転生
……さい
何かきこてくる。
「目覚めなさい、目覚めなさい子供たちよ。」
んっ誰、強盗?今子供ていってたよね、何言ってるのこの人やばくね。
「私は女神です、あなた達3名は異世界の世主に選ばれました。」
どうやら本当らしい、女神は俺の頭の中に語りかけてくるし、何もないとてつもなく白い空間が広がっている。そう言えばさっき3名とか言ってたな、俺の周りを見渡すとピチピチ跳ねてる魚とキョロキョロしてる宇宙人?がいた。
おいおい人間は俺だけかよ、つうかあの魚死にかけてねえか、宇宙人が拉致されてるし。
「あなた達が旅立つ前に、一つの願いを叶えてあげましょう。」
…じゃあ、元の場所に帰して下さい。
「ごめんないそれはできません。絶対に帰らせな…謎の力でなぜか帰れないのです。それに、異世界の勇者に選ばれた以上は魔王を倒してもらいます。」
おいおい今何か言いかけてたぞ、こちらの都合御構い無しで拒否権なしかよ。
「じゃあ魔王を消し…」
「無理です、私の力ではそこまでできません。」
女神は俺が言い終わる前に被せるように言ってきた。
こっこいつ〜、本当か知らんがこの自称女神でもどうにもならない魔王を俺達に押し付けてんのかよ。ふと横を見ると、魚は水槽のなかで美味しそうにミミズをパクパク食べて、宇宙人は牛の解剖を満足そうにしている。
…まあ、良いんじゃないかな。
俺の願いはまた後日となり、転生についての話になった。
「あなた達にこのリストの中から、転生していただくことになっています。」
「今のままではいけないんですか?」
「今のままでは肉体的にもですが、魔法も使えも使えませんよ。「」
リストを見ると人間、エルフ、ゴブリン…ゴブリン!
明らかにモンスターじゃねえか、いきなり魔王側なの。
「あの〜このリスト、魔物がいっぱい載ってるんですが大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫です、何の問題もありません。」
「あっそうですか。」
「ちなみに、大体の子供たちは元の姿に近いものに転生しますね、ほら。」
女神の指差す方を見ると半魚人がいた。
どうせ転生すんなら長く生きたいな〜「このリストの中で一番、寿命の長いのは何ですか?」
「ゾンビですね……何ですか、嫌そうですね、ではスライムとかどうですか?」
「いや、もっと人間に近いのないんですか
?」
女神は、あなた注文が多いですねゾンビだって人間じゃないかとか、ぶつぶつと文句を言いながら。
「では吸血鬼でどうですか、いえそれでいいですね、はい決定、もう変更出来ません。」
唖然としている俺に女神は、間髪を入れずに続けた。
「次にこの中から技能を一つ決めて下さい。」
渡されたリストの中で、物質召喚に目が止まり、これを応用すれば帰れるかもと期待が湧いてきた。
「あの〜何で一つだけなんですか?あと、この物質召喚てなにが出来るんですか?」
「旅立つあなたたちに私からの祝福として最大レベルで覚えさしてあげちゃうんです。技能の最大レベルは通常出来ないので感謝して下さい。」
無理矢理、俺を呼び出しといて実に偉そうである。
「そうそう物質召喚でしたね。」
「あなたが触れたことのあるもので、なおかつ、その物質についての知識がある生命や魔法を除く物質を召喚します。」
「ただし、元の世界の物質は転移出来ませんけどね。それが出来てしまうとそこの宇宙人君は帰れちゃうんで」
何だ、つかえねえ能力じゃねえか、どうやっても女神は俺を帰らせねえつもりなんだな。
「じゃあこの複製魔法は何ができるんですか?」
なんか明らさまに、面倒くさそうにしてるのは無視して聞いて見た。
「はぁ〜、複製魔法ですか、条件は先ほどのとすこし似ていますね。見たことのある物や魔法などを知識があれば、基本何でもコピーすることが出来る魔法です。」
「もちろんオリジナルには劣りますけどね」
女神の睨みつける視線と、また勝手に変なのに決められそうな恐怖で、これにしますと告げると全員の選択が終わった。
どうやら俺が最後だったみたいで、ダラダラ聞いていたのが気に食わなかった様で、全部選択しないと転生も出来なかった様だ。
俺が吸血鬼に転生すると、何故か身長がちじみ、声も高くなり、着ているスウェットもブカブカになっていた。
これは魔力耐性などの理由から、転生者は13歳前後からスタートするらしい。
「まあ、吸血鬼の始祖として転生したあなただけはそこからもうほとんど成長は見込めないですけどね、良くても16歳位で成長が止まります永久に…」
なんかいきなり、すごいカミングアウトをされたが、とりあえず、俺達はそれぞれ半魚人、吸血鬼、ミノタウロスに転生することになった。 宇宙人にとって牛は魅力的らしく、ミノタウロスをいたくお気に召したようで、なんか凄く興奮している。
この側から見たら魔物の軍団を、女神がこちらをチラチラ見ながらクスクス笑っている。
「それでは皆様、これをどうぞ」
女神が腹を抱えて笑いながら何かを渡してきた。
それは、女神の手書きと思わしき汚い字で(勇者)と書かれた名札だった。
「先程の続きになりますが、こちらを付けていればたとえモンスターでも一目で勇者とわかってしまいます。」
「あぁ我ながらなんてすばらしいアイテムなんでしょう」
こんなふざけた名札で、転生世界の住人は勇者と信じちゃうのかよ、俺があったら恐怖しかねえよ。
「吸血のあなたは、ほとんど人と同じなので必要ないのですけど私からの特別サービスです。私の直筆ですよ嬉しいでしょ、もっと喜びなさいよ」
こうして俺たちは勇者の名札を手に入れた。
全員が支度をし終えると、女神は光の差す道を指差した。
「では行きなさい子供たちよ」
頬杖をつき、ダルそうに欠伸をしながら、早く行けよと言わんばかりな態度で見送っていたのが、俺たちが最後に見た女神の姿であった。