評議会、そして《魔物》
3話目
初戦闘ですね
>封印の祠<
スゥゥゥゥゥ…
外の空気を吸うのは何年ぶりだろうか。
洞窟のようなこの場所での密閉した空間でも空気が美味しく感じられた。
チョロチョロと壁から零れ出る水のせいか空気ひんやりとしていて気持ちがいい。
火照った体が冷やされていくのを感じた。
「で、ここはどこなんだろうな」
『ここは祠のように見える』
辺りを見渡してみる。
狭いとも広いとも言えない空間。
だが、あの結界が収納できるような広さではないことは確かだった。
『あの結界内は次元がが違うのだ。空間など関係はない』
「そういうもんなのか」
『そういうものだ』
次元とか言われても全く分からんな。
とりあえずはここを出なくては。
そこでふと気になったことがあった。
「俺は封印されたのはわかっているが、ユイの遺体はどうなったんだ?俺が意識を失った後のことでもお前なら知ってるんじゃないか?」
『覚えておる。アルマを封印する前にお前の祖父が遺体を結晶化させ保存しておったわ。なんでも「アルマの大切な人じゃ。せめて美しい方法で弔ってやらねば」とか言っておった。恐らくはそのまま魔力爆発の中心にあるであろうな。』
「…そうか」
祖父には感謝しなくてはならないな…
どこかで恩を返さないといけないと胸に刻んでおこう。
恩には恩をもって報いる。
ユイもいつも言っていたな。
「ここからでたら行くところが決まったな。」
『クク、そういうと思ったわ』
まずはユイの墓参りに行き、今後の方針を決めていこう。
そう考えゆっくりと出口へ向かい歩みを進めた。
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>グランダリア王国 評議会<
「なんだとッ!!!!?」
議員の一人の驚愕した声が広い部屋に響き渡る。
驚愕した原因は魔術卿―アルマの祖父ロガルによる報告だった。
内容はかつて《竜蹄》を起こした魔物の封印が破られたことだった。
封印の管理者であるロガルは破られたことをいち早く察知することができ、議会への緊急招集を呼びかけたのだ。
「然り。儂も驚きを隠せぬ。どのように解除したのか、それすらも判らぬのでな。」
「再度あの厄災が起こったらどのように責任を取るのですか!!ロガル殿!!」
「……であれば其方があれ以上の封印を用意すればよかったのではないかね?」
「…グッ!」
王国にロガル以上に封印、魔術に長けたものはいない。
比肩を許さないほどの魔術師、故に魔術卿を授かっている。
そのやり取りを見ていた別の議員が呆れたように声を出す。
「責任追及などこの場でしている場合ですか。今はどのような対策を取るかを話し合うべきでしょう。」
「対策などどのように取るつもりだ!!化け物は既に解き放たれているのだぞ!!」
「冒険者、騎士団を―――」
ロガルの意識は議会には既に向いていなかった。
報告は行った。
ここからは国が行動を決めればよい。
それよりも…
《次元隔離封印》をどのように破ったのか。
外側から干渉されたのか、あるいは内側から破られたのか。
外側からなら誰が、そして目的は。
(アルマは儂を恨んでいるだろうか…)
最愛の娘の子。
かつて、「おじいちゃん」としたってくれていた孫を《竜蹄》の原因として封印し、王国へは魔物であったと報告を行った、
封印したのは間違いだったのではないか。
戦争の最中動けぬ身では確認をしに行くことすらできない。
ロガルは苦悩し続けるのだった。
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>原初の森<
「クシュンッ…!」
『風邪か?人間は体調を崩しやすい。気をつけよ』
…ガルヴのやつ心配とはなかなか可愛い奴だな。
『こちらにも体調の不快感が来るではないか。感覚は共有されているのだから我のみにもなれ』
…前言撤回
そういえば俺のステータスはどうなっているのだろうか。
などと駄弁りながら進んでいくと進行方向に光が見えた。
ようやく外に出れるようだ。
光の方へ歩みを進めていくと光が網膜を刺激し、目を細める。
光に慣れていくとそこには見渡す限りの木々、森林が広がっていた。
「どこだろうなここ」
『魔力感知で調べたところ、ここはアルマが住んでいた村より南に行ったところの《原初の森》と呼ばれていた場所だな』
《原初の森》――Bランク以上の魔物が闊歩している危険地域に指定され、冒険者も立ち入ることが少ない森だ。
更に南へ進むとギラガ山脈がありその先には《エルフェリア精霊王国》がある。
まぁそれは今はどうでもいい。
「つまり北に進んでいけばユイの墓に行けるわけだな」
『そういうことになるな。このまま真っすぐいけば目的地に着くであろうな』
「そうと決まれば」
舗装された道があるわけがないので、道なき道を進んでいくことになる。
かなり面倒なはずだが、俺の足取りは軽かった。
――ユイにどんな話をしようか。
――姿はないが友達のようなものができたと報告はしよう
そう考えながら森の中を歩いていく。
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『…!』
何かに反応したようなガルヴ。
その雰囲気から周囲を見渡してみる。
木々が風で揺れる音。
草が揺れる音。
鳥の鳴き声――がしなかった。
不自然に揺れた大樹の枝の方向を見る。
「GRUAAAAA!!!!!」
「ッ…!!!」
そこから飛びかかってきた魔物を転がるようにして避ける。
姿を現した魔物は父さんが昔見せてくれた魔物の映像で見たことがあった。
孤高の狼
群れを成さず、それでもB⁺ランクに認定されるような魔物だ。
その牙爪は簡単に人の肉を引き裂き、骨を砕く。
『獣風情が我に楯突くとはな』
孤高の狼は涎れを垂らしながら俺を観察している。
魔物の感情はわからないがかなり腹を空かせているのだけはよくわかった。
そして孤高の狼が再度飛びかかってくる。
一度目もそうだったが何故かそこまで危機感がわかない。
ガルヴと同調しているからだろうか。
噛みつこうとしている孤高の狼に対して腕をかざした。
骨をも砕く牙が腕に噛みつき血が出るはずだった。
――孤高の狼の牙は皮膚にめり込むこともなく、硬質な音を発し牙の侵入を防いでいた。
「人間じゃなくなってるな…」
孤高の狼が噛みついたままの腕を上へ振り上げる。
勢いに耐え切れず宙に浮く。
空中から落ちてくる孤高の狼に対し、横なぎで蹴りを入れる。
孤高の狼は蹴鞠のように地面と平行に飛んでいき、出てきた大樹にぶつかった。
ゴパッっと血を吐き出しながら痛みに苦しむ孤高の狼にトドメを刺そうとした時だった。
大樹の陰から小さい子犬のような魔物が飛び出し、俺の足に噛みついてきた。
全然痛くない…。
そこでふと自分が仕留めようとしていた孤高の狼に目を向けた。
――こいつの子供か
殺されそうな親を守ろうと、必死に噛みついてくる子供たち。
それを見た俺は自然と孤高の狼に手を伸ばしていた。
トドメを刺されると思ったのか孤高の狼がグルルルルと唸りをあげる。
「…安心しろ。トドメは刺さない。《中位回復》」
俺が唯一使える魔法。
ユイの病気を治すために必死で覚えた《回復魔法》だ。
救えなかったが、このような時に使えるのはあの時必死になったおかげだろう。
「時間が経てば起き上がれるようになるだろう。戦う相手は選べよ?」
そういいのこしてその場を去ることにした。
親がいない子供ではこの森の環境で生きていくのは難しいだろう。
魔物は本能で生きている。
人間のように損得勘定で人を襲ったりしているわけではない。
敵意を向けられたからと言って殺すのはどうだろうか。
神を信じている輩を排除してくれる可能性もある。
であれば殺す必要はない。
――では、もし襲ってきたのが人であったなら……?
思考を止めずに遠ざかっていく俺の背中に3つが刺さり続けるのであった。
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