』


 森の方からぬっと顔を出した《メインディッシュ》を見て、笑いあう。

 出てきた巨体は憎々し気に俺を見下して


「オレの子供たちを殺したのはキサマのようだな」

「流石は豚鬼帝王(オークカイザー)、言葉を話し理解する程度の知性は持っているようだな。そしてその答えはYESだ。お喋りも何だし早く殺し合おう」


 挨拶代わりに魔力をまとわせた刀から斬撃を放ってやると、豚鬼帝王(オークカイザー)は手に持っていた大剣で斬撃を防いだ。


――ギィン!!


 硬質な金属と金属がぶつかり合うような音を立てたが、豚鬼帝王(オークカイザー)の大剣は欠けてすらいない。


「結構魔力を込めたはずだがいい武器を持っているな。殺すつもりで撃ったんだが欠けてすらいないとはな」

記憶金属(メモリタイト)で作られた剣だ。20年も使用し続けている。」


 記憶金属(メモリタイト)は幅広い使用用途がある希少金属だ。

 その周囲で起こった事象を記録し、高度を高めていくことからついた名前だった。

 映像記録、入国管理、武器に使えば成長する剣。

 使用用途が多いか埋蔵量があまりにも少なく、貴族から見ても喉から手が出るほど欲しいものなのだ。


(20年ってことはかなり育っているな…成長する剣など俺も欲しいぐらいだな)

『ほう、浮気というやつか。我がいるのにも関わらず他の武器を欲するとはな』


 拗ねたようなガルヴの声が聞こえるが無視することにしよう。

 考え事をしていると焦れたのか豚鬼帝王(オークカイザー)が声を上げる。


「オレのナマエは《闘士(グラップラー)》イゴーロナクだ。先ほどの斬撃を放つキサマには敬意を持って全力でお相手をしよう」

「驚いたな。〚ジョブ持ち〛とはな。生憎こちらは|無職《ノージョブ》だ。だが名乗られた以上、敬意を表して名は名乗らせてもらおう。アルマ=ノブルだ」


 名乗り合いは終わった。

 あとは死力を尽くして殺し合うだけだ。


「では行くぞ、イゴーロナク」

「かかってこいアルマ=ノブル」



――言葉を交わし合い振るった剣と剣がぶつかり合う



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