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神殺しの復讐記  作者: 遊楽
序章 終わりから始まりへ
6/9

牢屋、そして絶望

6話目


セイラの夫―ラーズ視点ですね


今回は若干グロめ?ですかね

>ドルグの森 ゴブリンオーク共同基地―牢屋<


 何故こんなことになったのか。

 ポル村の民兵は弱くはない。

 1人で3匹~4匹のゴブリンを相手にでき、オークであれば1人でも打ち倒せるほどの実力者が今回の殲滅作戦に参加していたのだ。


 だが、蓋を開けてみれば完敗。

 森に入り周囲の警戒を怠ったことはなかったのだが、ゴブリンオークの拠点を見つけて気を引き締めようとした時には既に数十匹、最低でも50以上のゴブリンに囲まれていたのだ。

 しかも、1匹1匹の戦闘能力が高く連携するような動きに翻弄され、1人また1人と倒されていき全員が捕まってしまった。


 戦闘不能になった民兵達をゴブリンは殺さずに拠点に持ち帰り、監禁した。

 最初は理由も判らなかったがその日の夜に全てを理解した。



――宴で民兵達を生きたまま、槍を股下から串刺しにして炎で炙り始めたのだ。



 串刺しにされた民兵はまだ生きているようで、炎から逃れようと暴れだす。

 それをうっとおしいと思ったのか、1匹のオークが串刺しにされた民兵を殴りつけた。

 ピクリとも動かなくなった人間を見て魔物達は心底楽しそうに笑い声をあげる。

 そして最後に炙った民兵をバラして食べるのだ。



 監禁された場所からはその様子が見えるため、民兵達は次にあのようにされることを怯えずにはいられなかった。

 毎日2~3人あの地獄で殺されるために牢屋から引きずり出される。

 中には生き延びるために身代わりとして他の民兵を差し出そうとする人もいた。

 だが、連れ出す係のオークは身代わりを無視し、差し出そうとした人間を体を包み込むほど大きな手で掴み取り連れて行った。


 これを地獄と言わずなんというのだろうか。

 死を待つだけの民兵達にはもはや希望はなく、その牢屋では絶望が蔓延していた。


「エイラ…レム…」


 愛する妻と娘の名前を口にする。

 その時、ギィ…という音と共に鉄製の格子が開いた。

 どうやら今日も生贄を連れ出そうとしているようだ。


 不意にオークと視線が()()()()()()()

 そのオークはニヤリ、と笑ったのだろうか…

 そのままこちらに近づきて私を右手で鷲掴みにした。


「…ぁァ…ああああああああああぁっぁぁあああ!!!!!嫌だァ!!!!!」


 必死の抵抗をして暴れようとするが、オークの握力を前にビクともせず全く動けない。

 暴れる人間を黙らせようとオークが握力を強くする。


「…ガッ…!ゴボッ…!!」


 肺から空気が抜け、内臓が傷ついたのか吐血をする。

 そんなことは構わず、オークは左手で別の民兵を鷲掴みにした。

 私と同じように抵抗するがそれは叶わない。


 2人を連れて牢屋から出たオークは宴の真中へ2人を放り投げた。

 投げ出された自分に集中するあまりにも邪悪な視線が身を震わせる。


 槍を持ったオークが再度左手で人間を掴んだ。

 私ではなくもう一人の人間の方だ。


「死にたくない!!!ラーズ!!!助けてくれよォ!!!友人じゃないか!!!」


 村で仲のよかった友人―ログルドが私に助けを求める。

 だが、どの道ここから逃げるすべもログルドを救う方法もない。

 私は動くことができなかった。


「…あああああ!!!!!!!裏切者!!!助けろ!!!誰でもいい!!!助けろォォォォ!!」


 悲鳴を聞き飽きたのかオークが股下から槍を突き入れる。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!イダイッ!!!イダッガッ!!!!」


 その途中で口から槍の切っ先が飛び出る。

 喋れなくなったログルドは私に憎悪の視線を向けてくる。


 オークは槍を地面に突き立てそのままログルドを火で炙る。

 苦痛にまみれながらログルドは恨みを込めた視線を訴えかけてくる。



――次はお前の番だ、と



 オークが近づいてくる。

 絶望はすぐそこだった。

 逃げることも抗うこともできない。


 鷲掴みにされた私は生を諦めていた。



 ―槍の切っ先が股下に当たる。



――このまま串刺しにされて同じように炙られるだろう。



―――だが



――――その中で妻と娘の笑顔が浮かんできた



「セイラ…レム…すまない…」



 オークが笑みを強め、力を籠めようとした時。





――ラーズを掴んでいたオークが木っ端微塵に弾け飛んだ。





「え…?」


 木っ端微塵になったオークの血を浴びながら地面に放り出され、呆然とする。


 オークがいた場所には返り血一つ浴びていない青年が立っていた。


「胸糞悪い。先ほどの醜い人間もそうだが醜い生物っていうのは生きている価値がないな」


 周囲を見渡しながらそう言い放つ青年の表情は、憤怒に燃えていた。

 そのまま何かを呟くと、何もなかった右手に1本の刀が握られている。


 その刀をこの場を囲っていたゴブリン、オークたちの一角へと一閃させると、その方向にいた魔物達の体が永遠に別れを告げる。


 そして青年は魔物達へと吠える。


「奪ったからには奪われる覚悟はできてるんだろうなァ!!」


 青年を中心に魔力の渦ができる。

 立ち昇るオーラを見て、ラーズは


(竜…?)


 オーラの形が一瞬竜を象ったに見えたのだ。

 力量差を知覚できない魔物達は一斉に飛びかかるが、間合いに入った途端一瞬でミンチに成り果てる。


(私は何を見ているのだろうか…)



 視線の先で怒りのまま戦う青年から、私は目を離せなかった。


評価していただけると幸いです。

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