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【喜怒哀楽短編集】

翡翠色の池

作者: 姥妙 夏希

「行ってみようよ!!」


修学旅行の時、海の近くの崖に行こうと提案してみた。

ちなみに、そこはラブ・スポットでもあり、なかなか修学旅行の隠れ人気スポットだったのだ。


「イコッカァ」


そんな気の抜けた返事に「行く気ないのかよ!」とツッコみながら、ヒロ...うちの彼氏に抱きついて


「行く?」


と呟いた。

普段、そういう免疫がないヒロが赤面するのが面白い。ちょっとイジメちゃえ(笑)


なーんて、思っていると、ヒロが


「行くのかよ?」


と聞いた。

崖だし危ない、ということなのだろう。

だけど、そんなことで行かない私じゃなかった。


「行こうよ、折角だし」


甘ったるい声で囁いて、ヒロを赤面させてから皆に計画を伝えた。


消灯時間に、皆で抜け出して、スポットへ行く。

単純な計画に、皆ニヤニヤ。


私も、新しいカップルができないかなぁ...なんて密かに楽しみにしてるんだけどね。




ー消灯時間ー



センコーは、とっくのとうに酒を飲み始めてるだろう。

くすっと笑いあって、旅館を抜け出した。


「...ねぇ、みく、やっぱりこれ危ないよ」


ヒロが言った。


「えぇ、大丈夫だって怖がり屋さん」


笑って言うと、先へ進んだ。


「もう少しだって!先に行ったら?カップルだし」


笑われながら、ゆいに言われてその場で軽くパンチ。

それですむと思ったのに、いつの間にかヒロと二人きりになってた。

くっそ、あいつらめ....空気読んで...



「わぁ!」


目に飛び込んできたのは、崖の下にある小さなハート型の池だった。

白い石が周りにあって、キラキラ光っている。

翡翠色の、淡い緑色の池。月光を浴びて、とても綺麗だった。


近づきたい。近づいて見たい。


そう思って、崖を降りようとした。


「危ない!!」

私が反応するよりも早く、ヒロが動いていた。


私の手から鮮やかな赤色の花弁がヒロへと飛んだ。

崖が割れ、私が落ちかけたのを、ヒロが押して、防いで...。



時は皮肉にもゆっくり進んでいった。



ヒロが空気中に投げ出される。


全てを悟ったような顔をしている。


自分を見て、こっちを見て...










口パクでそう言った。


「待って...!!」


手を伸ばす。でも、もう届かない。


時間が戻った。


彼は翡翠色の、憎らしいぐらい神々しい、そして神秘的な池に飲み込まれていった。


夜が明けようとしていた。



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