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私の師匠  作者: アダマ
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序章

 彼は死んでしまったけれど、何かしら・・・?このモヤモヤ感。




 彼、青年と出会ったのは秋のたそがれた夕日の中だった。夕日に照らされた彼の横顔は人形のように美しく、哀愁が漂っていた。

 私は当時12歳。青年は20歳。青年は夕日の中で一人ベンチに座ってどこを見ているかわからないような目をして何かを眺めているようで何も眺めてはいなかった。私はそんな青年の横顔が今もとても印象に残っている。

 彼は何を考えているのだろうか・・・・・?

 私は青年に対してとても興味をもった。なぜだったのかはわからない。


 それから数か月後、私は老人が趣味で運営している喫茶店で青年を見つけた。青年は、私から少し離れた人目につかない店の隅に人目を避けるようにして座っていた。

 相変わらずの目・・・・・。

 私は青年のどこも見ていない目に見入っていることに、自分でも気がつかなかった。

 私の視線が青年に伝わったのか青年がふと私を見る。確かに私と目があっているけれど、私を見ていない。しばらく私たちは見つめあっていたけれど、私の方から目をそらした。少しこわかったから。けれど、どきどきした。

 -よくここに来るのかしら?

 私はそれからその喫茶店に通うようになった。12歳の小娘の身分で今まで欲しいものがなかったから自然とたまっていったお金を自分の貯金箱からちまちま取り出して。

 彼は週に一回のペースでその喫茶店に通っているようだった。毎週木曜日。私はわざと青年が来店するよりも時間をはやくして青年がいつも座るスペースの一人分空けたその隣の席に座った。内心どきどきしながら。

 -あっ来たっ!

 青年がつかつかと私に近づいてくるのがわかる。そして、案の定、いつもの場所に座った。

 私はおもいきり青年を見た。彼の横顔が目にはいる。青年は、私の視線に気が付いているのかいないのか知らないが、私を見ずにそのまま正面を見ている。こうして、いつものように私は青年を穴が空くほど観察するのであった。

 青年が注文するのは大概、紅茶かコーヒー。紅茶はローズヒップ。コーヒーはブラック。たまにケーキを食べてぼんやりしている。私も青年のまねしてブラックコーヒーを飲む。・・・・まずかった。私はリンゴの紅茶の方が好きだった。

 私は彼が店から出るまで座っている。こんなことが毎週繰り返された。

 私は青年とおしゃべりしたくてしょうがなかった。彼なら、私を”見てくれる”そんな気がしたから。だからしつこいほどに視線を投げかけて青年が話しかけてくれるのを待っていたのだった。

 「お嬢ちゃん、いつもあのお兄ちゃんを見てるねえ。」

 ついには、喫茶店を経営する老人に声をかけられた。

 「え・・・・?はぃ・・・・。」

 私は小さな声でかえした。

 「あの綺麗なお兄ちゃん毎回だいたいたのむもの同じだよねえ。」

 -・・・知ってる・・・・。

 私は心の中でボソっとつぶやいた。

 「たしか、○○大学の学生じゃないかねえ。」

 「え・・・?」

 「う・・ん?いや、ずっと前、コーヒーは学生無料キャンペーンやっててさ・・。そん時、学生証みたからさ。ほら、うちの店、学生来ないし・・・。」

 -ふーん・・・。○○大学・・・。なんの勉強しているのかしら・・?

私は来週の木曜日が楽しみでしょうがなかった。

 -頑張って話しかけてみよっ!!

 私の心は珍しいぐらいにバクバクしていた。


 ある秋の早朝、私は○○大学正門の前に立っていた。彼は今日、大学へ来るのかもわからないのに。

正門付近に立っている警備員のおじさんが話しかけてくる。

 「お嬢ちゃん、こんな朝早くにどうしたの?」

 「・・・・・・・」

私は顔を下に向けたまま黙った。警備員の人の不審そうな目つきが私の頭の上にふりかかる。

 「誰か待っているのかな?」

警備員のおじさんがしゃがんで私の顔をのぞきこんでくる。私は顔をそのまま下に向けて頷いた。そしてそのまま大学の正門付近から離れた。

 -いちいちイヤ・・・・

 私は大学の正門近くの道で青年を待つことにした。この道を通過しなければ大学にたどりつくことはできない。

 -来るといいな・・・・

 私はその道の端でマネキンのようにつったっている。しばらくして○○大学の学生とおぼしき大学生たちがちらほらと私の前を通り過ぎていく。どんどん日は高く昇っていく。青年はまだ来ない。だが、私は青年が来るとほぼ確信していた。

 そして、夕方になった。青年が遠くから歩いて来るのが目に入った。青年が私に気が付いた。私と青年の目がかちあう。だが、私の目は青年の姿と同時に、その青年の隣を歩くほっそりとした綺麗な女にも向けられた。青年は女と話しながら、とても美しく微笑んでいる。遠くからみた青年の笑顔はとても美しかった。しかし、その青年の笑顔は私にはすぐにペテンであると見抜いた。

 私は心の底から彼を笑わせたいと胸が痛んだ。

 私と青年は、互いに目を合わせたままだった。私は、道の隅に立ったまま。青年が私の横を通り過ぎる時も。

 私は、青年の隣を歩く女のせいで青年に話しかけるタイミングを逃したと思い、女に対して若干、苛立ちがこみあげた。

 その日はそれで終わってしまった。



もしかしたら、この小説は少女が青年に対して恋愛感情をいだいているかのような書き方になっているかもしれない。少女は何を思っていたのだろう?

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