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深淵のエレナ  作者: ロサ・ピーチ
第一章 悠久の時を超えて
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第十八 相性は最悪

これまでエレナの時折見せる不可解な事象。


それは彼女のマナに秘密があったというのか・・。

彼女は特別だ、それが全てマナのせいであるとは到底思えない。

アシュベルは冷静に振り返ってみた、それだけでは語りつくせない彼女の際立つ才覚。


しかしその一端を担っているのがマナならば

こんな小僧に言われずとも自ら気付きたかった・・。


「それは俺にも感じることができるのか」

「やってみたことはないですけど、この目使うのに割と精神力使うんですよ。」

なるほど、確かにリュカの額にはいつの間にか玉のような汗が出ていた。


二人には言わなかったが、エレナのマナを直視していると躊躇いが生じる。

彼女のマナはまるで異質、普通は球体の陽だまりのような優しい印象の色合いなのに対し、

小さな球体を激しいスピードで何かが周囲を回転している。

それはリュカがいくら目を凝らしても色すら特定できない程だ。


これは何が起こっているのか、こんなにも不安定なマナは初めてだ、そして異様に密度が濃い。


マナの中で奪い合っているような、暴走が起きている、・・?でもエレナは平気そうだし。


自身の答えが纏まらないでいると、アシュベルが痺れをきらし、リュカを急かす。


「ヒメちゃんの一大事なんで早めにお願いしたいんですけど。」

言葉は丁寧だがアシュベルの表情を見なくても苛立って居るのは分かった。


リュカが慎重に言葉を選ぶ。

「瞳の共有ってやつです、でも僕とアシュベル様って相性最悪なんですよ・・・」

「マナ・・か」

アシュベルも即座にその事に気付いた。

リュカは水の魔力、アシュベルは火の魔力。これはかなり厄介だ。

魔力の本質だけではなく体質や性格まで相反すると云われている。

そして、二人とも魔力が通常の人よりも強い、反発する力は更に高まる。


「リュカ、お前には済まんが、どうあっても俺はヒメちゃんのマナを見ておかなければならない。

で、俺はどうすればいい?」

そう来ると思った・・リュカは覚悟を決めて瞳に集中する。

「僕の腕に掴んでください、絶対離さないように。」

「・・了解」

アシュベルがリュカの腕を掴み、リュカがマナを再び覗こうとした。


バチバチッ!


やはり想定内ではあるが、二人の魔力が激しく反発しあって上手く覗けない。

お互いの魔力が拒否反応を起こしているのだ、これは至極当然のこと。

だが、今はそれを乗り切らねばならない。

アシュベルの腕はまだリュカの腕を掴んでいる。

リュカ、悪いな・・何が起きても彼には離す気など毛頭なかった。


一方リュカも覗かせてやると言った手前引き下がる訳にはいかなかった、

このエレナに一番近い男、アシュベルに。

僕の力で覗かせてやる・・。


だが最悪な相性がぶつかれば只々猛烈な拒絶反応が痛みとなって帰ってくるだけ、

しかもそれを続けていれば体力も精神力もどんどん削られていくのは明白だった。

「・・・っ」

それでも、どちらも辞めようとはしない。


なにか違うゲームに突入しているんじゃないか、これは。

土埃が二人を中心に巻き上がり、魔力が熾烈な拒絶反応を起こする度、爆風が湧き上がる。



「・・・・・」

エレナは静観していたが、何を思ったのか「えいっ」とアシュベルとリュカの腕を掴んだ。


「あれ・・・」

二人の男が静けさに気付く。

拒絶反応による痛みがまるで嘘のようにない。

この手、このエレナの手が加わったからか?

彼女は闇の魔力の持ち主。それが加わっただけで?

違う気がする、けれど今は。


「見えた?」

エレナが二人をそれぞれ見て言う。

それにつられてアシュベルとリュカが我に返り、エレナを視る。


「視えましたかアシュベル様」

「視えた・・・」

この状態だと自分のマナとリュカのマナ、そしてエレナのマナが視える。


これは・・。

なんと表現していいかわからない、これはマナなのか、そう疑いたくなる程の

マナの濃度。見ていて分かる不安定な存在。


リュカの限界が来て、離れてみたが。

二人にはエレナのマナの光景が目に焼き付いて離れない。

どう考えてもおかしい。しかし、彼女のこれまでの事象を考えれば全て

辻褄が合う。


「これは、まるでまだ完成していない星のようです・・」

リュカが額の汗を拭きつつ、自分の感想を述べた。

「それ、どういう意味?」

エレナが不思議そう質問する。

「エレナのマナは特別です、そして異質・・異質すぎるんです。僕としてはまだ完成されてないような

その途中の過程を見ているようです。形は違いますが、星が恒星になるまでに様々な過程を経て様々なものが混じり合う過程。・・・頭が追いつかないが、これをまとめると、」


アシュベルが真剣に耳を傾ける。


「僕の考えでは、エレナのマナは完成されてない、しかも今も不安定。」

そんな事が在り得るのか・・。

不安定でありながら、魔力を無尽蔵に引き出し、それを具現化する力を持っている。

そこから引き出されるのはたった一つ。

彼女の願わない暴走の危機。


そう。

彼女の暴発だ。


今は平静を保っているエレナだが・・・いつか彼女は正気を失ってしまうかもしれない。

その時俺は彼女をどう受け止めれば、どう止めればいいのだ。

アシュベルの心に焦燥が満ちる。


それはエレナが彼にとって大切な人になってしまった事を示している。

大切、それはアシュベルが彼女に主になって欲しい、と思った時からの感情。

だがそれはもうアシュベルにすら計れない程の重みになっている、まだそこに彼は気付いていなかった。



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