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悪夢の実験場  作者: 焼き芋さん
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うまい話には裏があるものだ


――――――――そして夜中―――――――――


 僕はふと目を覚ます、すると隣の部屋から何やら会話が聞こえてくるのだ‥


(やっぱり、夜神さん以外に、誰かいるのかな?)


 そう思いながら、壁に耳を付けて会話を盗み聞きした。


「グオオォォォォォォッ」

「良かったな弟よ、今日はご馳走だぞ!」


(お兄さんの声、あの不気味な泣き声の存在と会話しているの?しかし弟?)


 不振に思った僕は、さらに壁に耳を立て、聞き続ける。


「良い肉が入った、いつもどおり俺が調理するから楽しみにしていてくれよ!」

「グオオオォォォォッ!!!!」


 いつも通り?いったいどういう事なのだろう…不気味な声の主は何やら嬉しそうだった。


「おい、声でかいって!聞こえるだろ!」

「グォォッ‥」


 化け物のような声の主と、夜神さんの会話に僕は物凄く不安になってくる。

 肉とは自分の事で、調理されて食われるのかとすら思えてしまう。

 いや、こんな常識の通用しない世界ではそれすらあってもおかしくない。


(駄目だ、ここにいたらきっと‥)


 バレずに逃げ出すなら、この部屋の窓を使うしかない。

 僕は部屋の窓から外に出て、裸足のまま走って逃げ出した。


 廃墟しかない村は暗くて明かりも無く、方向も何処に向かえばいいのかわからなかった。

 いま自分がどれだけの距離を走ったのかもわからない。

 走っても走っても、薄明かりのついた家は他にはなく、村の出口すら見付からなかったのだ‥。

 無限に続く廃家を見ながら少年は走り続ける、しかしどこまで逃げても家は立ち並び出口は見えてこない‥


 その時だった‥


「おい!何勝手に逃げ出してんだ!てめぇ!!」


 それはさっきのお兄さん、夜神一郎だった。

 しかし顔は怒り狂い目が血走っていて、欠陥も浮き出ていてその様子はまるで別人のようだった‥

 先ほどの優しい態度はすべて演技だったのだろうか?


 さらに彼の横から、人型をした真っ赤な生き物が現れる。

 その姿は架空のホラー話で登場する「赤鬼」と呼ばれるものだった。


 上半身裸で筋肉の塊のようなマッチョな身体、パンツはトラの模様のトランクスを履いて指先には長いツメが生えていた。

 そのツメは長く、まるで短剣のようにすら見える。おそらくあんなのでひっかかれたら真っ二つにされてしまうに違いない。

 僕は鬼の姿が怖くてたまらなかった。


「グオオオオオオォォォォッ!!!」


 赤い鬼は吼えながら、涎を垂らしてこちらを見つめてくる。

 腰を抜かしそうになりながらも、僕は何とか転ばないように踏ん張った。


(何だよあれ‥鬼って本当にいるの??)


 僕はそんな事を考えながら逃げ出して、近くの廃家に隠れる。

 廃家には鍵もかかってなかったのですぐに入れる事が出来た。


「畜生!あのクソガキどこに行きやがった!!おい出てこいコラァ!!!」


 お兄さんはまるで別人のような恐ろしい表情で口調も変わっていた。


(あの人も鬼なんじゃないだろうか)


 と僕は廃家に隠れながら思っていた。


 しかし‥


「舐メルナヨ‥小僧」


 地の底から這い出るような低い声だった…

 後ろを向くとそこには、あの鬼がいて、少年の右肩に激痛が走る。


「ひゃぁぁあああっ!!!」


 情けない悲鳴をあげながら自分の右肩を見る、すると肩からは、ボタボタと血が溢れていて鬼に食いちぎられていた。

 傷口からはグロテスクな断面図と、骨が見えていた。


(痛い‥駄目だ‥右手が‥動かない‥)


 腕がだらーんと下がり、動かす事が出来なくなる。

 出口を見ると、先ほどのお兄さんに塞がれていた。


「こっちは塞いだぞ弟よ!計画通りにはいかなかったが、存分に味わってくれ!」

「グォオオオオオオオオ!!!」」


 廃家の中では泣き叫ぶ少年の声と、嬉しそうに肉を食らう鬼の鳴き声だけが鳴り響いていた‥

 僕は鬼に、全身を食われて、そこでおそらく死んでしまったのだ。

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