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第八話 盗賊は困惑する

今回はついにアンナ一行に仲間が増えます。

この小説には貴重なツッコミ要員。

 今日も狩場に獲物がやってきた。

 そう思って前に出たのが、俺の運が尽きた瞬間だったのかもな。


「待ちな、ここを通りたきゃ通行料を払ってもらうぜ?」


「先生っ!先生だ!うっわー、生先生だー!」


 何だこの女!?

 俺の名はククーム・ベノム。しがねぇちゃちな山賊だ。

 ちょっと脅かして金をせしめようと、旅人らしい男女二人組の前に出たらいきなりこれだ。

 当たり前だが、先生なんて呼ばれるような覚えはねえ。


「アンナ、知り合いか?」


もう一人が女に問いかける。絶対に知り合いではねえよ。


「ううん、私が一方的に知ってるだけ。先生、ちょっと『へっへっへ、通常攻撃は○ボタンだってことも知らないど素人じゃねえだろうな』、って言ってみてくれませんか?!」


「意味わかんねえよ!○ボタンってなんだよ!」


 俺はどうやらやばい奴らにかかわっちまったらしいと気が付いたが、時すでに遅しってやつだな、こりゃあ。

 幸い、あっちの兄ちゃんは比較的まともそうだ。


「とにかく、いてぇ目に合いたくなかったら通行料を寄越しな」


「生憎と金は無い。旅の支度で使い果たしたからな」


 ずいぶんと辛気くせえ顔しやがる。

 こいつ、どうやら嘘は言ってねえみたいだな。

 これが演技なら人気役者か大物詐欺師になれるぜ。

 まあ、金がねえってんならしょうがねえ。


「だったら物でも良いぜ。食料なら大歓迎だぜ?」


「そもそもお前に通行料を払う義務もないけどな……」


「まあな。だがよ、払わねえならここから先は行かねえほうがいいぜ。払ってくれるんなら、俺はお前らに魔物除けの薬を撒いた道を教えてやるが、それ以外のルートは自殺行為だぜ。ま、それがあっても全部はのけらんねぇがな」


 こいつはマジだ。

 ここいらは魔物の巣がわんさかあるからな。

 俺の薬がなけりゃやばい魔物がぞろぞろ出てきやがる。

 つってもそれも効かない魔物もいるんだがな。


 女の後ろから迫る蜘蛛型の魔物に向けて手斧を投げつける。

 斧は女の真横を通ったというのに、ビビった様子もなくにこやかだ。

 気味の悪いやつだ。


「こいつらなんかは俺の薬じゃのけらんねぇ。一時休戦といこうか。死にたいなら別だがな」


 まさかこんなところまで魔物が出るなんてな。

 ここは街からそう離れちゃいねぇ。

 魔物ってのは明るい場所を避ける傾向にあるはずだってのによ。


「続きはこいつらを片付けてからだ。回復なら任せな。これでも毒と薬にゃ詳しいからな」


「あ、私はアンデッドなので回復薬は効かないので!」


「はぁ、嬢ちゃんはアンデッドなのかよ。そんな若い身で大変だ、な……」


 おいおい、魔物が瞬く間に細切れになっていきやがる。

 なんだこいつ、剣が見えねえ。

 改めてやばいやつに関わっちまったと確信したぜ。

 連れの兄ちゃんは魔術師らしいな。

 魔物に向かって黒い炎の塊を飛ばしてる。

 あっちは俺とそうレベルは違いねえな。


「いやぁ、処刑されちゃいまして!国の暗部ってやつに真っ向から突っ込んじゃったみたいで。おかげで首無騎士デュラハンですよ!ほら!」


 そう言って嬢ちゃんは自分の頭を持ち上げた。

 いとも簡単に持ち上がった頭の下では首から不死者の特徴である死炎と呼ばれる炎のような魔力が立ち込めていた。

 なるほど、さっきから頭がおかしいのかと思ってたが、一回くたばったせいか。

 納得したわ。

 しかしそんなことやりながらも魔物はどんどん減ってやがる。


「しっかし、嬢ちゃんほどの強者がなんで普通に処刑されてんだ? そんだけ強けりゃいくらでも逃げられんだろが」


「俺もそれは疑問に思ったな。何故あっさり殺されたんだ。むしろよく処刑人の攻撃が通ったな」


 お前も知らねえのかよ、仲間じゃねえのか、こいつら。


「それは実は、ふかぁい訳があるのですよ。そう、実は油断してまして、攻撃通るわけないし、ある程度民衆に訴えたら逃げようと思ってました。しかし、処刑に使われた武器が即死攻撃が付与されててねー。防御が高くてもHPいくらあっても、特殊効果は防げないねー。この世界の即死攻撃ってレベル関係なしの確立発動だから運が悪かったとも言えるかなー」


 頭がおかしかったのは生前からかよ、救えねえな。


「深くないじゃないか……」


 隣で兄ちゃんが頭抱え始めた。

 あれか、こいつも巻き込まれた口か。


「俺なんでこんな阿呆蘇生するのに家宝なんて使っちまったんだろう……」


 テメェ元凶じゃねえか。

 被害者ぶってんじゃねえよ畜生。


「というわけで先生、世界を救うために国の暗部に立ち向うのを手伝ってほしいんだ!」


 話の前後がつながってねぇ!

 まて、襟首をつかむんじゃ……振りほどけねぇ!


「先生がいれば百人力だー! もう何もこわくない!」


 いや、お前は俺が仲間になっても何の恩恵もねーだろ。

 薬効かねーし、魔物細切れに出来るだけの実力もあるしよ。


「確かに、薬のエキスパートにして戦闘も強い。それだけの実力者でありながら、身の上はほとんど賊だから消えても誰も怪しまない。絶妙な人材だな」


 おう、素直に都合のいい人材って言えよ、クソ野郎。

 なんだったらちょうどいい生贄とかでも正しいんじゃねぇのか?


「俺に拒否権はねぇってわけかよ、クソッタレ……」


 俺の運は完全に尽きた。

 そう思って諦めてやるさ。


 だがな、とりあえず先生って呼ぶのはやめろ。



先生って賊ってよりもあれだと思う。

通学路の横断歩道で旗持ってる人?

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