不気味な場所には見た事もない生き物がいた
猛獣の体当たりはいつ終わるのだろうか‥
僕はそんなことを考えながら閉じ込められた揺れる部屋で落ちつかぬまま休んでいた。
そしてそのまま、24時間という長い時間が立つのを待ち続けていた。
猛獣が疲れるのを待ってみたが奴はまったく疲れる様子はなく、本当にただの猛獣なのかという違和感さえ覚えてしまう。
あんなものがいる場所に自分が落ちればどうなるか、想像しただけで僕の身体は震えが止まらなくなった。
きっとあの鋭いツメで胴体を真っ二つに斬られて、あの牙で噛みつかれ食われて終わりだろうと想像出来る。
そんな事を考えながら、眠る事も無く時間だけが過ぎていった‥
―――そして、24時間がたった――――
「え?」
タイマーが0になった途端、壁に人が一人通れるぐらいの穴が出現した。
だから僕は出口だと思い、すぐにその穴の中へ飛び込んでいったんだ。
穴の向こう側はまた同じ景色、しかし、僕が通り過ぎると穴は消えてしまったのだ。
「ねえ、ここから出してよ!誰か見てるんでしょ!?助けてよ!」
僕は叫んで助けを求めるが、何も反応がなく、それどころかまた24時間タイマーが現れた。
「ピー!ピー!ピー!」
スタートの合図とともに、またタイマーの数字が動き出す。
(また、タイマーが0になるまで待つしかないの?)
部屋を見渡すが、前回と同じに見えるものの、先ほどのように揺れる事は無かった。
(今度は猛獣はいないのかな?)
少年は穴の中を覗き込んでみた、しかし、今度はまったく違う生き物がいて全身の鳥肌が立つのを実感する‥
「うわあああああぁぁっ!!!」
正直言って、穴を覗き込んだ途端、全身の毛が逆立って、ぞわっとした‥
全身が冷たくなるような、背筋が凍るような感覚に陥った‥
何が居たのかというと、そこには人間よりも大きなナメクジのような生き物がいたのだ。
それが元気そうに地面を這っているのだ。
僕は直感で、あのナメクジのような生き物も人を食うものだと理解した。
動きはノロそうで、今のところ穴の上まで上がって来れそうな気はしない。
しかしあの大きさだ、人を食うぐらいの事は出来るだろうと確信した。
約2時間が立ったころ、僕の疲労は限界が近く、眠気も限界に達し、とうとう倒れこんでしまう。
僕はあの動きの遅そうなナメクジなら、少し眠っても襲って来る前に気付けるのではと、目を瞑り眠りについた。
そして、何もする事無く時間が立つのを待ち続けた。
―――そして――――
体がおかしい、どうやらお腹が痛む‥ズキズキと‥
その激痛で僕は目が覚めた、まるでお腹の中から何かに吸い出されてるような気がする‥
目を腕で擦って自分の腹を見ると、そこには見た事もないグロテスクな触手がくっついていたのだ‥
しっかりと目を開けて前を見ると先ほどまで大穴の中にいたナメクジの化け物が触手を僕の腹まで伸ばし、それがお腹を貫通し血を吸っていた。
「ひいいいぃっ!!!」
僕は叫びながら触手を引き抜いて、逃げた‥
「誰か、誰か助けてぇぇぇえっ!!」
血が垂れるお腹を押さえながら僕は逃げ回った。
ナメクジの動きは遅く、小学生の僕の足でも十分逃げ切れる速度なのが救いだった。
きっとこのナメクジは、僕が寝ていた間に壁を登ってきたに違いない。
僕が寝たのを見計らって、壁を登って血を吸いに来たとしか思えない。
つまり、目の前のナメクジの化け物には「知能がある」と感じた。
それも含めて、僕には、この存在がとても不気味な存在に映っていた。
眠ればまたそこを狙われるので、僕はナメクジから残りの1時間、逃げ続けた。
血をどれほど吸われたのかわからないが、走ると体がフラフラする。
やがてタイマーは後30分になり、少年は逃げて逃げて、ようやく0になった。
すると、また壁に穴が開いた。
少年はこの場からすぐに逃げ出したくて、その穴へすぐに飛び込んだ‥