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アイテム保管庫へ先に来ていた十数人は、準備を進めていた。
「シノちゃん薙刀使うのか?」
銀に光る鉄塊をくるりと回して腰にしまいながら口にする。
「うん、そうだけど。なんか変?」
「いや・・ちょっと気になっただけだよ」
「そう。にしても僕以外女の子いないんだね」
「あー、大抵女の子は管理や事務に回されるからねぇ」
実行部隊で女性は中々に少ないのが現状だ。
「・・・・・・・・・・ん?」
ここまで来て、シヅキがぴたりとその動きを止めた。
「ん、ん?んぇ?今なんて言った?」
「大抵の女の子は管理や事務に回されるからねぇ」
「それ俺の台詞!君のだよ!!」
「僕以外女の子いないんだね?」
「・・・・・君、女の子だったの?!」
「生物学的分類されるなら一応女性になるけど・・・」
きょとんとする顔は中性的魅力を感じる。少年にも少女にも見える。
恐らくまだ未成熟だからだろう。身体的に。
「ご、ごめん。男かと思ってた」
「いいよ、別に。言われ慣れてるから」
「そ、そう・・・」
「シノ!シノ!ボク準備一人で出来たよ!!」
パタパタとやって来てぎゅむ、と抱き付く。
「うん、よく出来たね。偉い偉い」
「へへっ」
初めて百点を取った小学生のように喜ぶロコ。
こう書くと非常に微笑ましいが、シノは十代前半、ロコは
十代後半、尚且つ体格面でとんでもない差がある。
映像で見ると小さな少年(女だが)に高校生位の男子が
覆い被さって(寧ろ押し潰しかねない)いるようにしか見えない。
放っておくとシノの細い背骨があらぬ方向に曲がりそうなので
助け船を出す。
「ロコ君、そのままだとシノちゃんが潰れちゃうから離れてあげて」
「・・・シノのこと気安く呼ばないでくれる?シノの名前を
呼んでいいのはボクだけなんだけど・・・?」
ギロ、と睨み付ける。自分より年下なのにとんでもない迫力だ。
(怖っ・・!)
「ロコ・・どいてくれなきゃ嫌いになっちゃうけど?」
「っえ!?い、いや!!ボクのこと嫌いにならないで!!!」
びゃっと離れ、泣きそうな顔で懇願する。
「うん、いい子だね。そんなロコが大好きだよ」
「!!!ボクも大好き!!」
先程の不安そうな顔から一転、パアアァアアっと向日葵が咲く
様な笑みへと変わる。
「ロコって何故か僕が褒めると喜んで他の人がやると嫌がるんだ」
「ロコ君はシノちゃんが大好きなんだねぇ・・羨ましいよ」
「・・・好きって・・・何?」
眉根を寄せて尋ねた。
「え・・・?えぇと・・・」
改めて訊かれると説明し辛い・・。
「つまり、ボクの物ってことだよ、シノ」
「ふぅん?」
なんか違う。何かが違う。だが面倒だから何も言わない。
「ところで早く殺したいんだけど、まだかなぁ?」
カチャカチャと腰につけた二つの円月状の武器・チャクラムが音を立てる。
「そーだねー。あの、まだ行かないの?」
こてり、首を傾げてシヅキに問いかける。
「ドレイクが来て最終確認したら出発だよ」
「・・・早く行きたいなぁ」
「すまない、待たせたな」
射干玉の髪を持った青年が顔を出した。