5
「ん、準備は皆できてるな。今日の担当配るぞー」
B5の十枚閉じを全員に手渡す。そのスケジュールを見て、
顔を顰める者然り、いつも通りの表情の者然り。
「・・・っちょ、なにコレ・・!?」
シヅキがうげっと声を上げる。
「説得・始末・始末・始末・・って、俺が苦手なのばっか・・!」
「お前、始末の成績10回連続Dランクだったろーが。いい加減
慣れろよな。ってなわけで新人二人と練習して来い」
「ええええぇええぇえぇえ・・・よりにもよって・・・」
「・・・始末なら得意だよ。大丈夫」
「え、マジで?」
「うん。説得は大嫌いだから駄目だけど」
「・・・お前ら見事なまでに正反対だな」
ドレイクが呆れ口調で息を吐く。
「ともかく、もう行かなきゃ。シノちゃん、ロコ君ついて来て」
黒い押引き型扉の前に立つ。ドレイクが見上げる位にデカい。
「ここを通って下界に降りるんだ。行くよ」
片手で軽く押せばゆっくり開門する。下は地面がなく雲が見える。
「わー、高い高ーい」
「シノ、平気?ボクが手を繋いでてあげようか?」
「気持ちだけで十分だよ」
やんわり断る。紺色の彼は少し残念そうだ。
「それじゃ、行くよ」
何の躊躇いもなく飛び降りた。白い正装が青白く輝き、羽の如く広がる。
バタバタと風に乗って空を舞う。その隣にはフードを被った黒い羽根が
並ぶ。その姿はまるで巨大な白鳥と鴉。
と言っても、人間の眼には三羽の蝶にしか見えないが。
滞空時間は精々5~6分程で下界の地上に着いた。
「へぇ・・ここが日本の下界かぁ・・」
シノとロコが物珍しそうに周りをキョロキョロ。
「あ、二人ともちょっと待って。今の俺らは蝶に擬態してるから
下界の人間の姿にならないと」
「そうだった。ロコやり方分かるよね?」
「当たり前だよぉ!」
三人が正装を脱ぐと、蝶が光り、人の形へと変わる。
現代の若者風のファッションを纏った死神達へと。
「えーと、最初は簡単な奴から行くか」
白猫毛を掻き上げバインダーに挟んだファイルを眺める。
ジーパンに白いパーカーという出で立ちのシヅキ。
対し、シノは黒の太股まであるロンTに丈がかなり短いズボン。
ロコは白のシャツと黒いダウンジャケットにカーゴパンツである。
「まずはお迎えから行こう。えーと、名前は榎本 武・・・病死か
場所は市原病院、と」
歩き出す白の後をカルガモの子供の如くちょこちょこついてくる
黒赤と紺色。少し誤植があったので訂正する。紺色は黒赤に
しっかりしがみ付いているので引き摺られていた。
重いのかはたまた暑いのか(多分両方だろう)紺色はニヨニヨ
していたが黒赤は迷惑そうな顔していた。下界の色んな人らに
微妙な視線を集めていることに紺色は全く気付かない。
市原医院までここから歩いて30分かかることを知った時、
紺色と黒赤はどんな表情をするのだろうか?