その4 前半
休日は、専らゲームや漫画を見て過ごしている。
基本、学校の事は部活くらいしか考えない。
最も、 勉強を休日にまでもって入るとそれは最早休日じゃないと考えるたちだ。
そんな休日にも、やはり山下さんのことが気になるのは言うまでもなかった。
小腹が空いた。
と、何気なしにコンビニに足を運んだ。
夏直前の空気の中、むしむしした暑さに無気力な自分が重なった。
「・・・」
コンビニに行くだけでも、いつも通りなのは何か違う。
少なくとも、この空気を払拭できるような何かをしたい。
そう思い、いつもと違う道を通って行くことにした。
大きな川にかかった橋は、夕日を反射して橙がかっている。
ノスタルジックな雰囲気の中、足取りよく地面を踏みしめた。
確かに気分は良くなったが、魅力の無い自分の行動に、引っかかる変な心情は消えることがなかった。
コンビニの近くは案外都会風で、入り組んだ路地がいくつもあった。
暗く、影になっているその道は、なんだか危なげな感じがした。
閑散として妙に静かであったが、黄昏時の雰囲気に飲まれていた所為もあってか、全く違和感が無かった。
予定通りコンビニに入ろうと、町に踏み入った時、
路地裏に人の気配を感じた。
いつもの自分なら、スルーしてコンビニに入っていただろう。
ただ、今の自分は、いつもと違うものになっていた。
俺の足は、コンビニ方向から路地裏方向へ向きを変えた。
ヤンキーがたむろっているのかとも思ったが、こんなに過疎っている場所に出没するとは考えられなかった。
ただ、嫌な空気を感じたのは間違いない。
そして、俺の足は徐々に路地裏へ移動していった。
夕日がコンビニの窓ガラスに乱反射し、生暖かい空気が、不穏感を一層引き立たした。
「 ・・・おい。・・・・て・・・・よ。」
なにか叫び声が聞こえた。
耳に入ってきた瞬間、背筋が凍りついた。
心の中で、恐怖と好奇心がバトルを繰り広げている。
そんなこともつゆ知らず、俺の足は、ためらわずに歩みを進め続けた。
「・・・・っても・・・・だよ。・・・で・・・・と思ってんの?」
徐々に叫び声が大きくなっていく。
「………っ。」
「何か言ったらどうなのよ。自分が何したかわかってんの?」
「いや。」
「何?」
「私……じゃない。」
「はぁ?ここまできて、何言ってるの?話にならないわ。」
明らかに修羅場だ。こんな場面に俺が入れば、大変なことになるのは目に見えている。
しかし、この時、俺の聴覚からある疑問が飛んできた。
『この声、何処かで聞き覚えが……。』
ま、まさか………。
「や、、、山下さん?」
「ん?誰かいるの?」
しまった。思わず声に出してしまった。
驚きが、恐怖を超えてしまったのだ。
これは、取り返しがつかない。
ここで逃げても、色々と後悔するだけだ。
勇気を振り絞って、歩みを進めた。
路地裏の曲がり角をゆっくりと進んだ。
その先に見えたのは…………。