第九話 汚職神官は逃亡する
今回の主役はおっさんです。
女の子なぞ、出ない。
どうしてこうなったのだ。
わしの計画は完璧だったはずだ。
正直、わしは耐えられなかった。
重税のせいで毎日の食事もどんどんと質素になる。
この状況が続けば教会に群がる愚民どもに残飯を与えて優越感に浸ることも出来なくなってしまう。
それではわしを称える者がいなくなってしまう。
そんなことは耐えられん。
わしは気の弱かったり、信心深かったり、善良だったりする貴族や有力者にこのままでは民が飢え、国が滅ぶと不安を煽った。
そして王座の簒奪を謀ったのだ。
しかし、それはうまくいかなかった。
誰かが裏切った!!
誰かまではわかっておらんが、その誰かのせいで新体制派とか名乗る暗殺者がわしを始末しに来た。
わしは滞在していた王国南端の街から逃げだす羽目になった。
実力のある部下の大多数を王都にて潜伏させている状況で、相手は腕利きが十数人だ。
ここにいるわしと最小限の護衛、文官だけではどう考えても勝ち目がない。
「はぁはぁはぁ、こ、ここまで来れば大丈夫だろう……」
うう、齢も五十を超え、運動不足なわしにとって、こうも走るのは辛い。
わしは間違っておらんはずだ。
王も上流貴族も贅沢三昧に過ごしておる。
それを羨んで何が悪い!
わしは、わしはただ酒池肉林の毎日を送りながら、愚民どもに称えられたかっただけだぞ!
「わしは間違っておらん!何故だ!クソッ!……クソッ!!」
イライラが収まらん!
ええい、見ておれよ、裏切者め!
見つけ次第、始末して、今度こそ王座を簒奪してくれるわい!
そう息巻いて逃げ延びてから早一週間、わしの心は折れかかっていた。
「トニーからの返事がない……。王城なんぞに忍び込むからだ……馬鹿者め。アレックスも死んだと知らせが来た……。あのアレックスが死ぬなんぞ想像もしていなかった。ヘンリーもわしを庇って死んだ。最後までわしを褒めちぎって逝きおって……」
仲間が死んだという知らせばかり舞い込む。
それも信頼していた側近ばかりだ。
トニーは手癖が悪いが、顔と情報だけは優秀だった。
アレックスは生まれもおつむも貧しい男だったが、剣だけは一流だった。
ヘンリーは何のとりえもないポンコツだったが、わしを称える言葉だけはすらすら言える良い賑やかしだった。
みんな死んだ。
わしが殺したようなものだった。
わしが間違っていたのか?
ぶつぶつと独り言を言うわしに部下が声をかけてきた。
「ヨハン様、ここもそろそろ危険です。移動しましょう」
「ああ、次行く先はもう決めておる。そして、ここから先はわし一人で行く」
「ヨハン様、我々を……信じられませんか?」
部下たちは皆、悲し気な顔をしてわしを見る。
この中に裏切者がいるかもしれないと疑われていると思っておるのだろう。
しかし、ここにいる者はわしの昔からの部下だけだ。
わしとて流石にここまで着いてきてくれた部下を疑うような真似はせん。
「信じているとも。お前たちはわしを裏切るくらいなら死ぬ、その覚悟を決めた者たちだと」
「その通りです。我々はヨハン様のためなら死すら躊躇うことはありません!」
だからこそだ。だからこそ連れていけないのだ。
「わしのためを思うならば待つのだ。わしは必ず帰る。そして我が秘策をもって王を打倒し、必ずや王位を簒奪する。それまでお前たちはわしを待つのだ。力を蓄え、民を焚き付け、心を揺さぶるのだ」
これ以上信頼できる部下を失うわけにはいかない。
そうなっては最早、何もできんのだ。
わしの策が上手くいったとしても、手足がなくては手詰まりだ。
最も、その策すら我ながらとんでもないものだと思うが。
「しかし、ヨハン様。秘策とは、一体何なのですか?我々には話せない事でしょうか」
この策は別に敵にはばれたところでどうということもないものだ。
だが、味方には知られればその無謀さに、策とは呼べないと嘆かれるだろう。
「言うわけにはいかぬ。秘策であるからな」
「……ならば我らは待ちましょう。ヨハン様が王となる日を。この国が救われるその日を」
わしは部下を下がらせて旅支度を始める。
「言えぬよ。こんなものは策とは呼べぬ。ドラゴンに協力を求める……などという策はな」
神殿に古来より伝わる聖書には異端として封じられたものがある。
その聖書の一文にこのような記述がある。
神は人を作り、人に試練として魔物を与えた、と。
故にわしはドラゴンに問いかけなければならん。
ドラゴンよ、あなたこそが神ではないのか、と。
次回、野郎三人がメインの予定。
登場人物の性別配分を間違えた疑惑が浮上中。
こ、これから女の子増える予定だし……!
こ、これからだし……!
これからが本番だし……!