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第一話 勇者は死する

初めまして。春原凡斎です。

文才と更新速度はありませんが、よろしくお願いいたします。

「ドラゴンが死ねば、世界が滅んでしまいます!」


 処刑上に響く叫びと、刃の落ちる音はほぼ同時だった。

 断頭台の上で叫んだ少女は、その命を散らした。


 というわけで、私は死んでしまった。

 おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない!!

 

 さて、おふざけはこの辺にして、ちょっと私の話を聞いてほしい。

 私はこの世界に平凡な元冒険者の娘として生まれた。

 そんな私だが 前世ではゲーム好きな女子高生だった。

 死因は思い出せないが、女子高生ということは若くして亡くなったのだろう。


 まあ、今はそんなことはどうでもいい。

 ゲーム好きな私はこの世界がドラゴン・クライムというファンタジーアクションRPGの世界だと気が付いた。

 このゲームはマルチエンドなのだが、エンディングの後味がやたら悪いものが多いことで有名だ。

 このゲームの概要はこうだ。


 各地で人々を脅かす凶悪な魔物を生み出しているドラゴンを討伐するために勇者が旅立つ。

 色々あって仲間と共にいざドラゴンと最終決戦――の前にドラゴンから衝撃の事実が飛び出す。

 なんとドラゴンさんは世界のバランスを保つために仕方がなく魔物を生み出していたことが明らかになるのだ。

 で、それやめるとバランスを失った世界は徐々に崩壊して滅ぶんだそうな。

 そこで選択肢が出るわけよ。ドラゴン倒すかやめるかって。

 まあ、倒すとバッドエンドなんだけどね!

 倒さなくてもハッピーエンドではないのが何とも言えないよね。


 そんな先行き真っ暗な世界に主人公として転生した私は、この世界の未来を変えるために王様に直訴したのだ。

 そう、ドラゴンを殺せば世界が滅ぶと。


 その結果、気が付いたら処刑台の上でした。

 いやぁ、予想外。

 どうやら睡眠薬あたりを盛られたらしい。


 しかし、死んでからこうも考える時間があるのはなぜだろう。

 ひょっとしてここからまた別の人に転生でもするんだろうか。


 そんなことを考えていた私だったが、何やら少しずつ周りが見えてきた。

 どうやら私は暗い石畳の部屋にいるようだ。

 足元には怪しげな魔方陣が青い光を放っている。

 妙に視界が低い気がするけど、よく考えたら首を落とされたんだから私の身長は多分今20㎝くらいしかないわけだ。

 そりゃ低いのも納得だよ。

 しかし、どっかで見た覚えがあるような……。


「ようやっとお目覚めか。あまりにも目覚めないから失敗したかと思ったぞ」


 何奴かと声のした方へ目を向けようとして、それが叶わないことを悟った。

 どうやら私の頭は床に転がっているようだし、どうしたものか。

 思わず頭を抱えようとして手が空を切る。

 そこでようやっと気が付いたのだが、私の体は私の頭の後ろにあった。

 気が付いたからには後は簡単だ。

 持ち上げて抱えれば、後は声のする方を向くだけでオッケーだ。

 おや、彼は確か……。


「ヒッキー君!死霊術士のヒッキー君じゃないか!」


 彼はドラゴン・クライムの主人公パーティとして連れていけるうちの一人。

 死霊術を扱う闇の魔法使いで、アンデッドを取り巻きとして召喚して戦う。

 研究のために引きこもっていたせいで本人は体力が低く、HPがとんでもなく低い。

 で、ついたあだ名がヒッキー君。


「お前とは、初対面だったと思ったが……そして俺はヒッキーなんて名前じゃない。俺はジャック・コープスだ」


 おお、そういえばそんな名前だった。


「うん、初対面だよジャック君。私はアンナ、勇者だった人だよ!」


「記憶もしっかりしてるらしいな。アンデッドになってもここまで平然としている奴は初めてだ」


 おおう、やっぱり私はアンデッドになってしまったのか。

 まあ、彼がここいる時点で予想出来た話だったけどさ。


「まあ死ぬのも二回目となるとなれるんだよ、多分」


 一回目は記憶にないけどね。


「二回目? まあいい、俺はあんたに聞きたいことがあったんだ」


 ほほう、この私に質問とは。

 いいだろう、スリーサイズまでなら答えてやるのもヤブサメではない。

 ん? ヤブ、や……まあ何でもいいか。


「スリーサイズなら上から」


「いや、それはいい。別に興味ないからな」


「88、59、90だよ!」


「いや、興味ないって言ってるだろ!」


 興味ないと言われてむしゃくしゃして言った。

 後悔はしている。

 思ったよりは恥ずかしいな、これ。


「……照れるくらいなら言うな」


 ごもっともです。

 しかしあれね、首もげてても顔ってのは赤くなるのね。

 やっぱりファンタジーってすごい、私は改めてそう思ったよ。


「なあ、話続けてもいいか?」


 おおっと、流石に遊びすぎたらしいね。

 ちょっとイラッときてるね。

 そろそろ真面目に話さないとね。


「聞きたいことは、ドラゴンのことだよね?」


「そうだ。ドラゴンが死ねば世界が滅ぶ、これは本当か?」


「本当だよ。彼女がいなければこの世界はバランスを失って滅ぶことになる」


 と言っても滅ぶまで数百年はあるから今を生きる人間はとっくに亡くなってるけどね。

 それでも自分に関係ないから滅んだっていいじゃんなんて理屈にはならない。

 しかも私はアンデッドとなったのだ。

 レベルもやたら上げてあるし、油断がなければ数百年以内に三度目の死が来る気がしない。

 二回目の死因も薬を盛られて寝ている間に死刑台だったし、毒も薬も効かない身となってはそうそう死なないだろう。

 挙句睡眠もいらない。飯も食わずとも平気。

魔力切れになったら動けなくなるが、私の魔力はすでにこの国の大地全てを焦土に変えてもなお余る。

 レベル502は伊達ではない。

 なお、この世界で公式に知られている強者のレベルはおよそ200前後。

 私はその倍以上、つまりこの世界の強者を一方的に蹂躙できるね!


 ……あれ?これ、私がドラゴン守ってれば解決じゃない?

 死なないし、寝ないし、寿命もなくなったし。

 暇っていう問題は魔物相手に無双してれば多少マシだろうし。


「よし、じゃあ世界を守るために、いざドラゴンの元へ! ジャック君! 三分間待ってやる!」


「いや、待て。俺は行くなんて言ってないぞ! そもそもお前の話を信じたとも言ってない!」


「えー、いいじゃん。ここは乗っとこうよ。ノリ悪いよ、ジャック君」


「ノリで命賭けの旅なんて出てたまるかよ……」


 はい、ぐうの音も出ない正論です。

 ううむ、勢いで押せばいけると思ったのに。

 仕方がない、使いたくはなかったけど、この手で行くしかあるまい。


「君の力が必要なの。世界を救うために、私に力を貸して」


 彼は闇の魔術師だ。この国では闇の魔術は邪悪な存在とされている。

 昔はそうでもなかったらしいけど、ここ数百年は特に迫害が強い。

 そして彼は元々闇の魔術を扱う家系なのだ。

 そんな彼は飢えているのだ、必要とされることに。

 闇の魔術が、自分の先祖が評価され、白昼をどうどうと歩くのが彼の夢なのだと、私は知っていた。

 それを利用しようというのは正直、どうかと思うし、したくなかった。

 しかし、流石に私一人で世界を変えられないだろうし、ドラゴンに会うまでの旅を一人で行くのは精神的に辛い。

 ジャック君はため息をつき、乱雑に積まれた一見ゴミとも思えるようなガラクタじみた物に腰かけ、しばらくうなった後で、こちらへ向き直った。


「……お前をアンデッドとして蘇らせたのは俺だ。これもまた、神の与えたもうた試練だと思っておく。ただし準備には三日寄越せ。三分じゃ旅支度なんて出来ないからな」


 ごもっともです。

 こうして私たちの旅路は三日後に始まることとなった。

 なお、目立たないようにと、私の首を元のように固定できる魔法の首飾りを作成するのに五日かかったせいで、出発が六日後となった模様。

 どっとはらい。


へっへっへ、ここまで読んでいただき、ありがとうごぜーやす。

ご感想、お待ちしておりますぜぇ。

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