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換羽期(換毛期)な狐の獣人で種族差に苦しむ話。

Twitterで獣人かいたったーで出たお題です。

タイトルがお題のままです。


タグ:獣人、トリップ、R15、ちょっと汚い話、下ネタ?

「ここ、どこ……?」


 はっと目が覚めると、森の中にいた。私は決してアウトドアが好きな訳ではない。どちらかというと大っ嫌いである。

 家の中でゴロゴロしてテレビを見るのが大好きだった。おかげで物凄く俳優だとか、アイドルの名前と顔を覚えてしまった。ちょっと忘れられがちなお笑い芸人の名前も覚えている。この人誰だっけ?ってなったら私に聞け。というのが友人と家族の共通認識だ。

 とはいえ、今の状況はなんなのだろうか?周りをキョロキョロしても、木、木、木……つまりは森だ。

 昨日はスペシャル特番を見ながら、ソファの上で毛布にくるまってリビングでうとうとしてた。そこから記憶がないのでそのまま寝たはずだ。

 だから私はリビングで母に蹴られなければならないはずである。決してこのような土あふれる自然空間ではない。

 もしや呆れた母が野山に捨てたか。

 ……可能性としてはあり得るんだけど。持ち上げる力も必要だし、途中で起きると思う。だからその可能性は却下として……。本当に、どこよここ……。

 うっ、裸足で地面歩くと痛い!

 どうしようかな……毛布で足包む?でも野宿するかもしれないなら毛布は確保しておきたいんだよね。

 うーん。あ。キャミソールを着てたな。片方はそっちでいいか。もう片方の足はどうするか……寝間着とキャミくらいなんだけど。あとは……パンツか……ないないないない。キャミを半分に切るか。ハサミで。

 ……しまった!ハサミがない!まさか文明の利器がこんなにも便利だったなんて!道具が1つないだけでこんなに困る!

 取りあえずキャミを脱いで、手で裂けないか試みる。


「ふぎぎぎぎっ」


 普段箸よりも重いモノを滅多に持たないので、切り裂ける力がない。しばらく奮闘してみるも、だめだった。なんて丈夫なの!すごいわ!いつもの生活なら褒めてる所だけど今は裂けて欲しかったな!

 いや、単に私の力がなさすぎなのだろうか……。諦めて、パンツを脱いで片足にくっつける。爽やかな風が股間に吹き抜けるが、まぁ、ズボンはいてるし、大丈夫でしょう。

 片足にキャミ、片足にパンツを縛りつけて、ようやく歩き出す。布巻いただけだが、随分と歩きやすくなった。それでもまだ布が薄い方の足は結構痛い。もちろんパンツ側の足だ。

 靴って偉大だったんだね

 妙なところで感心しつつ、キョロキョロする。誰もいない、獣道すらない。森、森、森。マイナスイオンが渦巻いているかもしれない。空気はとてもおいしい。

 むにゅっと何かを踏んだ。上を見ていたせいで下がおろそかになってしまっていたようだ。慌てて飛び退くと、黒い色の蛇っぽい何か……ツチノコっぽい見た目してるぅ。チロチロと赤い舌を出して、こちらを警戒している。


「ご、ごめんなさいごめんなさい!」


 そう言って逃げ出す。ツチノコらしきなにかは追っては来なかった。ふぅ、と息を吐いて、木に手を置くと、ぬめりとした感触がした。


「うひゃうわ!」


 慌てて手をどけてみると、ねちょっとしたものが手に張りついて離れない。それどころか、ねちょついたなにかがゆっくりと私の手を包んでいく。


「ぎゃああああああああああああああ!?」


 得体のしれない何かにビビって、思いっきり地面にこする。すると、カチリという何かが割れるような音がした瞬間、さらりとねちょついた何かが溶けた。


「ななななっ、なにっなにいまの!なにっ!」


 溶けた透明のねちょついた何かは、木でつついても動かなくなった。でもさっきは確かに動いた。


「う、いたたた……」


 地面に擦りつけた際に、ねちょついた何かだけじゃなく、自分の手も傷付けてしまった。さっきは慌てていたので痛くなかったが、冷静になったところで痛さが来た。よく見ると、結構広範囲に擦れていて、かなり痛い。

 土も入っているし、先程のねちょついた何かも傷口に……そこまで考えて鳥肌がたってきた。


「み、水は!それと、消毒……!」


 探してみるが、そんなものは見当たらない。

 涙目になりながらうろついていると、お腹が鳴った。今は何時ごろだろうか、結構歩いたので、体力も消耗したし、お腹もすいた。どこかでゆっくりしたいけれど、まださっきのねちょついた何かの恐怖が張り付いていて、座りたくはなかった。木の近くなどもってのほかだ。

 食べ物はなくても、せめて水が欲しい。喉が渇いたし、傷口も洗いたい。


 しかし無情にも何も見つからないまま暗くなってきた。


「うっそ……うっそ……」


 このまま遭難して死ぬのだろうか。そもそもどうしてこんな所に。私はゆっくりリビングで寝てたのに。めそめそしても状況は良くなってくれない。

 とっぷりと日が暮れ、明かりも何もない空間になった。今まで自分が暮らしてきた生活が、いかに光に満ち溢れたモノだったかと思い知らされる。

 生憎木が高いので、月の淡い光もあまり届かない。


 怖かった。


 誰もいないし、変なねちょついた生き物がいるし、食べ物はないし、飲み水も……。


「ううううう~~やだぁ~もうやだ……」


 その場に毛布にくるまって寝そべる。もうねちょついた何かを気にしていられるほど体力がない。このまま眠ったらもしかするとリビングに戻れるかもしれない。ズキズキと傷む手をぎゅっと握りしめて、毛布で頭まで覆う。

 そうだ、夢オチだ、きっと。こんなのありえないもん。

 そう言い聞かせて、疲れ果てた体を休ませようと瞼を……。


グルルルル。


 その獣の唸り声のようなものを聞いて、バッと勢いよく立ち上がって硬直する。ガサッガサッと草をかき分ける音が聞こえて来て、ゆっくりとこちらに向かって来ている気がする。

 えっ!狼?いや、狼は日本じゃ滅んだから、野犬?

 凶暴な奴だったら、私ではとても対処しきれない。噛まれたら手当なんてできないし、へたしたら死ぬ。

 尋常じゃない汗が背中を流れているが、カチカチと震える足は動いてくれない。蛇に睨まれた蛙。いや、まだ出会ってすらいないのだが、それどころじゃない。生命の危機なのに、体が竦んで動かない。

 ゆっくり相手は動いているので、もしかするとこちらに気づいていないかもしれない。そのまましゃがみ込んで、ぶるぶる震える体をなんとか赤ちゃんのように動かして、音のする側から隠れるように草むらに潜む。

 こんなへたくそなハイハイ、赤ちゃんが失笑するレベルだが、今はそんな事気にしている場合ではない。

 唸り声の主は、何かを探して、スンスンと鼻を鳴らしている。どうやら、匂いで何かを探っているようだ。え!匂い!?そうか!匂いで分かるんだ!やばい!どうかんがえても見つかるフラグじゃん!

 今はどこにいるだろうか、と暗闇に慣れて来た目を凝らして探す。

 すると、大きな体の犬がいた。

 大型犬をひとまわり大きくした感じ。土佐犬より大きい。あんなでっかい犬見た事ない。どす黒い生き物が私を探している。

 じっと見ていたら、だんだんとおかしなことに気づく。その犬、なんだか、下あごが2つにわれているように見えるのだ。そして、何より目が……3つあるようにみえる。暗闇でうっすらと光る目が3つあるのだ。ありえない、そう思って何度見ても、目の前の光景はなくならない。恐怖で悲鳴をあげそうになったが、なんとか抑える。

 しかし、体が動いてしまったのだろう。パキ、という音を出してしまった。

 その瞬間、化け物がこちらを見つけた。


「ぎゃあああああああああああああ!」


 疲れ切った体を動かして走る。けれど、化け物はあっという間に私に追いついてきた。

 ああ、もうダメだ。

 そう思った瞬間。


「ぎゃいん!」


 という鳴き声と共に、びちゃりと生ぬるい何かが頭にかかった。パタパタと落ちてくる生ぬるい何かはなんだろう。そう思って手で触って見つめても、黒くて良く分からない。

 ブオン!という音がして、上にあった気配が薙ぎ払われてどこかにべちゃりと叩きつけられた音がした。

 何かを薙ぎ払ったと思われる物体は、私のすぐ隣に立っていた。白っぽい頭の、人型っぽい何かが隣に立っているのだ。

 呆然として上を見上げていると、それは私の頭を掴みあげた。


「いたいいたいいたいいたい!」

「ddjtgf」


 何をいったか分からなかったが、首筋にヒタリと冷たいモノが当てられて言葉を失った。

 その瞬間ボッと周りが明るくなって、眩しくて目を閉じる。


「vbny?くrsdwwxれfdsx」


 恐ろしく冷たい声で何か言われ、首がチリチリと痛む。少し首の皮を切られたようだ。その事にまた恐怖が沸き上がる。

 明るさになれた頃、目を開くと、目の前には獣の耳を優雅に頭に載せた美青年がいた。しかし、その美しさに見とれるような状況ではなかった。その男は私の髪を掴んでいたし、首には刀を突きつけていたし、その瞳は恐ろしく冷たかったからだ。

 いつまでも黙っている私にイラついたのだろう、眉を潜ませている。


「&$$%(’%(’$%)、&%#$”#%*+={」


 何を言っているのか、さっぱり分からなかったが、その声に敵意が滲んでいる事は分かった。

 やがて諦めたのか、私をそこに放り出して背中を向けて歩き出した。

 離れてようやく分かったのだが、この光の正体は、火の玉だった。ふよふよと男のそばで浮きあがっている。よく、妖怪の話とかで見かけるあの火の玉だ。色も青い。その光源で、木に叩きつけられた物体がぐっちょぐちょになっているのが見えた。おろらく、あれがさっき私を追いかけていた奴だと思う。

 背を向けた男の尻には、尻尾があった。たっぷりとした量がある尻尾が、歩く度に左右に僅かに揺れている。

 男は、そのままぐっちゃぐちゃの何かを掴んで歩き出す。


 私は慌ててその男を追った。なにがなんだか分からないが、男は言語らしきものを使った。恐らく言葉が分かれば会話可能だ。さっき殺されかけていたが、実際には殺されなかったし、化け物に襲われていた危機から救ってくれた。

 結構危ないヤツっぽいが、この際背に腹は代えられない。もしかしたら食べ物だって持っているかもしれないし、湧き水の在処も知っているかもしれない。それに、会話の出来る人間のいる所もしっているかもしれない。もしかしたら何もしらないし、あの男に殺されるのかもしれないが、ここでじっとしていたらさっきのような化け物に襲われるだけだろう。どっちみち死ぬなら、この言語らしきものを喋った男の方に賭けよう、そう思った。

 必死に追っていたら、ピタリと止まって、こちらを向く。その際、油断なく刃をこちらに向けてくる。

 私は慌てて両手をあげて降伏を伝えるが、相手の殺意が増したような気がする。

 気が付いた時には、胸の中心がツキリと痛んだ。

 ギチギチとぎこちない動きで下を見ると、刀の頭が少しだけ私の胸に刺さっている。僅かな血が、ジワリと服に滲む。いつの間にか男は目の前だし、目の前で明らかに殺意を向けてくる様は物凄く怖かった。

 両手を上げるのはダメなの!?と思い、慌てて両手を下げる。

 すると、綺麗な眉をぎゅっと寄せた。


「&#&”’%$=)(‘**+>」


 わっ、分からない!けれど、会話をする余地が大いにありそうだった。現に胸を刺されかけているが、ま、まだいける!死んでないから!


「助けて欲しいんです!どっか!人がいそうな場所を知りませんか!」

「……」


 怖い顔を、さらに怖くして、口を開こうとして……やめたようだ。代わりにチッと舌打ちしてまた背を向けてしまう。

 胸から離された刀にホッとして、またついていく。殺されかけたのに、なんでついていくのか……正気ではない。けれど、彼についていくしか希望が見いだせない。周りからは獣の唸り声がたまに聞こえてくるが、彼の近くにいると襲われないのだ。彼から離れると確実に死ぬ。まぁ、彼について行っても死ぬのかもしれないけれど。

 後ろを必死で追っていると、またピタリと止まってこちらを見て来た。この舗装されていない道も何もない所を歩きなれているのか、彼の歩は速い。息も上がってしまって、ついていくのがやっとだった。

 彼はしばらくじっとしてくれていた。もしや私の事を気に掛けてくれている!?そう思って慌てて近づこうとすると、凄く嫌そうな顔をして、フッと明かりが消えた。再びの真っ暗闇に、私は慌てた。何も見えなかったら、彼を追う事も出来ない。必死でさっきまで彼がいたであろうところまで追いつこうともがく。ときたま足に何かが引っかかって転んだりしながら、なんとか辿り着いたと思う。けれど、そこには彼はいなかった。暗闇で慣れて来た目を凝らしても、それらしき男の陰もない。

 置いて行かれた?

 その考えが浮かんで、ザァッと血の気が引いた。そんな事考えたくなくて、必死で周囲を捜索してみるが、彼はいなかった。

 少し遠くでガサガサッという音がした。もしかすると、さっきの彼かもしれないと思い、そちらに足を向ける。

 が、すぐに後悔した。向かったその先にはさっきの男ではない何かが動いていた。暗いから見えにくいけれど、影がもう、男よりも倍くらい大きいのだ。

 悲鳴が出そうになったが、口を押えて堪える。

 大きな何かは足音は殆どなく、ときたまガサリガサリという音を立ててうろついている。あれだけ大きいのに、何故か木々をなぎ倒す事なく進んでいる事が不思議で仕方ない。先程の犬らしき化け物もそうだけれど、なぜこれだけ生き物がいるのに獣道すら存在しないのだろうか。

 いや正直どっちでもいいのだけど。命の危機にちょっとどうでも良い事を考えてしまう。いや、命の危機だからこそ、現実逃避したいというか。あれに見つかると確実に死にそうだ。

 大きな何かはキョロキョロとしていて、何かを探している。何を探しているのだろう。私じゃない事を心から願うのだけど。

 そろり、そろりと慎重に離れていく。

 足元が暗くてよくみえず、木の枝を踏んでしまったようで、パキリという音を響かせてしまう。

 心臓が縮みあがる。ゆっくりと振り返ると、大きな何かがこちらをじっと見つめていた。


 オオオオォォォオオオ!


 その瞬間、腹の底に響く咆哮が聞こえてビリビリと震える。木をなぎ倒しながらこちらに直進してくる。


「ひぃやぁあああぁぁあああ!」


 必死で走るが、距離はドンドン縮まっていくのが分かる。

 ガツッと何かに足がひっかかってゴロゴロと転がる。

 勢いがあったので、色んな所にぶつかりながら止まった。もう体のあちらこちらが痛い、疲れた、動けない、こわい、どうしよう、いやだ。ブルブル震えながら大きな何かがドンドンと近づいてくる。近づいてきてわかったが、いや、近づいてきたからこそますます分からなくなった。

 あれ、なに?あれ、なに?

 大きな体躯は確かに人型なのだが、顔の部分には大きな目が1つだけ。そして、腹の部分は針のようなモノが大量についた大きな口が開いていた。

 あんな生き物見た事ない。犬っぽい化け物も見た事なかったし、火の玉も意味が分からなかったが、なんとか飲み込んで来たのに!これは許容範囲外だよ!なんなのあの生き物はぁああああぁぁ!

 あんなのに食い殺されるのか、私は!嫌だ!私死ぬなら老衰がいい!

 ひいひい言いながら涙目で化け物を見つめていると。

 私の目の前に何かが降りて来た。

 近すぎて何が降りて来たか全く分からない。けれど、これはもしかして、と淡い期待をしてしまう。

 目の前に来た黒い物体がフッと消えて、真っ直ぐに黒くてでかい化け物に突っ込んでいく。

 離れて分かったが、やっぱりさっきのコスプレ男子だった。

 カキン、カキンという金属音が鳴り響き、獣の唸り声が聞こえてくる。時折、青い炎が黒い化け物に絡みつく。その度に化け物は熱さで呻く。その間も刀による素早い攻撃を絶やすことはない。

 しばらく戦っていたが、コスプレ男子が圧勝だった。化け物の攻撃などかすりもしなかった。

 男は、倒した化け物をバラしだした。暗くてよくみえないのが救いだが、血の匂いがこちらまで漂って来た。

 その間、ずっと地面に倒れたままだった。


 ハッと気が付くと、こげ茶色の岩的なモノがあるところに寝ていた。


「うっ……げへぇっ」


 起き上がろうと思ったけれど、力が入らなくて諦めた。

 ここはどこだろう、と首だけ動かして状況を把握しようとする。

 とりあえず、生きている事はわかった。手を上にあげると、布の切れ端を巻きつけられていた。薄汚れた布だが……だれかが治療してくれたのだろうか。

 ボロ布を上からかぶせられて地面と同然の所に寝かしつけられている。ここはどこかの洞窟のようだ。


「&$$#%(*+」


 声が掛けられてビクリと震える。首を動かしてみると、狐色の耳と尻尾をもつ男が険しい顔でそこにいた。その耳と尻尾には見覚えがある。はっきりと見た訳ではないが、昨日のコスプレ男だと思う。声も似ているし、そうだろう。あの後気を失った私を運んでくれて介抱してくれたようだ。よかった!良い人……だった、かな?うん、良い人だと思う。


「あの!ありがとうございます。助けてくれたんですよね?」


 私の返答に、男は物凄く不機嫌そうな顔をして、溜息を吐いた。


「&$#()%#$><+&$#」


 うん、何言っているか分かりません。やっぱり言葉分からないか……。

 よくよく男を観察してみると、その耳や尻尾が物凄くリアルであることが分かる。もっふりした尻尾が物凄く触りたくなる。家でも、猫を飼っているのだが、ツンデレでなかなか触らせて貰えないのだ。私が触りたい時には逃げて、作業しようと思った時に邪魔してくる。そこがかわいいのだけれど。

 男は、私の前に何かを差し出してきた。

 手渡されると、かなり重たくて落としてしまった。自分の胸にどすっと落ちて唸った。かなり痛かった。そういえば昨日この人に胸の所を少し斬られたんだった。私が涙目になっていると、驚いたように目を見開いた男は、不機嫌そうに眉を寄せた。というか、基本的に不機嫌そうな顔をしている人だった。デフォルトがその顔なんだね……綺麗な顔なのに、もったいない。

 男は重たいものを私の上からどけてくれて、半分に切ってくれた。そこで分かったのだが、肉だった。どうやら、私に食べ物をくれたみたいだ。やっぱり良い人だったみたいだ!

 嬉しくなって、ニコニコ笑顔で再び差し出された肉を受け取る。半分にされても十分重たかったが、なんとか持つ事ができた。腕をプルプルさせながら噛り付く。勿論ずっと寝っ転がったままで。お行儀なんて気にしていられない。体のあちこちが痛いのだ。思い返せば色んな所にぶつけたし、転んだ気がする。

 食べ物を口にして気が緩んだのか、涙がボロボロと溢れて来た。

 男がぎょっとしていたが、涙は止める事ができない。

 やっと、やっと安心出来る所にこれた。そうおもうと、泣きださずにはいられなかった。うっうっと言いながら肉を咀嚼する。けれど、中々飲み込めない。喉が乾いているうえに、肉がパサついているのだ。しかも味もしない。

 私がもしょもしょと咀嚼だけしているのを見て、男が首を僅かに傾げる。首を傾げた男としばらく見つめあった。男は何か考え込んだ後、1回瞬きをした。その後、颯爽とどこかに立ち去ってしまった。

 どこにいったのだろうか。それはさておき、私はなんとしてもこの栄養源を胃におさめなければ!そう思って、1口目をようやく飲み込む。

 腕が疲れたので、上に掛けられたボロ布の端っこだけしいて、上に肉を置く。地面には置きたくなかったので、かろうじてマシだろう、と思ってこの布の上に置いたが……まぁ、あんまり変わらなさそうだ。

 上の方だけ齧るならいけるだろ、そう思って、齧る。

 咀嚼。

 まずい、くそまずい。

 けれど、贅沢は言えない。せっかく無料で施しを受けているんだ。意地でも飲み込む。

 ゴクリと2口目を飲み込む頃合いに、男が帰ってきた。

 荒削りの木のコップを持っている。

 えっ!もしかして、もしかして水!?

 期待の込めた目で見ると、こくりと男が頷いた。

 うわああ!良い人だ!殺されそうになった事はもう忘れてしまおう!

 肉の隣にコップが置かれたので、必死でコップを掴む。お腹もすいていたが、それよりももっと喉が渇いていた。しかし、寝っ転がったままじゃなかなか上手くいかなかった。

 なので、起き上がろうと腕を動かす。

 しかし、痛さで中々動けない。プルプルしているだけの私を見かねたのか、男が私の後ろに回り、そっと抱き起してくれた。


「ありがとうございますっ!」


 そうお礼をいっても話は通じず、スイッと目を逸らされた。そのままコップを持ってくれて、私に差し出される。

 優しさに再び涙ぐみながら、ごくごくと飲み切った。まだ飲み足りない。そう思って、コップを持ってチラチラと男を見上げる。


「)())(=+*>?」


 まだいるか?みたいな感じに聞こえたので、頷く。すると、男は私をそっと寝かしつけた後、コップを持って再び外に出た。おお、通じたみたい。

 異星人との交流みたいだな、と馬鹿な事を考え……あれ、異星人?そういえば、昨日は見た事もない化け物や生き物と出会い。火の玉を自在に操る所も見た。そして、あの男から生えている尻尾が物凄く本物っぽい。

 まさか、ここは異世界なのだろうか。

 いやいやいや……そんなことあるわけ……あるわけ……。でも、見ちゃったんだよね……。昨日、嫌というほど見せつけられた所なので、信じざるを得ない。

 家で寝ていたはずが、まさか外国どころか世界すらも違うかもしれないのか。

 なにがどうして、そうなったのだろう。訳が分からない。

 再び男が帰って来て、私をまた抱き起して、水を飲ませてくれる。その動作はぎこちないけれど、優しい。


「ありがとうございます」


 言葉は通じないけれど、想いは通じるはずだ。そう思って、礼を言う。男は分からないみたいで、そのまま私を寝かしつけてどこかに立ち去ってしまった。

 私は潤った口で肉にかぶりつく。先程よりは食べやすくなった。4口、5口……と食べている内に瞼が重くなっていった。

続きます。

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