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第14章 レット・イット・ビー

 おかげさまで、1000PVを超えました。

 今後ともよろしくお願いいたします。

 別荘に行く日になったが、皆忙しくバタバタしており、宴会は見送りとなった。


 休みがないと文句を言う仲間もおらず、充実した毎日を皆楽しみながら仕事していた。

 本当にいい仲間たちだ。


 温泉がうまくいったら、皆で温泉三昧と大宴会を楽しもう、そう思っていた。

 新人十九人も、二週間たって組になじんでおり、加えて先輩たちの働きぶりに刺激を受け、負けずに頑張ってくれていた。いい傾向だ。


 そういや、次の新人面接が明日あると、ディックさんが言っていたな。


 この日、フレディさんからルーレットが注文数の半分、五台完成したと連絡があった。


 最初のうちは一台一ヶ月かかっていたが、慣れてきて早く作れるようになっていた。

 俺は残りの五台は急がないことと、これから取りに行くことを伝えてもらった。


 ハリスさんと新人を連れ、馬車で受け取りに行き、そのままパープル会に行った。


「おう、ルーレット持ってきたぜ。」


 ハリスさんが受付に伝える。

 しばらくして、グローバーがやってきた。


「ご無沙汰しております。ルーレットを持ってきていただいたそうで、ありがとうございます。」


 この人とペイスは口調が丁寧だ。長くディーラーを務めているからだろう。


「表の馬車ん中にあるから、取りに来てくれ。」


 ハリスさんが言うと、


「分かりました。今日はリュージさんもご一緒なんですね。」


 グローバーはそう言った後、受付に合図をし、従業員を馬車に向かわせた。

 ハリスさんが、一緒に馬車に行き、ルーレット四台を渡した。


 その後、俺とハリスさんは、グローバーに案内され、会長室に向かった。

 ルーレット貸し出しの正式契約をするためだ。


 部屋に入ると、ギラン会長とブラックモアが並んで座っていて、俺たちを待っていた。


「おう、ハリス、リュージ、ルーレットありがとうよ。まあ、座れ。」


 ギラン会長がにこやかに口を開く。


「はい、ご注文のルーレットが出来上がりましたので、早速届けに来ました。」


 俺は、ルーレット貸し出しで、パープル会がお客様になったため、幾分丁寧に答えて、二人の前に座った。

 ハリスさんは、ここでも座らない。

 ボディガード要るのだろうか。


「それで、貸し出すにあたって、契約を交わしたいので、サインをお願いします。」


 俺はそういって、ギラン会長に契約書を差し出した。


 ギラン会長は契約書を手に取り、ブラックモアと一緒に見ながら、確認している。

 一通り、見終わって、


「おい、なんで契約期間が一ヶ月更新なんだよ。」


 契約書は、ハリスさんが前に決めた通り一台当たり二万五千ケルンで四台の貸し出しという部分はそのままにしてあるが、契約期間について一ヶ月更新を条件に加えていた。

 ただし、問題がない場合は継続して更新することや、支払いも前金で毎月一ヶ月分を納入するよう書いてあった。

 これは、ルーレットを手に入れた後のパープル会の暴走を止めるための防衛手段でもあった。


「はい。ですが、問題なければ継続して貸し出す旨も書いています。これはメイデン組としては、今後とも末永くパープル会と仲良くやっていきたいという意思表示です。」


 俺はそう答えた。


「はっはっは。やるもんだ。ならしょうがねぇ。仲良くやろうぜ。」


 ギラン会長は豪快に笑ってサインしてくれた。


「ところで、リュージ、前にも言ったが、俺んとこに来ねえか?」

「いえ、前にもお断りしましたが、今もそのつもりはありません。」


 俺にはオリビアがいる。バラ色の未来が待っている。


「今なら、うちのウサギ全部お前につけるぞ。」


 ギラン会長がニヤニヤと笑っている。どうやらおれの弱点を見抜いたようだ……。


 大丈夫、俺にはオリビアがいる。頭の中でオリビアが笑っている。


「いえ、結構です。」


 かろうじて思いとどまる。

 ぼちぼち引き上げよう。


 それではそろそろと言って席を立つと、


「まったく、欲はねえのか。お前の欲しいものは何かねえのか。」


 ギラン会長がしつこく聞いてくる。


「欲しいものですか。そうですね。今ならウサギの服が欲しいですね。」


 隣でハリスさんが笑っている。


 俺はなんとなく、そう言った。オリビアが頭の中に残っていたからだ。

 バニーの恰好をするオリビア……良い、絶対良い。


「面白え冗談だ。ま、とにかくルーレットありがとうよ。」


 俺は会釈して部屋を出た。


 後ろからブラックモアが追いかけてきて、金貨三百枚の入った重たい袋をハリスさんに渡した。


「今月分だ。その金使って、うちで遊んでいかねえか。」


 そう言ってきたので、


「これからも仲良くしたいし、お客様を破産させるわけにはいきませんから。」


 俺がそう答えると、ブラックモアは首をすくめて、


「なるほどな。」


 そう言って笑った。


          ◆


 翌日ディックさんが、組員希望者の新人を九人連れてきた。


 男三人、女六人、女性の方が多かった。

 今回も趣味が良い。


 一通り話を聞き、今回も全員採用した。

 これで組は五十九人だ。


 練習室でルーレットが二台回っている。

 昨日余った一台を早速持ち込み、手の空いた仲間や新人が熱心に練習していた。

 追加注文で届いたホワイトボードには、皆の成績が書き込まれていた。


 エリック七十、ジェフ六十七、ジミー五十六、おそらく百回やって成功した回数だろう。

 俺は、皆の実力をおおよそ把握している。続いてロバート五十一、その下にサイモン四十八と書かれてあった。

 あいつも相当練習しているようだ。

 先が楽しみだ。


 その夜、皆の食事にうどんが出た。

 マーレイが、どうだとばかりに俺を見ている。

 見た目は本当にうどんだ。


 食べてみる……肉うどんだ。

 肉は入っていないが、出汁が肉うどんだ。

 美味い。

 久しぶりに食べた。

 泣きそうになる。


「マーレイ、美味いよ。俺の故郷の味だ。ありがとう。」


 俺は人目もはばからず大声で感謝を伝えた。


 次の日、オリビアが作り方を聞きに来たと、マーレイが教えてくれた。


 夜のうどんで力づけられた俺は、日帰りで温泉建設地に行くことにした。


 進捗状況を確認し、問題があれば早めに対応するためだ。

 前に確認してから一週間がたっている。


 朝は早かったが、オリビアは早起きしてくれ、俺の隣で、膝の上にケーキを載せて座っている。

 馬車は、最近入ったフリップが馬を操っている。

 お抱え運転手がついた気分だ。


 馬車を別荘に停めて現地に着くと、作業している人は二十人以上に増えており、ロジャーさんが大声で指示をしていた。

 俺は軽く挨拶し、オリビアと二人で邪魔にならないよう見て回るから、そのあと話そうとロジャーさんに伝えた。


 屋敷は土台が出来上がり、その上に頑丈そうな木の枠組みが載っていた。

 こうしてみると本当に大きいのが分かる。

 縦横共に五十メートル以上ありそうだ。

 設計図を見るだけでは分からないものだ。


 季節は冬になっていて、この地方では雪はあまり降らないとのことだが、それでも少し寒い。


 おかげで、オリビアが俺に寄り添い腕を絡めてくるので、寒いというより熱い……暑いではなく熱いのだ。


 オリビアの両手は俺の腕に絡まり、手が塞がっているため、ケーキは俺の右手に抱かれてフカフカしている。


 オリビアと腕を組んで見て回っているとき、俺たちの城だねと言うと、オリビアの絡めた腕に力が入り、俺は右手に抱いていたケーキを落としそうになって焦った。

 それよりもオリビアの大きな胸の感触に焦っていたのは内緒だ。


 すぐ隣の露天風呂は縄張りがされているだけだが、貯水槽の横で、組み上げられたひとつ目の水車が川の水を受け、ゆっくりと回っていた。


 源泉を汲み上げるだけの力があればいいので、あまり大きくはないが、優雅に回るその姿は露天風呂からも見え、風流な風呂になりそうだと思った。


 出来上がったら一緒に入ろうね、というとオリビアは真っ赤になって、また胸を押しつけてきた……極楽、極楽。風呂に入る前から極楽気分だ。


 一通り見回って、特に問題もなく、ロジャーさんの正確な仕事ぶりが確認できた。

 ロジャーさんにその旨を伝え、今後もよろしくとお願いした。

 感謝の意味もあって、出来上がって余裕ができたら、工事に関わる人たちを温泉に招待すると言うと、皆手を抜けなくなると、笑って言われた。

 作戦成功だ。


 帰りの馬車でも、ケーキはずっと眠っていた。

 最近邪魔しなくなったようだ。


 次の日、頼んでいた鉄板が届いた。

 四人がかりで調理室に持ち込んだ。


 この鉄板専用の窯はここには作っていないため、試験用に二つのかまどに差し渡して載せ、一つのかまどのみ火を入れることにした。

 火の入れてあるかまどの上の鉄板は強火、火のない方は弱火の状態になるはずだ。

 やってきたマーレイに実験をお願いし、俺はその場を後にした。


 その夜の食事には、カリカリに焼けたベーコンとしっとりと柔らかく焼けたベーコンの両方があり、ふんわりとしたスクランブルエッグも添えられていた。

 さすがマーレイ、仕事が早い。


 ベーコンは、オリビアはカリカリを気に入り、俺はしっとりがよかったが、カリカリを好きになることに決めた。


 二日たって、朝食にサンドイッチが出た。

 まだパンは少し固く、いまひとつだったが、パンにはさまれた豚肉の塩漬けのスライスと卵とレタスのような野菜との相性が良く、美味かった。


 感想を聞きにきたマーレイに美味かったと伝え、パンの進捗状況を聞いた。

 まだ少し硬いのは、イースト菌の発酵が未熟なためではないかということだったので、プクプクと泡が少し出るくらいになって、もう一度試そうという話になった。


 加えてサンドイッチは周りの固いパンの耳部分を切った方が、美味いし食べやすいことを伝え、賭博場でもお客様に出すことになった。

 もともとサンドイッチは賭博場の食べ物だ。


 チーズがないのが残念だが、まだ作る方法は見つかっていない。

 マーレイの失敗に期待しよう。


 切ったパンの耳がもったいないと言うので、油で揚げて黒砂糖をまぶせばお菓子になると伝えると、納得した。

 これもそのうち食卓に並ぶだろう。


 その後、味噌や酵母菌の話になったとき、俺は新しい調味料を思い出した。

 卵と油と酢を茶筅でかき混ぜて作るマヨネーズだ。

 マーレイはすぐに調理場に行き、十五分もしないうちに、マヨネーズを作って持ってきた。

 とにかく早い。

 近くにあった生野菜につけ、マーレイと一緒に食べてみると、俺の覚えている味とは違うが、それなりに美味く、もう少し混ぜる割合を変えてみようという話になった。

 今後が楽しみだ。


 その夜の食卓の野菜サラダは絶品だった。


 露天風呂付き賭博場の完成までに二か月を切っている。

 春先に開業予定だ。


 そろそろ宣伝活動を始めなければならない。

 メイデン組の新しい二号店だ。


 博打よりも温泉や料理をメインにしているので、それなりの名前も考えなければならない。


 名前……やっぱり、ホテル・カリフォルニア……ちがう、ここはカリフォルニアではない。


 でもホテル〇〇ってのは少しいい。温泉旅館〇〇、ちょっとダサい。

 でも日本人としては捨てがたい。

 〇〇温泉……いいかも。

 そもそもこの世界で初の温泉のはず。


 俺は悩んだ末に、ドーゴ温泉と名付けた。


 ドーゴ温泉は、建物が完成して、すぐに開店、営業するわけではない。

 全てが新しい試みなので、従業員に仕事を割り振り、お客様への対応や温泉を含む清掃などの訓練、新たに作る料理窯を使いこなし、日々の料理を極上のモノにしなければならない。

 卓球の指導員も必要かもしれない。

 そういった準備が整って、はじめて開業できる。


 それに開業直前の、俺とオリビアの結婚式。

 何より大事だ。


 俺は新しいホワイトボードに予定表を作った。


 二か月後の完成をはさんで、その前にしておくべきこと、完成後開店までの準備期間にすべきこと、結婚式の準備と段取り、これらを思いつくままに書き出していった。

 準備期間は一、二週間といったとこだろう。

 料理の準備や調理場を使いこなすことが、一番時間がかかりそうなので、マーレイに後で相談してみよう。


 頭が痛くなってきた……多すぎる。


 加えて俺の周りにいる奴は、みんな……脳筋だ。


 ひとつずつ片づけるしかない。

 そう覚悟を決めて、俺は町に出た。


 フレディさんのところでは、卓球台を三台とラケットを二十本注文した。

 ラケットが多いのはダブルス競技を考えての事だ。

 加えてルーレットの残り五台の納期を確認した。

 メイさんのところでは、革製のピンポン玉を二十個注文し、フカフカ布団の作製状況を確認した。

 なんせ布団は数が多い。

 ディーコンさんのところでは、特に何もなかったため、世間話で終わった。

 こういった普段からの付き合いが、あとでモノを言う、はずだ。

 ロジャーさんは、建設地にいるはずなので、また週末に確認に行こう。


 一通り、用事を済ませたあと、屋敷に戻った。


 ルーレットやサイコロの練習場に行き、皆の様子を確認した。


 ホワイトボードが更新されていた。

 エリック七十一、ジェフ六十九、ジミー六十一、サイモン五十八、ロバート五十四、どうやらサイモンは頑張っているようだ。

 その下に続く数字も、四十台が三人、三十台が四人とディーラー候補が育っていることが実感でき、嬉しかった。


 調理場に行くと、マーレイがバタバタとあちこちに指図しながら、走り回っていた。

 どうやら並行していろいろな料理を試作しているようだ。

 ここはマーレイに任せておけば、なんとかなるだろう。


 それにマーレイを支配しているのはリンダさんだ。


 久しぶりに宿泊施設にも行ったが、ここは専門外なので、軽く見て回るだけにした。


 最後に賭博場に行き、お客様と話をしながら、サイコロやルーレットの机を見て回り、ディックさんやハリスさんから状況を聞いた。

 お客様は、毎日四百人程度、クッキーやスポンジケーキも並べるとすぐに完売、相変わらずの盛況ぶりだ。

 俺がここに来た頃が嘘のようだ。

 お客様の声も概ね満足で、特に問題はなく、メイデン組に期待する声も聞くことができた。


 その夜、メイデン組の新しい二号店を、ドーゴ温泉と名付けたと皆に伝えた。


 その後、部屋でオリビアとケーキと戯れ、俺は一日を終えた。


 次の日、マーレイに新しいドーゴ温泉での料理に関する必要な準備について相談した。


 やはり調理場の使い勝手が分からないことが気になるようで、準備期間は十日欲しいと言われ、余裕を見て十五日取ることにした。

 他に気になるのが、料理に使う食材とのことで、メインに考えている料理によく使われる、卵と魚を確保したいとのことだった。

 確かに魚も、森から流れている川でどれぐらい捕れるのか分かっていないし、卵も町から運ぶにしても量が多く、途中で割れたら目も当てられない。

 何か手をうつ必要がある。

 また俺の仕事が増えてしまった。


 俺は建設現場に誰か行かせ、温泉横を流れる川にいる魚を調べさせようと思った。

 釣りが趣味という新人がいたので、そいつにやらせた。

 仕事名目の遊びだ。完全に遊びだ。


 その後、卵の取り扱いがどうなっているのかを、ブロンディさんに聞き、食物卸業者のハリソンさんに会うことにした。

 紹介されたハリソンさんは、哲学者のような風貌で、真面目な顔でサイジの町の養鶏状況を教えてくれた。


 人口五万のサイジでの卵の消費量は一日約千五百個、サイジに住む人の一ヶ月の平均月収が二万三千ケルン、それに対し、卵は高価で、一個六十ケルンもするらしい。

 そのため時々食卓にあがる程度で、食べる人は限られており、大きな組織の需要がほとんどとのことだった。


 結構メイデン組って贅沢な暮らしをしていると、今更ながらに気が付いた。

 ちなみにメイデン組は、卵の消費量が多く、いつも産み立ての新鮮な卵を届けるようにしていると言われ、感謝した。

 これなら病気の心配をせず、卵かけごはんもいいかもしれない。

 先日作ったマヨネーズも多分大丈夫だったのだろう。

 思い付きで鮮度を気にしていなかったことに気付き、少し焦った。


 それはともかく、ドーゴ温泉で、毎日宿泊客三百人を対象に、スクランブルエッグやスポンジケーキなど、一人当たり二個と考えると、毎日六百個、サイジの町の生産量の四割を確保しなければならない。


 マーレイが悩むのも無理はない。


 養鶏場の業者は三人いて、それぞれが千羽程度の鶏を飼っているとのことだ。

 紹介された鶏飼い業者三人全員に会い、状況を聞いていった。鶏は毎日卵を産むわけではなく、また鶏の数を増やそうにも広い土地が必要で、三人とも、これ以上増やすのは難しいとのことだった。


 待てよ、土地さえあればいいのなら、温泉横の誰のものでもない土地が使える。

 近くで養鶏して卵が得られるなら、これ以上の方法はない。

 やってみるか。


 三人の業者の中で、一番詳しく、真面目に対応してくれたリンゴさんに、土地を提供するから、鶏の数を増やし、卵を安く納入してほしいとお願いしたところ、卵全て引き取ってくれるならいい、とのことで契約が成立した。


 次の日、俺は新人五人を連れて、ドーゴ温泉予定地に向かった。

 大人数なので、久しぶりの普通の馬車に乗り、尻が痛くなった。


 予定地に着き、周辺の土地を見て回った。


 別荘以外に家がないため、使い放題ではあるが、高低差や疎らにある石や木が邪魔していて、どこでもいいというわけにはいかなかった。

 それに将来、この周辺を発展させ、新しく町を作ろうと考えた場合、道路や住宅地、新たな宿泊施設や店舗など、都市計画とまではいかないが、今から考える必要がある。

 そう考えた場合、匂いのキツイ養鶏場は風下の離れた場所が条件となる。

 季節によって風向きは変わるだろうから、極力離れた場所で、運ぶのに不便のない場所、そう考えて、温泉から二キロほど離れた高原を選んだ。


 将来ウサギの養兎?も視野に入れたためである。


 高原から温泉までは、なだらかな土地なので、道も簡単に作れるはずだ。


 俺は新人五人に、選んだ土地百メートル四方全てを囲むように、杭を打ち、それに横板を巡らせて仕切り、『メイデン組養鶏場予定地』と書いた看板を取り付けた。

 ふと思いついて、その隣にも百メートル四方の囲いを作り、そこには『メイデン組山羊牧場予定地』と書いた。

 山羊乳も木桶で運ぶため、温泉の近くにあったほうがいいと思ったからだ。


 ついでに、そこから離れた場所で、温泉から一キロくらいのところに、二百メートル四方の平坦な土地を見つけ、そこも囲って、『メイデン組ドッグレース建設予定地』と掲げておいた。


 ちなみにドーゴ温泉本館?周辺の土地は、直径一キロくらいの大きさで、既に押さえてある。


 帰ったら、土地計画をホワイトボードに描こう……ますますシ〇シティだ。


 帰りに建設中の屋敷を見に寄ったら、既に一階部分の骨組みが出来上がっており、建てられている柱の本数に驚いた。

 約五十メートル四方の土台に、五メートル間隔くらいで柱が林立し、壮観な光景だった。

 加えて中央部分には、大黒柱と呼ぶべきか、三階高さまで突き抜けて立ち、太く、見るからに安心できる柱が四本あった。


 町の屋敷に帰り、今日あったことをオリビアに話すと、ドーゴ温泉の大きな柱を見たいというので、明日また行くことにした。


 俺はもう用事はないが、オリビアが望むなら、断る選択肢はない。


 また腕を組んで、胸の感触を……。


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